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緊迫する米朝に日本は傍観か

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 アメリカのトランプ大統領と北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長による威嚇の応酬はまだ終わりそうにない。軍事力でも国力でも圧倒的に劣る北朝鮮がなぜここまで突っ張るのか。

 北朝鮮は、正恩氏が命令を出せばグアム沖30~40キロメートルの公海上に中距離弾道ミサイル「火星12」4発を発射できると公言している。

 これに対しトランプ大統領は「もし米国に向けて発射すれば数秒でわかる」とした上で、グアム島に着弾した場合には即時に軍事行動をとるといい、周辺海域に着弾した場合にも対応措置を検討すると主張している。いまやどちらも引く構えをみせず”チキンゲーム”のように脅しあう様相をみせている。さらにトランプ大統領は「かつて見たことのない炎と怒りに直面する。我々は臨戦態勢にある」と最大限の脅し文句を掲げて警告している。

 こうした警告が効いたのか金正恩委員長は「米国の様子をしばらく見守る」と発言。
「軍事衝突を防ぎたいなら米国が傲慢無礼な挑発行為と一方的な強要を直ちにやめ、われわれをこれ以上刺激してはならない」と強がりを言いつつも対立の一時的沈静化の姿勢をみせてきた。

 北朝鮮はアメリカ本土まで飛ばせる大陸間弾道ミサイルの開発に成功したことを主張し、強気の姿勢を崩していない。そこまで突っ張る背景としては、アメリカが本気で攻めてきて体制の崩壊を狙ってくるのではないかと危惧しているからだといわれる。ただアメリカは今のところ北朝鮮の体制転換までは意図していないと示唆している。

 今後の節目は、故金正日総書記が軍事優先の方針を決め2010年に制定した8月25日の「先軍節」と9月9日の「建国記念日」だ。昨年は9月9日に5回目の核実験を強行している。ただ、もし米朝が軍事衝突になるとすれば最初の90日間で民間人も含め100万人以上の死者が出ると予測されており、韓国にいる約20万人の米国人の救済も必要となる。

 今回の北朝鮮によるグアムへの発射保留にトランプ氏は「非常に賢明で、十分に筋の通った選択をした」と評価したが、グアムへの弾道ミサイル発射を控えただけでは米朝対話の条件にはならないとし、「北朝鮮が非核化に向けて真剣に取り組んだ時に対話をしたい。まだ我々は真剣な取り組みを見ていない」と突っぱねている。

 米朝ともにメンツを賭けたやりとりになってきているだけに今後の展開はまだ予断を許さない。在韓邦人は約5万7000人(旅行者を含む)といわれるが、日本は米朝の対決に邦人避難、日本企業の保護などに対応する手立てを整えているのだろうか。
【財界 2017年9月19日号 455回】

※本コラムは、先週発売された財界誌に掲載されたものです。その後、9月12日(ニューヨーク時間11日午後)に国連安全保障理事会は、北朝鮮が9月3日に6回目となる核実験を強行したこと等を受け、北朝鮮に対し格段に厳しい制裁措置を課す強力な国連安保理決議第2375号を全会一致で迅速に採択しております。

画像:Flickr / InSapphoWeTrust