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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

本日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~北朝鮮の核実験から考える、止まない世界の核拡散~

森本毅郎・スタンバイ 日本全国8時です

スタッフです。
本日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の音源が掲載されました。要約は以下の通りです。

テーマ:北朝鮮の核実験から考える、止まらない世界の核の拡散

ここのところ北朝鮮の核実験の話で盛り上がっている。さまざまな調査では「水爆実験」ではないという見方のようだが、まだはっきりしたことはわからない。「水爆」であろうと、そうでなかろうと4回目の核実験であり、北朝鮮は日本の隣でもあることから基本的にはもっと批判すべきだ。広島・長崎への原爆投下から70年過ぎても、核兵器の拡散が世界で止まらないという実態が世界で浮き彫りになったという感じがする。

核のこれまでの歴史
そこで今日は核の話にふれてみたい。核はもともとは日本への原爆投下ということから始まる。戦争で日本の息の根を止めるために1945年に広島・長崎に核爆弾を投下した。その影響があまりにも甚大であったことから、核はその後世界に一気に拡散。旧ソ連が49年に核実験を実施したことを皮切りにイギリス、フランス、中国といった戦勝国が追随していく。そして、アメリカ・旧ソ連を中心とした核開発競争が進み、甚大な被害をもたらす核戦争の危険性が高まっていった。そこで、核保有をそれら5ヵ国のみに認め、他の国に拡散するのを防止する「核拡散防止条約(NPT)」が70年に発効した。しかしながら、核の拡散は止まらず、他の国も核を保有していく。

核が核を呼ぶ
一番衝撃が大きかったのはインドで、インドはNPTに加盟せず74年に核実験を実施。さらに98年にも実験を繰り返し、インドと領土紛争を抱える隣国パキスタンがその対抗手段として核実験を強行。ドンドン研究を進め、一部中国にもその研究内容を与えている。その他イスラエルにも核保有の疑惑がある。これらの結果、「核が核を呼ぶ」という核拡散は拡がる一方である。

国際情勢における優位性
最初、NPTで戦勝国5ヵ国のみに保有を認めたのだが、他の国からすると5ヵ国だけ特別扱いではないかという思いがある。当時は、核を開発するのには相当なおカネもかかる上に、それどころではない国内情勢もあった。しかしながら国際情勢の中で隣国に対して力を持つためには核が一番だという気持ちがドンドン拡がっていったということなのだろうと思う。

核不拡散といいながらも、すでに保有している国に「なくせ」といってもなかなか無くならない。保有している国は保有しているだけでも、十分に政治的な脅しにもなると思っている上、いろんな意味で得するわけなので核を「なくす」ことがなかなかできない。しかしながら、それをドンドン拡げると世界はどうなるのかという危険性も同時に拡がってくる。

核の脅威
インド、パキスタンイスラエルもそれに追随していったわけだが、一番問題になってきたのは「イラン」。昨年7月にアメリカ・ロシアなど6ヵ国と核協議に関する解決にむけた最終合意に達し、経済制裁を解除する見返りに、核兵器の原料となる「ウラン」の濃縮活動に制限をかけることになった。当初イランは核の保有によって自分の力を付けようと思っていたが、世界から制裁を浴びて輸入が出来なくなり、なんとかこれを逃れるため核協議に応じた。ただ、イランにとってイスラエルの核保有は脅威であり、それをどうしていくのかという問題は残されている。

あいまいな日本
こういう世界的な流れの中で日本は世界で唯一の被爆国という特別な立場であり日本の立場は非常にはっきりしているはずなのだが、これがまたあいまいである。最初の頃は日本も核開発に関して相当反対していた。インドの核実験後、外務省が天皇陛下に外遊先候補としてインド訪問を申し上げた際、陛下は「国民はインドでの核実験を忘れていないのではないか?」とインドを訪問しなかったということがあった。それほど、日本人は核に対するアレルギーが強かったし、それが浸透していた。しかしながら、徐々に米ソ・二大強国となり、日本もアメリカの「核の傘の下」にいないとまずいということになり、そこに入ってしまった。その後それに伴って日本の発言力も弱まってしまったいうのが今日の状況である。

日本のもどかしさ
核に関して印象的な記者時代の話としては、「東京サミット」直前に2つの大きな原発事故が起きた。一つ目は79年5月の東京サミット直前の3月のスリーマイル原発事故(アメリカ)、二つ目が86年5月の東京サミット直前の4月のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)が起こり、日本は何をいうのかが問われていたため、サミットでは原発に関する声明を出していた印象がある。

また、印象深い日本側の話としては、85年中曽根総理時代に今の安倍首相の父である安倍晋太郎氏が外務大臣を務めていた際、新聞社のインタビューに「政府はできる限りやっているが、率直にいってむなしい感じがする」とした上で、「日本は昨年(84年)、軍縮会議で核実験禁止のために可能な部分から合意を積み上げる『ステップ・バイ・ステップ』方式を提案したり努力しているが、アメリカ・ソ連両国が具体的に動いてくれないとどうにも。靴の上から足をかいているような気持になる」と発言し、隔靴掻痒であった。そして、安倍氏がむなしさを感じている間に、中国、インド、パキスタンが出てきた。息子の安倍首相が晋太郎氏のことをどう受け止め、今後どう出るのか。

被爆国でありながら…
去年、NPTに加盟していないインドと日本の原発輸出を可能にする原子力協定の締結に原則合意し、「日印合意」を行なった。また、昨年の国連総会で日本は「核兵器廃絶決議案」は採択したが、「核軍縮を進展させるため、ジュネーブで作業部会を開催する決議案」と「核兵器の非人道性を訴える『人道の誓約』決議案」は棄権した。被爆国としてもっと先頭に立って廃絶を訴えてもいいはずだが、全てがあいまいになってきているというように思う。結局は「アメリカの傘の下」ではないかといわれてしまうことがあるため、否決をしても説得力がない反対はするけれども口先だけというのが今までの問題。

最近の動き
この間の安倍政権の動きを見ても、憲法改正、海外派遣というような動きがだんだんキナ臭くなってきている。本当にこれをどう止めるのかというのは、安倍政権だけの問題ではなく、国民全体の問題としてもう少し考えないとまずいなと思う。日本の立場は微妙ではあるが、微妙な苦しさがにじまない、むしろ積極的に原発輸出という方向に舵を切っているところが気になる。昔は、中国やインドが核実験をすると反対の国民運動が起こったが、そういうことは今起らないのでそういうことも気になる。