時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

本日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~地方の底力~

スタッフです。
本日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の音源が掲載されました。要約は以下の通りです。

テーマ:ダブル選挙で大阪が注目されるが、もっとある地方の力

大阪のダブル選挙が行われた。東京に対して大阪という意識が非常に強い選挙。昔は大阪も東京と並び称されてきたが、大阪は地盤沈下してしてきた。大阪に本社を持っている所も、東京に本社を移転する会社も多くなってきた。そこでもう一度大阪を強くしようということで大阪都構想というのが出てきたのだが、必ずしも大阪市の中でも賛成していないところもある上に、維新の会というのが本当に大阪を強くするためなのか、あるいは中央政界と結びついて何か別の事を考えているのかがはっきりしない為に大阪都構想というのが国民全体から何となく支持されていないところに何か問題があるように思う。

今日は印象に残った地方の力を紹介してみたい。これまでいろんなところをまわって地方をみているが、地方でしっかりしているところも沢山ある。今日はまず一番印象的だった所として「大分県の大山町」。以前は大山村と呼んだのだが、1961(昭和36)年にコメ作りをやめる。ここは山間地で夕方早々に日が暮れ、朝7時か8時にならないと日が出ない。牛や馬を使って稲作をやっても絶対に豊かにならないのであれば、コメ、牛、馬を捨て、その代わり果樹をやろうと「梅、クリ作ってハワイへ行こう」というスローガンを掲げた。最初は梅とクリとモモを作ろうと懸命に首長が説くわけだが、村民はなかなか納得しない。徐々にこのままではいけないと、みんながついてくるようになった。

しかし、当時の県や国はコメ作りに一生懸命なので、こういうことを行なう所は施策に反しているとして補助金を与えられなかったが、それにもまけずにスローガンの下、最終的に村民もみなついっていった。村長のリーダーシップにより、この土地柄でこのままだと豊かにならないという判断をし、6年後に本当にハワイに行く。梅、クリ、桃だけでは収入が伸びないので、毎月毎月サラリーマンと同様に月収が入るようにモノを作っていこうと、ゆず、ミカンなどコメから果樹の村に変えていった。同時に牛や豚を飼って、一次産業だけでなく、肥料苦情、バターなどを作り六次産業(=生産(1)+加工(2)+流通(3))をやっていった。いま流行りの「道の駅」を作りはじめ、それらの先駆的な村となった。当時人口は3000人位、今や一世帯当たりの収入は少ない所で600~700万円、多い所で1000万円以上ある豊かな村となった。ハワイにはもう40数回も言っている。ハワイ以外にも、アメリカ、イスラエルなどさまざまなところに視察に行っている。

また、村にケーブルを引き、天気情報、作付情報指導を行ない村自体が本当に豊かになってくるという村もある。これが地方創生のポイントだと思う。これを指導したのは当時の村長である矢幡治美(やはたはるみ)氏。何度か取材でお会いしたことがあるが、リーダーシップのある方で初め誰もついてこなかったが、粘り強い説得により、同じことをやり続けるのがいいのかなと村民の意識が変わり、今は二代目(矢羽田氏)が志を継いで同様に行なっている。

もう一つケースを紹介すると、宮城県気仙沼畠山重篤(しげあつ)氏。気仙沼のカキが取れなくなり、変色が見受けられた。原因は汽水。川が海にそそぐところにプランクトンあり、それをカキは食べて見事に育っていくのだが、その汽水が汚染されたことによるものであった。山の木が伐採され、工場建設による向上排水や生活排水、畑の農薬などにより汽水が汚染され、プランクトンが育たなくなった。そこで畠山さんは「森は海の恋人だ」山をもう一度よみがえらせないと汽水は良くならないと訴え始めた。汽水には様々な県から水が注がれているため、一県一県をまわり説得して運動を広めていった。運動をおこしたことで汽水が蘇えり20年以上かけてカキがまた捕れるようになった。

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※嶌の著書「日本人の覚悟」掲載画像 ご本人提供

畠山氏は漁師なので、川はさまざまな件にまたがっておりさまざまな役所などに話にいくとこれはうちの担当じゃないと断わられていた。しかしながら、懸命に説いたことが実ってきて、およそ15年かけて市民で年間数千本の木を植え、徐々に川の質も良くなっていった。いまやこの活動は教科書にも掲載され、「森は海の恋人」は全国のスローガンとなっている。

地方の創生は科学的な根拠もあると同時に、リーダーシップがある所が非常に大事ではないかと思う。先の大分の矢幡氏や畠山氏のような発想がその地域を蘇らせている。その方たちの意思が非常にはっきりしていて、村民を納得させるような論理をつくっていくというところがすごい。

大阪に話を戻すと、大阪もいってみれば橋本氏というリーダーシップのある方がいて、この人が都構想を唱えているが、これが本当に地方を豊かにするようなものになって、各市町村を納得させることが出来れば成功すると思うが、そこがいまひとつはっきりしない。中央政界の安倍氏、菅氏とくっついて、参議院の票を中央政界にあげることによって中央政界を変えようというところにポイントがあるのかどうなのか。それが街の人たちにどのように映っているのか、そこがはっきりしない為に混乱しているのではと思える。都構想の二重行政をやめ、無駄を省く、だから役所の職員の給与や人数を削減するという発想があること自体はそれなりに説得力を持っているし、それにみんな乗ったわけだが、途中から少しづつ中央との関係が取り沙汰されてきていているので、実際にハワイに行くような成果を出すということが大事。大阪はそのへんがこれから問われてくる。

地方には今日紹介した意外にも、成功例がまだまだ沢山あるので今後も紹介したい。

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