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AI、ロボットが中間層直撃

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【ベビーブーム時代は年平均250万人】
過去に日本でもっとも多く赤ちゃんが生まれた年は、敗戦の混乱が落ち着きだした1949年だった。その数は269万6638人。その前の47、48年も多く、47~49年をベビーブーム時代と呼んでいる。その3年間の平均出生数は約250万人だったが、2016年、2017年の出生数は、戦後最少で100万人を切っている。出生数から死亡者数を引いた自然減は昨年初めて40万人を超えた(推計)。日本の少子化・人口減少の自然減は07年以降11年連続となっている。

その後、ベビーブーム時代に生まれた子供が親になった時に出生した71年から74年を第2次ベビーブーム時代といい、約210万人の子供が生まれている。しかしそれ以降の出生数は徐々に減少するばかりで、ここ2年間は100万人を割り込んでいるのだ。

かつては人口増大こそが成長の源と言われたものだ。実際、明治初期には約3500万人だった人口は、大正期に5000万人、昭和に入って1967年(昭和42年)に1億人を超える。その後も人口は増え続け、最近は1億2700万人台に達した。その間、第二次大戦の敗北、石油危機、リーマン・ショックなどの逆風時代もあったが、経済はほぼ順調に推移し1人当たりの国内総生産GDP)は明治初期の750ドル程度からいまや優に3万ドルを超える世界第3位の経済大国にまで成長した。

【2115年には5000万人、大正初期の人口に?】
しかし、人口を維持するには2.0の出生率が必要なのに、現在の日本の出生率は1.4前後なので、このまま推移すれば2050年代に1億人を切り、2115年には大正時代の5000万人に戻るとされる。人口増大と若者が多かったからこそ日本の高度成長と繁栄が築かれたのに、今後少子・高齢化時代に突入すると日本は並みの中堅国家に成り下がってしまうのではないか、という危機意識が高まっているのだ。

そのためか政府は最近、出生率を1.8程度に上げ、2080年の人口は1億人を目標とする。そして成長の源は人口数よりも1人当たりの生産性を上げれば、十分に経済大国として生き残れる、と強調し始めている。政府だけでなく、“人口増加率の減少を無闇に悲観する必要はない。少子・高齢化を悲観するより1人当たりの生産性を上げることに経済政策や規制の多い社会の動きを変えてゆけば日本はまだまだ大国としての存在感を保てる”という論調が増えている。

しかもこれからの時代はITや人口知能、ロボットの活用、女性の社会参加、経験豊かな高齢者の労働意欲も高いので、社会のあり方も含めた改革を進めてゆくことに知恵を絞るべきで、そこから新しい日本の道が開けるというのだ。

【ロボット、AIが人口減を穴埋めする?】
ただ、ロボットやAIが活躍し、それらが人間にとって代わる時代となれば、またそこに大きな社会問題が登場してくるに違いない。まず単純労働で生活していた人々は、ロボットなどに働く場を奪われてしまう可能性が高い。科学と技術の発達が社会問題となってハネ返ってくるのだ。また生産効率はあがるが、ロボット社会は味気のない生活を出現させることになるだろう。

人口知能の発展・進歩も、人間がAIによる予測や確立などで能力を判断されるようになると、AIの判断を優先し人間に落第の烙印を押して救済されないケースも出てきそうだという。また芸術や美的感覚など感性の世界にも無数のパターン認識が入り込み、しかも早さが圧倒的に違うと人間は負けてしまう。過去のあらゆるデータを取り込み、瞬時に判断できるようになるからだ。アメリカのグーグルでは2045年頃までに、あらゆる分野で人間を上回るAIが登場すると見立てて開発を進めているという。

【置いてけぼりになる人間】
すでに米国IBMの人口知能「ワトソン」は、2011年にクイズ王と対決し勝利したし、展開のパターンが無数にあるといわれていた囲碁の世界でもAIの「アルファ碁(AlphaGo)」が世界のトップ棋士に4勝1敗で勝っている。

20年以内に日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替されるともいわれる。まさに日本の中間層を直撃するのだ。日本の中間層の柱となっていた分野の危機は、そのまま日本社会の危機につながる可能性もあるわけだ。AIやロボットの導入は、生産性を上げ、高成長をもたらす主因になるという論調が増えているが、社会が効率一辺倒になると人間性を失い、社会全体の危機にもつながることを頭に入れて対応する必要があるだろう。

【Japan In Depth 2018年1月20日】
画像は、内閣府「平成29年版 少子化社会対策白書 概要版(PDF版)」より

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