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温暖化対策で航空運賃も?

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 5月に早くも真夏日を記録するなど日本の気候はますます異常になっている。ムシムシした梅雨の季節の後、今年はどんな夏を迎えるのだろうか。


 地球温暖化問題は日本だけの問題ではない。ことしの伊勢志摩サミットでは、主要7カ国(G7)が国際的な地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の批准手続きを急ぎ、できるだけ早く発効するよう各国が連携することで合意している。すでにEUは2030年までにCO2の排出を1990年比で40%削減することを約束。中国は2005年比でGDP当たりのCO2の排出を60~65%削減、インドも同じくGDP当たりのCO2排出を33~25%減らすことを6月7日の米印首脳会議で表明。温暖化対策に慎重た大国の米、中、印が早期発効に主導的役割をはたすことを鮮明にした。


 パリ協定は批准国の温室効果ガス排出量が世界全体の55%以上になった時点から発効する。現在の世界の排出量は371億トンで、このうち中国がトップの20.1%、アメリカが17.5%、ロシアが7.5%でインドは4.1%で第4位の排出国だ。したがってもし米・中・印がパリ協定の早期批准に合意すれば3カ国で44%を超え発効に向け大きく前進する。問題は世界の排出量の12%を占めるEUと3.8%を占める日本で、この両方が早期批准を決定すれば、世界は石油や石炭に頼らない脱炭素社会に踏み出すことになるのだ。


 1997年に採択した温暖化対策の京都議定書作成では日本がリードし〝環境日本〟をアピールしたが、パリ協定では2030年までに13年比で26%削減と約束しているものの、内容的に決して高い目標とはいえない。しかも、日本の批准手続きはロシアと共に遅れており、”日本抜き”で発効する可能性さえあるのが実情だ。


 温暖化は、日常の生活にも大きな影響を与えているが、産業界も不安視している。たとえば航空業界内では、ジェット機などの飛行も温暖化に関係し、今のまま温暖化が進行すれば航空機業界はエコ対策資金を求められる可能性があるという。もし20%以上の改善がないと飛行機を運行させないといった案さえ出ているらしい。飛行機を運行できないことはあり得ないので、結局はエコ対策資金を出すこととなり、その資金源は航空運賃に上乗せされる結果になるわけだ。


 世界の温暖化対策はパリ協定で決められ、各国はパリ協定の批准を求められているが、一般人からするとなかなかピンと来ない。しかし、温暖化は日常生活を不快にするだけでなく、航空運賃はじめ悪影響を与える産業にも資金拠出を求められ、それらはまわりまわってわれわれが負担することになるということなのだ。
【財界 夏季特大号・2016年7月5日号 第426回】

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