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あと3年も安倍内閣? ―外交、財政に進展を望めるのか ―

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 あと3年はやりたい――。安倍首相は9月の総裁選に出馬するにあたって、今後の決意を述べた。安倍首相の在任期間はすでに5年に及ぶ。そこへ“あと3年はやりたい”ということは、8年間にわたり総理の座を維持したいと宣言したことになる。多くの国民は一人の総理が8年間統治することにどんな思いを抱くのだろうか。

 安倍首相への支持率は9月初めで37%。逆に不支持は41%(毎日新聞)で逆転が続いて6ヵ月になる。要するにこの数字からみると、国民は“安倍政治に飽きている”とみることができよう。正直、“今後まだ3年も続けるの?”というのが率直な感想だろう。どうしても続けて欲しいという積極的な支持ではないのだ。

 にも拘わらず安倍首相が本命視されるのは、北朝鮮の脅威が治まらない間は、北朝鮮に抑えの効きそうなアメリカのトランプ大統領と相性がよく、日本にとって安心・安全が得られやすいからというのが大きな理由だろう。たしかに安倍首相は、これまでトランプ大統領と7回の個別首脳会談を行ない、サミットやAPECアジア太平洋経済協力会議)などの会合も入れると数十回の面談を行なってきた。

 そればかりでなく、互いの別荘に招きあったり、ゴルフをしながらの付き合いも多い。おそらく、これまでのどの首相と比べても2人の接触とパフォーマンスは数多く、それらを国民に見せてきたから日米の絆はこれまでになく深いという印象を与えてきたに違いない。

■スタンプラリー外交ばかりが目立つ
 しかし、内実はそう甘いものばかりではない。トランプ大統領は情で動く人物ではなく、自ら宣言しているように“ディール(取引)”を得意とする政治家なのだ。取引がよくないとみれば、過去にアメリカが世界の統治の柱としてきた価値観なども平気で捨て去ってしまう人物だ。日本が懸命に旗を振ってきたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からは、あっという間に抜けてしまったし、環境協定も同様だ。

 さらに日本の防衛費用の分担は少ないと主張し、アメリカ製の武器購入を求め、日本はこれに応じている。米中貿易戦争などでもアメリカの対中国貿易赤字が増大しているため、対中制裁を発動し、日本にも同調を求めてくるといった具合である。トランプ大統領の外交は、“アメリカ・ファースト(米国第一主義)”にあり、その方針で軸が変わるのだ。したがって突然、中国との関係改善に動いたり、北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長と対話を行なったりし、北朝鮮制裁で動いていた日本は突然ハシゴをはずされたりするケースも出て、あわてさせられるのである。

■経済は低成長、デフレ脱却ならず
安倍政権のプラス材料は経済の安定だとも強調されている。しかし、日本経済の成長率はせいぜい0~2%で、時にマイナス成長も記録している。低位に安定しているだけで、かつてのような成長への夢はほとんど描けていないのが実情だ。大企業は成長への投資に消極的で、政府も何を軸に産業を引っ張るのか方針が定まっていない。一時は衰退が叫ばれていたアメリカはITで蘇り、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどが世界を牽引し、新技術や新しい構想を次々と打ち出しているが、日本には新戦略や新産業にみるべきものがない。大企業は内部留保を約500兆円も抱えているのにM&A(企業買収)などに資金を投ずるばかりで、かつてのような研究に打ち込み、新投資を行なって新製品や新機軸を打ち出す迫力が全くみられない。

しかも金融力を持っているのは大企業ばかりで中堅・中小企業は相変わらず苦しんでいるところが多いのだ。また、個人の生活をみても消費は増えず、節約生活と将来の不安に備えた貯蓄などが目立つばかりだ。

こうしてみると安倍政権の本当の成果は何だったのだろうか、と思わざるを得ない。

内政では2回の消費税引き上げの延期で、財政赤字も増えるばかりだ。安倍政権は、外交で成果をあげているといわれる。確かにこの5年間の外国訪問は150の国と地域を超え、世界に足跡を残している。しかし海外に数多く足を運びながら安倍政権の世界における存在感は低下しており、海外の新聞の調査などでは50位台という状況だ。かつてのようにGDPで世界で第2位の時代はアジアのリーダーとしてアジア各国に頼られていたが、中国に第2位の座を取られ、その中国がIT、宇宙などで競争力を強め自動車、家電分野などでも先進国と見劣りせず価格も安くなっている状況下では、中国の存在感がここ1~2年でぐーんと世界の中で高まっているし、アジア諸国も中国に寄り添い始めてきた。またヨーロッパ、アフリカと中国を結ぶ陸と海の新シルクロード構想(一帯一路)が徐々に展開し始め、大きな世界構想が見えてくると内向きになってきたアメリカや人口減少などで勢いを失った日本より中国に魅力を感じてきている国が増えているのではなかろうか。

外交もアメリカとは、くっつきすぎる位だが近隣外交はさっぱりである。米朝首脳会談が行なわれてから日米間の政策上の違いが目立ってきているし、ハイテクなどを巡る米中貿易戦争の仲介もできていない。またトランプ政権は日本製自動車への高関税適用も検討しており、通商面から日米同盟が揺らぎ始めてきた。

安倍政権が最重要課題とする拉致問題も対北朝鮮への制裁一辺倒の方針からは解決のメドがみえないし、ロシアとの北方領土問題解決もロシアへの経済協力をテコにと目論んでいるが相手は全く乗ってこない。また、日本が最も重要とすべき東南アジアとの近隣外交も中国の一帯一路構想に押されがちという実情だ。要するに得意と主張する外交も訪問国は100カ国を超し活発にみえるが、まるでスタンプラリーを重ねているだけの印象で内容が薄っぺらいのである。

にも拘わらず、次の総裁も安倍首相ということで何か新しい展開が出てくるのだろうか。多くの国民は安倍首相に“飽き”を感じているが、自民党内に有力な対抗馬がおらず、野党もだらしがないという状況に助けられている感が強い。波乱を起こし、政治を活気づけるにはいまや小泉進次郎氏の出馬しかないとみえるが、その小泉氏は今回出馬しなかった。3年後まで待っていると小泉氏も飽きられてくるのではないか。今の日本には刺激的な波を起こすエネルギーもないようにみえる。
TSR情報 2018年10月2日】

※補足情報:なお、安倍首相は9月20日に行なわれた自民党総裁選で3選し、10月2日午後に第4次安倍改造内閣が発足しました。

画像:首相官邸サイト掲載「平成30年9月26日 米国訪問 -4日目-」

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