曲がり角に来たコンビニ業界
生活に欠かせないインフラとして成長、発展してきたコンビニが、昨年末に初めて店舗が減少に転じた。少子高齢化、人口減少の進行とともにコンビニの出店も頭打ちとなってきたのだ。コンビニが登場してから50年近くになり、街の風景や人々のライフスタイルまで変えてきたコンビニ業界の先にはどんな買い物スタイルが待っているのだろうか。
コンビニは、セブンイレブン・ジャパンが1974年に東京都内で第一号店を開業した後、ローソン、ファミリーマートなど小売大手が次々に参入し、現在は主要7社が全国で5万5620店を展開している。コンビニ以前の新しい小売り業態は1950年代に登場したスーパーマーケットだった。客が自ら商品を選びレジで料金を支払う買い物のスタイルで、アメリカから導入された。それまでの日本の買い物は、八百屋、魚屋、肉屋、牛乳屋、日用雑貨などを扱う文房具店などが個別に店を構え、それぞれの店で商品を購入していた。
しかしスーパーとコンビニが登場すると、街の風景は大きく変わっていった。スーパーに行けば食料品だけでなく衣料、電気器具、日用品などを一ヵ所で買い求められるようになったし、コンビニでは住宅地域に24時間営業、公共料金や宅配便のサービスまで行うようになり、生活のインフラとして欠かせない存在になった。また、日用雑貨だけでなく夕食のおかずや弁当まで買える上、個人オーナーによる24時間営業が原則的に義務付けられているため、人々の生活形態を大きく変える作用や防犯の一助となっている。
■ 4ヵ月連続店舗数が減少
特にコンビニの商圏は一店舗あたり3000人の人口といわれ、小さな町村でも個人商店主が本社から商品を供給してもらえば簡単に店を開くことができたので急速に成長していった。日本フランチャイズチェーン協会の統計によると2005年のコンビニ店舗数は3万9966店だったが、2018年末には5万5743店まで増えている。出店を増やせば売り上げは確実に伸びていたから大手各社はオーナーを募り出店競争を行なっていたのである。しかし19年2月の5万5979店をピークに19年9月以降、閉店数が出店数を上回り前月に比べ4ヵ月連続で店舗数が減少、出店を増やして売り上げを伸ばすビジネスモデルは限界に来たのではないかと指摘され始めた。
■人手不足、人件費、長時間労働
コンビニの店舗展開が止まってきた大きな要因は人手不足と人件費の高騰だ。多くの店ではオーナーとその親族が長時間店頭に立ったり、外国人労働者を雇って経営してきたが、国内店舗が飽和状態に近づき競争の激化でこれまでの経営手法では立ちゆかなくなってきたのだ。
また売れ残った弁当など食料の廃棄と環境への配慮、本社側が要請する新商品の増大やサービスの知識に対応しきれなくなってきた店舗側の負担増、本社と加盟店のコスト、利益配分のあり方――などの見直しも大きな課題になっている。いまやコンビニ店の半数以上は徒歩5分以内に競合店を抱えており、そのうち3店以上の競合店があるという店は20%以上に達している。
■生活インフラとなっているコンビニ
このまま放置しておくと個別企業の経営問題を越えて、生活インフラとして機能しているコンビニが衰退する恐れもあるため経済産業省では、今年2月にコンビニ改革への報告書「令和の時代におけるコンビニの革新に向けて」を出した。この報告書によると、本社とフランチャイズチェーンの対立が深刻になる前に紛争解決のルールを整備するよう促しているほか、24時間経営や売れ残った商品の値引き販売問題、休日の確保、労働条件の改善、本社と店舗側の利益・コスト配分の見直しなどを検討するよう提案している。
最近は、流通・宅配業の発達で、商品によっては消費者が店に行かなくても商品を購入できるシステムが整い始めてきた。個人商店の時代からスーパー、チェーンストアの時代へと変化してきたが、コンビニが曲がり角に来ると次の時代への小売り、流通・販売の形態も模索されることになるのかもしれない。
【Japan In-depth 2020/2/17】