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18日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~選挙のあり方を改めて考える~

スタッフです。
18日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。
テーマ:日本は選挙が多すぎる!?

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【民意を問うのは非常によいことだが・・・】
今週末に東京、福岡で補選が行われることから選挙の話題を取り上げてみたい。日本は国政の選挙が多すぎる。選挙が多いということは国民に民意をとうということから決して必ずしも悪いことではない。

しかしながら選挙があまりに多いと、安易に勝つための政策を垂れ流すという傾向が最近は特に強いように感じるという気がする。そのため、選挙の回数を振り返ってみる必要があると感じた。


【非常に多い日本の国政選挙】
そこで、戦後の日本の国政選挙を世界各国と比較してみたい。戦後71年で衆参合わせて50回実施。2年弱に1度の開催となっている。任期は衆議院が4年、参議院が6年と任期を全うせずに選挙が実施されている。他の国はどうかというと、アメリカは35回、フランスは29回、イギリスは19回、ドイツは18回。アメリカもそこそこ多いが、下院の選挙を2年に1度行うことになっているので、それで多いということもある。イギリスやドイツは日本の半分以下。

日本の参議院は3年に1度半数の改選がある上に、各国の選挙制度が異なるので単純な比較はできない。主要国でいうとフランスの参院選地方公共団体の代表が選ぶ間接選挙で、直接選挙ではない。イギリスは貴族院制度により、首相の助言に基づき国王が任命する終身制。ドイツは任期は定めていないが、各州政府が定員を決め任命しているため、選挙はない。

日本は衆院選だけを考えると戦後25回の実施。イギリスの19回、ドイツの18回より多い。本来、日本の衆院選は任期満了で4年に1度のはずだが、現実には2年弱に1回の開催となっているのが現状。


【非常に少ないドイツの解散】
解散を少なくしようという動きは特にヨーロッパで強く、ドイツの下院(日本の衆議院に該当)の任期は4年、日本と同様に解散もあるが、ドイツでは議会の解散を強く制限している。解散する場合は、日本とは違い首相の一存では解散できず、不信任の状態になったときだけ解散ができる。ただし、後任の首相を決めてから出ないと不信任案を提出できない制度となっているため、各党の足並みがそろわず話がまとまらないことが多い。よって、ドイツでの解散は戦後わずか3回しかない。

ドイツは戦前、短命な政権が続いて不安定となりナチスが台頭。その反省により、解散しにくい制度を導入している。 日本は時の総理が時流で「勝てそうだな」と思うと、解散しいつも解散風が吹いている。解散をするぞということはグラフになる。総理大臣は解散権が唯一の権限で、これを使いたがる。今もその傾向が出ている。


【イギリスで新制度により経済が回復】
イギリスを見てみると、下院は任期が5年と長い。さらに、2011年に事実上解散をしない「議会任期固定法」という制度ができた。これは、総選挙を5年ごとに5月の第一木曜日に行うことを定めたもので、例外として、内閣不信任案が可決された場合は解散できるがそれ以外は実施できないことになっている。

この動きは、解散に対する世論の批判があり、与党が有利なときの解散は野党は負けやすく、不公平だという声があった。この点は日本も考えなくてはならない点。今の時期もまさにその時期といえる。さらにイギリスでは、歳出削減と増税という課題があり、世論の支持を得られにくい政策のため支持率が下落してしまい、重要な政策を導入することが困難である。そのため、5年間は選挙をしない制度を作った。

これは、たとえ支持を得られにくい政策でも、国家のためには重要な政策を通せる地盤がイギリスにはあるといえる。日本は増税など支持を得られにくい政策は延期してしまうなど、そのあたりの政策の違いが如実に表れている。これによって、GDPが回復、財政再建も進み、支持率も回復したことからうまくいったといえる。


【選挙の意義を改めて考える】
選挙があるとメリット、デメリット、両面ある。デメリットとしては、選挙目当ての目玉政策ばかりを立案しバラマキになる可能性がある。「年金や医療」「税収の拡大」「財政赤字の解消」などがやりにくくなる。よって、国家百年の計がだんだんできなくなってしまうようになる。イギリスはその点を反省し、実際に取り組んだということだろう。

選挙が多いということは、それだけ民意を政治家に突きつけることができる。他方、選挙が少ないと長期政権でやりたい放題となり、憲法改正など政権の意のままに行われてしまう恐れが生じる可能性もある。選挙は重要だが、日本はさすがに多すぎるように思う。

 私は、やはり選挙が多いのはあまり得策ではないと思う。それは、中長期的な政策がなおざりになるように思うからだ。どうしても、頻繁に選挙があると政権政党は勝つことを意識して国民に辛い政策を先延ばしにする。消費増税の先延ばしや構造改革の遅れはその良い例だ。

そのためには、基本は任期を全うし、内閣不信任案に対抗する場合のみ制限するというのは良いのではないか。選挙の減少は、国民主権の制限にはなるが、総理の権限を縛り、相対的に国会が強くなる。さらに、選挙時に慎重に投票することで、コントロールをするということも一つの考えのように思う。例えば長期政権によって、この政権は経済面では非常に魅力があるが、憲法改正されるかもしれないというリスクを国民一人一人が慎重に見極め投票を行うことが重要だろう。

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