AIは新産業革命をおこせるか
将棋の人工知能「ポナンザ」が昨年の第二期電王戦で佐藤天彦名人に2連勝して、一挙に人工知能(AI)が大きな話題となった。ポナンザを作った山本一成氏は東大先端科学技術研究センターの研究員で(株)HEROZの開発技術者でもある。
山本氏自身、将棋を指しアマ5段の腕前を持つ。最初はポナンザに将棋の基礎を教え、機械学習の技術を取り込み、様々な棋譜を学習させた。
将棋には駒の位置や指し手の組み合わせで億単位のパラメーターがあり、1兆近い局面ができるという。ポナンザにそれらの棋譜を覚え込ませており、一般的なパソコンであっても1秒間に300万近い局面を読んでいる。プロの棋士もあらゆる棋譜を学習し、様々な展開を読む訓練をしているが、実際の勝負で指し手を読むとしても限られた時間ではせいぜい数十手ぐらい先まで見通すのが限界らしい。
AIのポナンザは学習している間に人間が思いもつかない手をコンピューターが打ち、ポナンザ制作者の山本氏も勝てなくなってしまった。山本氏は「自分の方が強いと思っていたのに進化したプログラムに負けてしまい最初は不愉快な気分になった」と苦笑する。AIは様々な展開を瞬時に読む能力を身につけ、制作者の人間にも勝利してしまうのだ。
こうしたAIの能力と応用が将棋や囲碁の世界で試されてきたが、今後は建設分野で数十万の建設部材のデータを入力することにより最適の構造を作れるようになったりできる。また、医者の診断の際にも有効に応用できるという。
チェスの世界チャンピオンがスーパーコンピューターに敗北したのが1997年のことだった。以来20年、いまや車、電気冷蔵庫、テレビなどあらゆるモノにAIをつけることで、無人の自動車が運転したり、電気冷蔵庫の中身がいつでもどこでもわかり、夜の食事の用意もできてしまうというような世の中になるらしい。
さらに、AIは畜産にも応用できる。乳牛の1頭ずつに測定センサーを取り付ければ歩数や体の動きの変化をみつけ病気の兆候を監視したり、牛乳の成分から人工受精のタイミングを20時間以上前に探知することもできるのだ。銀行の融資に際しても、過去の融資、返済実績、現在の経営状態データなどを投入すれば短時間で融資の判断が行なえるようになるという。
ただ、AIは大量のデータと局面の無数の展開を提示できても、複雑な判断やその意味を考えることにおいてはまだ人間に及ばないようだ。20年後には人の仕事の約半分がAI、ロボットに置き換えられると予測されているが、今後AIと人間の知恵の協調、協業が大きな課題になりそうだ。
【財界 2018年3月13日号 第466回】
画像は、株式会社HEROZ公式Facebookより2017年11月15日(水)にソウルで行われた「Global Leaders Forum」での山本氏の登壇の模様。「AI and Black Magic」と題し、将棋AI「Ponanza」の開発における進化の過程や今後AIが世の中にもたらす影響などについてスピーチされています。山本氏は先日情報処理学会「ソフトウエアジャパンアワード2018」を受賞されたようですので合わせてFacebookの投稿を掲載いたします。
【HEROZお知らせ】 HEROZリードエンジニア山本一成が 情報処理学会「ソフトウエアジャパンアワード2018」を受賞いたしましたのでお知らせいたします! goo.gl/o1SsFq 将棋AI「Ponanza」は、2017年の電王戦での...
HEROZさんの投稿 2018年2月4日(日)