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米中ハイテク覇権争いと日本 

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 トランプ政権は中国の通信機器大手「ファーウェイ(華為技術)」を目の敵のように攻撃している。ファーウェイ製品を使うとその機器を通じて機密情報が流出するというのだ。特に北大西洋条約機構NATO)に加盟する同盟国がファーウェイを導入し浸透するようなことになると、アメリカの機密情報を狙う中国にとっては好都合な突破口を獲得することになると排除を呼び掛けている。

■躍進してきた中国・ファーウェイ
 ファーウェイは1987年に創業された中国の通信機器メーカーで、次世代通信規格「5G」の基地局などの輸出で世界に踊り出ている。2018年の売上高は前年比19.5%増で約12兆円に上り、特にNATOに加盟するハンガリースロバキアチェコポーランドなどの東欧諸国への輸出が盛んだ。5Gは次世代の通信規格として重要な社会基盤となるため、5Gの基地局建設と整備をファーウェイに任せると西側の機密情報が盗まれるとアメリカは見ているのだ。このためアメリカは、5Gの基地局建設などを進める際に「欧州諸国が中国製の5Gを使用しないように排除を要請する」として、ポンぺオ国務長官らを各国に派遣している。

 基地局の出荷や通信業界の規格は、これまでフィンランドノキアスウェーデンエリクソンなどが主導していた。ところが2010年代から中国企業が小型でコストの安い基地局の開発に力を入れ急伸してきたのだ。2015年に中国政府が「中国製造2025」の政策と戦略を発表し、通信機器をハイテク振興策の重点項目に指定したため、代表企業のファーウェイなどが世界の最先端メーカーとして頭角を現し、技術とコストで世界市場を次々と獲得してきた。

 2018年には「中国製造2025」の重点領域技術のロードマップを更新し、「25年までに通信機器産業で世界のトップに立つ」と宣言している。

アメリカはファーウェイ排除へ
 まさにハイテク覇権、中でも最近は次世代通信規格の5Gを巡ってアメリカと中国が激しく対立しているのである。アメリカのファーウェイ排除の要請と圧力を受けて、スロバキアなどは排除の必要性に疑義を唱えているが、ドイツ、オランダ、フランスなどが排除を検討し、EUも規制強化に乗り出している。また日本政府もアメリカの要請を受け、重要社会基盤事業者からファーウェイ排除の方針を検討している。さらにカナダではアメリカの要請で、孟晩舟・最高財務責任者CFO)の身柄を拘束して話題となった。ポーランドではファーウェイ現地法人の中国人をスパイ容疑で逮捕する事態も起きている。

 日本経済新聞によると、中国企業のハイテク分野の進出は目覚ましく、18年の世界市場調査では9品目(パソコン、スマートフォン、携帯通信インフラ基地局スマートスピーカー、監視カメラ、タブレット端末など)でシェアを拡大し、アメリカと拮抗している(19年7月8日付朝刊)という。国際特許出願件数では2005年には中国企業は上位5社に入っていなかったが、2018年にはファーウェイが1位に躍り出ている(2位三菱電機、3位米国・インテル、4位米国・クアルコム、5位中国・ZTE)。また特許や技術の買収でも中国の攻勢が目立っているのだ。

 米・中のハイテク覇権争いの中で今後、両国と関係の深い日本企業がどんな立ち位置を示していくか、ますます難しい局面に立たされそうだ。

TSR情報 2020年2月27日】

※補足情報
ソフトバンクは5日、大手キャリアとして初めて次世代通信規格5Gのサービスを3月27日から開始すると発表。ソフトバンクは現行スマホ向けプランに月額1000円を追加で支払えば利用できるプランを発表。8月31日までに加入すれば、この基本料1000円が2年間無料。都内の通信エリアをみると、4月末の時点だと東京駅や有楽町駅、霞が関などしか予定されておらず新宿駅や渋谷駅などは今年の夏以降の対応。
 https://www.fnn.jp/posts/00050649HDK/202003071000_livenewsalpha_HDK

 

画像:写真AC fujiwaraさんの写真

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