時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

昨日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~パリのテロ、シュミット氏の逝去から今のG20を考える~

スタッフです。
昨日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の音源が掲載されました。要約は以下の通りです。

テーマ:「パリのテロに潜む問題」~「ドイツのシュミット死去から今を見つめる」

フランスで同時多発テロが発生。今回のテロは、単にフランスでの極地的テロではない問題を含んでいる感じがする。過激思想に染まったフランス人がいたとも報じられ、様々な移民が入っているが、そういう人たちとISILが結びついてきて今までのテロとは違った社会不満に対するネットワークがなんとなくできつつあるように感じることも怖い。フランスはこれは単にテロというより戦争だと位置づけている。非常に大きな塊として出てきた。時期を同じくしてG20サミットが開催されたが、来年は日本でもサミットが行なわれる予定。日本のサミットがターゲットにされる可能性が十分にあるように思われる。

昨日、政府首脳との懇談会があり、そこで今から情報収集をしておかなくてはならないということを言われていた。今のG20は豊かな国、そうでない国があり、今は豊かでも通貨が暴落して豊かでなくなる国があったり、国益がみな違って一枚岩にまとまらない。かつてのようなサミットではないということが言える。

先進国の対立は、今はじまったわけではなく昔からあり、冷戦時代はソ連を中心とした社会主義と米を中心とした自由主義国との対立があったものの、当時はそれなりにまとまっていた。それがここのところ、ごたごたになってきた。

今回冷戦時代を紐解く流れとしてドイツのシュミット氏がいる。ジスカール・デスタン氏(フランス元大統領)とともにサミットをつくったといってもいい。先週シュミット氏が亡くなられたことは非常に大きい。

※画像は在日ドイツ大使館サイトより
(© Thomas Koehler/photothek.net )

シュミット氏は哲学的、理性的なステーツマンで、趣味がピアノという高尚な人であったのでデスタン氏とも非常に気があったのだと思う。ドイツは第二次大戦を起こし、ナチスの問題もありどうやってヨーロッパに溶け込んでいくのかという問題もあった。フランスと一緒にサミットを作り、ドイツ、ヨーロッパの為に尽くそうと一生懸命やったことがみんなに認められ、ドイツでも非常に親しまれている。具体的な功績は、関税同盟、EC、通貨統合などを作り、1977年のルフトハンザ機がハイジャックされた際には特殊部隊を投入し断固としてテロに屈しない姿勢を見せた。強く、理性的で、ステーツマンはドイツとしても誇りと思われている人だと思う。

シュミット氏は日本に対して非常に好意的で、それには2つの理由があった。一つ目はドイツと日本が世界の戦争を起こし、復興を遂げた。二つ目はアメリカ、ヨーロッパの地位が落ちてくる中でドイツと日本だけが黒字となっているという共通点がある。ドイツと日本は黒字減らしでいつも問題となっていた。

デスタン氏はこのままいくと世界は二極化しておかしくなるということで、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの四ヵ国でサミットを作ろうとしていたが、日本も黒字が大きくなっているから日本も加えようとドイツが働きかけ日本も仲間に入った。シュミット氏の思惑としては、連合国3国とドイツの場合黒字問題でドイツのみがやられるので日本と組んだ方がよいということがあったのだろう。

日本は高度経済成長を遂げてもなかなか先進国の仲間入りができず、やっと大国の仲間入りができると喜んだ。当時日本が参加できた国際会議は国連会議くらいしかなかったが、ヨーロッパの国々はNATO、ヨーロッパ首脳会議、ヨーロッパアメリカ会議などさまざまな会議に参加していたのだ。先進7ヵ国の会議に参加できたことに導いたシュミット氏への恩義が日本にはあった。

シュミット氏が首相を務めていた時の日本の首相は、三木氏、福田赳夫氏(福田康夫氏の父)。特に福田氏とシュミット氏は仲がよかった。福田氏もしっかり物事を考える人だったので、取材していても非常に仲が良いことはわかった。

現役の首相はその日の事で精いっぱいなので、大統領や首相のOBが世界全体の事を考える見識の高い人が集まって賢人サミットのような人口問題、地球人類問題、世界気候問題などを話し合う機会を二人は首相を辞めた後もOBサミットを作ろうということになった。この中心人物は福田氏とシュミット氏だったが、お二人が参加しなくなってこのOBサミットは無くなった。そういう意味でいうと日本とドイツは連帯感があった。枢軸国というのと黒字国でいじめられやすい立場という共通の立場にあったということもあるが、なんとなくウマがあったのではないかという気がある。

※画像は78年開催のボン・サミット参加の各国首脳(敬称略) 左からアンドレオッチ(伊)、福田赳夫(日)、カーター(米)、シュミット(西独)、ジスカールデスタン(仏)、wikipediaより掲載

その時代から考えるとG7も力を失ってきた。利害の複雑化によりG7の意向が世界を動かすという時代ではなくなり、アメリカも力を失い、中国の台頭、新興国もさまざまな意見をいうようになってきた。かつてのG7は雲散霧消となり、G7をまとめる人がいなくなってきたのが今の問題。参加国を増やせばいいとG20になったものの、更に利害が一致しなくなってきている。

来年日本の賢島でサミットがあるが、それらの問題をどうやって一つにまとめてゆくのかという意味では日本が果たす役割は非常に大きい。一人の指導者が世界を動かす時代ではなくなってきているので、各国と協調し利害を調整する人が必要で、アメリカ、もしくは日本とアメリカとくめばいいという話ではなく中国、ロシア、ヨーロッパ、、新興国をどうやってまとめていくかというのが来年の大きなテーマである。