時代を読む

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進次郎とポスト安倍

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 安倍首相からすっかりオーラが無くなった。7月の国会閉会中の集中審議審査で、一強体制時代に放っていた自信たっぷりの物言いが完全に影をひそめてしまった。

 私は昨年から「安倍政権はピークを過ぎた」と何度か私のコラム(嶌信彦オフィシャルサイト「時代を読む」)に書き、今年5月には「驕(おご)りが過ぎると高転びも・・・」と予測した。そして都議選に惨敗した7月3日には「安倍一強体制に風穴」と書いた。以来、安倍政権の支持率は50、60%台からつるべ落としのように低落し、7月14日には「危険水域に入ってきた安倍政権」と政権崩壊の可能性と、“政界の一寸先は闇だ”という故事を紹介した。この間の急展開には安倍首相自身も驚きだったに違いない。

 ちなみに過去の総理の退陣直前の支持率は森喜朗内閣9%、安倍第一次29%、福田康夫28%、麻生太郎22%、鳩山由紀夫19%、菅直人18%、野田佳彦20%――で、30%を割ると、退陣までは時間の問題となっている。安倍内閣の直近の支持率は7月24日の毎日新聞調査だと26%、他の媒体でも軒並み20%台まで落ち込んでいるのだ。安倍一強体制を支え続けてきたのは、2013年7月の参院選で自民が圧勝して“ねじれ”を解消、その後も50%台の支持率を維持してきたからだった。

 しかし国民は安倍首相自身とその側近たちの驕りや失言、暴言、不誠実な答弁などにすっかり嫌気がさし、日本の将来にも輝きを見出せない政策に一挙に期待を失ったのだ。しかし安倍首相は、その国民離れに気づかず加計問題国会閉会中審議にも外遊を理由に欠席するなど甘くみていた。

 8月の内閣改造(※)で支持率回復を目指しているが、骨格人事を変えずに臨むというだけではさらに墓穴を掘るのではないか。本気で立て直したいなら唯一人気のある小泉進次郎議員を官房長官に抜擢し、次世代の有望若手を内閣に取り込み清新さを打ち出すしかないと思う。

 ただ“安倍一強”が崩れたとみるや、自民党内もざわつき始めた。来年末には衆院議員の任期が切れるのでそれまでに解散がある。これまでは最も有利な時を狙って解散を仕掛けることができたが、いまやそんな余裕すらなくなってきた。安倍首相は安保法制と憲法改正で名を残したいのだろうが、国民の希望は経済の復活と将来に対する安心感だ。その空気を読み違えて突っ走るようだと、また都民ファースト勢力に足元をすくわれよう。

 安倍首相は、口を開くと“経済第一”という。しかし日銀の異次元金融緩和と財政による刺激ぐらいで国民をワクワクさせるような政策はほとんど出ていない。安倍首相のやりたい政策はやはり憲法改正や安保法制、それと海外の首脳と会う外交なのだろうと国民は見切っている。安倍首相は、改憲勢力衆院の「3分の2」を確保しているうちに改正案を自民党案として秋の臨時国会に提出したいのだ。また総裁任期も延期して憲法改正などを見届けたい意欲もみせている。

 だが、7月の仙台市長選にも敗北すると自民党内から「首相に対する批判が強まっている。経済政策に関心を示さないからだ」と不満が高まってきた。

 ただ自民党は、民進党など野党が政権の受け皿になり得ないとタカをくくっている。だが都議選で大勝した都民ファーストが着々と国政進出の準備を進め、野党の不満分子がこれに合流すると一大勢力になる。また安倍一強や長老支配が弱いとわかれば、若手が小泉氏を立てて新党を作る可能性だってなきにしもあらずだ。いまや誰が国民の心をつかむかが勝負になってきた。政界ははっきりとポスト安倍時代に向かって動き出している。
 【電気新聞 2017年8月2日】

(※)本稿は昨日(8月3日)の内閣改造発表前に掲載されたものです。

画像:Wikimedia commons 地元、横須賀市の盆踊りで挨拶をする小泉進次郎議員(2012年8月13日)

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