時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

18日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 動物写真家 前川貴行様

f:id:Nobuhiko_Shima:20160721135104j:plain

スタッフです。18日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は先週に続き、動物写真家の前川貴行様をお迎えいたします。

動物写真の醍醐味、作品を通して伝えたいこと、これから撮影したい動物。アメリカやアフリカを主な活動場所として、野生動物をテーマに撮影する魅力などについてお伺いする予定です。

前回の放送音源が只今番組サイトにて公開中です。お聞き逃がしの方はぜひ合わせてお聞き下さい。
クマに魅せられた理由や、アラスカやカナダの極地で撮影する苦労話。山中でクマなどの野生動物と遭遇した時の衝撃や、被写体とどう馴染んでいくかなどにつきお伺いしました。 

国民、企業心理に心づかいを

f:id:Nobuhiko_Shima:20160916121430j:plain

 政府・日銀の財政・金融政策は、本当に正しい道を突き進んでいるのだろうか。黒田日銀総裁が登場して大胆な金融緩和策を実行したため、一時は1ドル=80円割れしていた円高は、あっという間に円安に転じた。その後も黒田日銀は大幅な金融緩和を続行、ついにゼロ金利からマイナス金利の導入にいたるまで踏み切った。

 低金利、ゼロ金利、マイナス金利となれば企業や消費者はおカネを借りやすくなり市場にカネがだぶついて、企業は安い金利のうちに設備投資を行い、消費者もおカネを使うようになるだろうとみたのだ。加えて財政面からは東日本大震災もあり災害復旧や公共投資などに惜しみなくおカネを注ぎ込んだ。

 その結果、円は1ドル=80円割れから、一時120円台をのぞくところまで進んだが、肝心の設備投資も消費も盛り上がらなかった。企業の内部留保資金が厚くなっただけだし、円安で輸出増ともならなかった。効果が目立ったのは、外国人観光客が急増し、爆買いをしてくれたことだろう。ただその爆買いも3ヵ月位前にこの欄で指摘したように下火となっている。

 黒田日銀総裁は相変わらず強気で、金融緩和の拡大や物価上昇率2%の目標は貫くと言い続けている。しかし、さすがに日銀や財政当局の内部ではこのまま今の方針を続けると金融機関の体力が弱り、財政健全化の目標も遠のくばかりだと懸念する声が出始めている。このため9月になったらこれまでの政策や効果を再点検すると言い出した。しかし調査、点検して本気で政策を見直す気があるのか。
 
 思うに安倍内閣は「経済が最重要」といいながら政策は日銀にまかせきりできたとしか思えない。日銀の失敗は、頭だけで考えた経済理論で突っ走っており、企業や消費者の心理などをよく研究していないためと思われる。経済と市場は理屈よりも消費者や企業の心理に左右されないのではないか。

 今の消費者は物価が多少安くなったり、おカネが借りやすくなっても消費を増やさないだろう。一番気にしていることは将来の不安なのだ。高齢化に伴う医療費の増大、死ぬまで安心して暮らせる預貯金の額などだ。若者や中年たちはリストラや老後の生活が安心できないのでボーナスがふえてもたとえ金利が低くとも貯金にまわすのだ。

 企業も多くは海外展開しているので、円安になっても国内生産を増やそうとはしない。国民や企業の消費意欲、投資を増やしたいならむしろ金利をあげ利回りのよい商品が出回った方が効果的なのではないか。日銀は経済理論だけを重視するのではなく企業や国民の心理も考えて政策を考えて欲しい。
【財界 2016年9月20日号 第431回】

昨日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~強権政治勃興の裏にはポピュリズム~

f:id:Nobuhiko_Shima:20160914152339j:plain

スタッフです。
昨日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:独裁すすむ世界情勢


【反対勢力は根こそぎに】
本日はこのところ世界で目立ちはじめた「強権政治」についてお話したい。まず、トルコのエルドアン大統領。政権に批判的なジャーナリスト・政治家・企業に対して 圧力を強めているとして、国際社会でも批判されている。象徴的な出来事としては2007年の爆破テロ未遂事件。政権側は、この事件を政権批判的な組織が企てたと断定し、大々的な摘発に乗り出し軍関係者約250人を拘束。さらに、ジャーナリスト100人以上までも投獄された。

つい2ヶ月前には、政権に反発する軍の一部が反政権運動、 軍事クーデターを起こすが未遂。ここでも、政権側は、軍、警官、公務員ら6万人を拘束、解雇した。さらに昨日(12日)報じられたニュースでは、自治体の首長28人をクーデターに関わった疑いで解任した。裁判という手法はとらずいきなり解任となっているのは、非常に強権的だといえる。自分達に反対する勢力は根こそぎにしてしまえという表れだ。


オバマ大統領への侮蔑も話題に】
続いて、フィリピンのドゥテルテ大統領。つい先日オバマ大統領を口汚く、罵り、首脳会談がご破算になった。フィリピンはアメリカに守ってもらっていた国なので、昔だったら大変なことだ。麻薬犯罪撲滅に強権的な動きで数百人の麻薬仲買人、常習者1000人以上が殺されたとされドゥテルテ大統領は「殺したのはたった1000人」と語っている。麻薬の常習者ということで市民は拍手するが、そのやり方に関しては眉をひそめている。しかしながら、フィリピン国内では非常に人気がある。


【中国でも目立つ強権政治】
さらに、中国の習近平国家主席もそうだ。汚職をどんどん摘発している。まもなく、次の5年間の人事を決定しなくてはならないため、江沢民派や李克強派と相当激しい闘いを繰り広げている。それに対しては言論統制への「21項目の通達」を出し、習氏の事を重点的に報じ李克強氏のことはあまり報道しない、反習近平氏のネットの書き込みがあったら直ちに封鎖するなど、激しい強権政治を行なっている。

その他、軍制服組トップ数人を解雇。汚職幹部の摘発は一段落したかにみえたが、まだまだ国営企業の幹部や構造改革に反対する人たちに対する摘発は続けるようだ。また、先日、昨年7月に逮捕された人権派弁護士の裁判を実施するとの報道もあった。これらのことから中国も強権的な政治が目立ってきたといえる。


【世界の弱体化】
トルコ、フィリピン、中国と紹介してきたが、何といっても我々の身近なのは北朝鮮。先週末の9月9日の共和国創建記念日に核実験を実施。さらに、この数年で100人以上の幹部を処刑。そして、8月中旬にはイギリス駐在の北朝鮮公使が亡命し、亡命理由は「金正恩体制に嫌気がさした」という。

この金正恩態勢をいつまで放置しておくのかという問題はあるが、アメリカも中国も今一つ強く出られない。今後まだまだ実験を行なう可能性は否めないし、日本に飛んでくる可能性もある。世界中から非難され制裁決議が行なわれてもほとんど効果はなく、世界がそれを取り押さえる力が無くなってきたといえる。


【米ソが牛耳った時代】
以前は、北朝鮮であれば中国が言えば収まる、新興国であればアメリカやソ連が言えば収まるという状況だったが、残念ながら今はそういう状況ではない。昔も強権政治はあった。例をあげると強権的で有名なフィリピン・マルコス大統領、エジプト・サダト大統領とムバラク大統領はこの二人の時代50~60年間エジプトを強権的に支配し、軍が非常に強かった。そして、アフリカ・ソマリアではソ連とアメリカが交互に味方し、政権がソ連派、アメリカ派と大きく入れ替わった、その中で特に印象に残っているのはバーレー大統領時代の強権だ。

冷戦時代は背後でアメリカとソ連がその国をバックアップしていたことによって全体が収まっていたが、今はそういった際に治める人がいなくなった。そのあたりが今の強権政治の難しい流れがあるのだろう。


【冷戦終結で事態は一変】
昔はアメリカを中心とする「資本主義、自由主義の国」とソ連を中心とする「共産主義社会主義の国」とが対立し、世界が二色に別れていたという感じであった。それによって中南米やアフリカでは、ある時はソ連側、ある時はアメリカ側に寄った政権となっていた。有事の際には、最後には背後のソ連とアメリカが話合えば解決できたのである。

しかしながら、西側はG7、社会主義側はソ連が中心となって世界を抑えていたのが、冷戦終結により困難となってきた。ロシアがウクライナに侵攻しても、西側は抗議はするもののそれを阻止することはできないようになっている。


【大衆翼賛的なポピュリズム
中国もさまざまな問題を抱えているが、大衆翼賛的なポピュリズムをうまく活用し、汚職摘発などもやりながら、強権政治となっている。その一方で、尖閣南シナ海東シナ海で問題を起こしているが誰もそれを押さえることが出来ない。内政的には国民が共感を覚えるような政策を実施し、国内を抑制している。その一方で、国外には反発はあるものの強く出て発散し、それが国民にも喜ばれる。このようにポピュリズムをうまく形容した新たな形の強権政治という感じがする。

そうなってきた一つの要因はアメリカ、ロシアの力が弱まってきた上に、ヨーロッパも混乱しているので、だれも問題が発生した際に抑制できなくなってきた。かつてのG7のような集団体制で抑制するような仕組みにしていかないと、世の中はますます混乱していくだろう。G7が弱体化しG20となり、非常に拡散し力を発揮できていないというジレンマに陥っている。これがジレンマのままで終わるのか、内戦などが勃発しそれによってますます混乱するということもある。今、瀬戸際にきているように思う。

画像はトルコ・エルドアン大統領(Wikimedia commons / Recep Tayyip Erdogan, Prime Minister of Turkey captured during the session 'The New Comparative Advantages' at the Annual Meeting 2006 of the World Economic Forum in Davos, Switzerland, January 27, 2006. Copyright by World Economic Forum swiss-image.ch/Photo by E.T. Studhalter)

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 動物写真家 前川貴行様 音源掲載

f:id:Nobuhiko_Shima:20160721135104j:plain

スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)の動物写真家の前川貴行様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

動物との対峙や衝撃 
クマに魅せられた理由や、アラスカやカナダの極地で撮影する苦労話。山中でクマなどの野生動物と遭遇した時の衝撃や、被写体とどう馴染んでいくかなどにつきお伺いしました。 

 

次週も前川さまもゲストにお迎えし、動物写真の醍醐味、作品を通して伝えたいこと、これから撮影したい動物。アメリカやアフリカを主な活動場所として、野生動物をテーマに撮影する魅力などについてお伺いする予定です。

次週もお楽しみに。

シルクロードの日本人伝説

f:id:Nobuhiko_Shima:20160909174358j:plain

 小さい頃から中国大陸、中央アジアシルクロード――といった言葉に夢やロマンを感じていた。私は1942年に中国で生まれ、1年ほど上海で暮らしたことや、父も新聞記者で中国やアジア地域を駆け巡り、時々取材の話などを聞いていたためだろう。私と母は敗戦間近の1944年末に帰国しているが中国滞在中の記憶は全くない。時々、中国にいた頃の写真を見て記憶を辿(たど)るのだが何も覚えていない。

 母は、当時としては飛んでいる女性だった。女子専門学校を卒業後、京都のデパートの宣伝部に勤務。アメリカ行きを望んだが日米関係の悪化により、北京へ渡り、北京の中学校で中国人に日本語等を教えていた。そこで父と知り合って結婚したが、今風に言えば”デキちゃった婚”だったのではないかと思っている。

 そんな家庭環境もありわが家には中国関係の書籍がかなり多く、それらの背表紙を見ているうちに興味をもったように思う。宮崎滔天(みやざきとうてん)の「三十三年の夢」やヘディンの「さまよえる湖」などを読み、ますます大陸にロマンを感ずるようになった。

 中国には記者となり、1970年代に初めて訪問。以来、仕事や旅行で3~4年に1回は訪れたが中央アジアはまだ遠かった。ウズベキスタンに初めて足を踏み入れたのは96年。アジア開発銀行の総裁を務めた千野忠男(ちのただお)さん(元大蔵省財務官)の話を聞き、俄然(がぜん)興味が湧いた。ウズベクは91年にソ連から独立し、国家づくりのモデルを日本に求めたという。若い志士たちが奔走し途上国から近代国家をつくり、欧米先進国に追いついた様子をみて”見習うべきは日本だ”と思ったようだ。

 ウズベクは数千年前から欧州と中国をつなぐ真ん中に位置し、東西の文物、文化、学問、人間の交流の結節点にあった。天文学や数学、織物文化などに優れ、欧州やインド、ペルシャ、トルコ、中国、モンゴル、ロシア人などの交易が行き交い、16世紀の大航海時代が来るまでは世界の文化の中心的存在だった。しかしその後、鉄道や飛行機、宇宙の時代が到来するにつれ中央アジアの存在感は薄れてゆく。

 日本との関係では第二次大戦後、満州で捕虜となった日本の航空工兵が首都のタシケントに、ソ連の四大オペラハウスといわれるナボイ劇場をウズベク人と共に47年に完成させ、この伝説的秘話が語り継がれてきた。66年にタシケント市が全壊する大地震に襲われるが、ナボイ劇場は凛としてその美しい姿をとどめた。そして、中央アジア全体に日本人の仕事ぶりや勤勉さ、美徳が伝えられ、有名な観光的建物となった。今なお、捕虜になっても後世に恥を残さないような建物を作ろうと決意し、完成させた約5百名の日本兵の伝説が今なお伝えられているのである。

国立民族学博物館 編集・発行『月刊みんぱく』2016年8月号に掲載】

画像は、本コラムに登場するナボイ劇場正面。

この日本人伝説を描いた「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」を昨年9月末に角川書店より上梓しました。1年近く経った今でも、「冒頭から感動した」など読まれた方からさまざまなお手紙を頂いています。

まだお読みになっていない方は、この日本人伝説をぜひお読み頂けると幸いです。全国津々浦々の図書館に入荷頂いています。

「中央アジア+日本」対話 第9回東京対話(公開シンポジウム)「知られざる中央アジア:その魅力と日本との絆」にて嶌がスピーカーを務めます

f:id:Nobuhiko_Shima:20160909113203j:plain

スタッフです。外務省主催,独立行政法人国際交流基金筑波大学東京大学東京外国語大学の共催により、「中央アジア+日本」対話 第9回東京対話ウィークリーイベント「知られざる中央アジア:その魅力と日本との絆」の開催される旨の告知が外務省のサイトに掲載されました。

会期中、9月28日に嶌が公開シンポジウム「知られざる中央アジア:その魅力と日本との絆」に登壇し、中央アジアの魅力を語ります。

開催概要
開催日時: 2016年9月28日(水曜日)10:00~15:00 (9:30開場)
      嶌の登場時間は13時30分ごろの予定となっております。

f:id:Nobuhiko_Shima:20160909121042j:plain

開催場所: 筑波大学東京キャンパス(茗荷谷

主催 : 外務省
共催 : 筑波大学
入場無料、要事前登録(定員あり)、一般公開,日露同時通訳付き
出演者(敬称略) : 中央アジア5か国からの招聘者,松浦俊昭(唐招提寺執事)、小松久男東京外国語大学特任教授)、相木俊宏(外務省中央アジア担当特別代表(大使))、嶌信彦(ジャーナリスト)他

参加ご希望の方は以下申込書に必要事項を記載の上、申込書に記載のメールかFAXにてご応募ください。なお、各イベントとも定員に達し次第締め切られます。
申込み用紙(Office Word):リンクをクリックするとダウンロードされます。
申込み用紙(PDF) 


中央アジア+日本」対話は、2004年8月に川口外務大臣(当時)が中央アジア諸国との対話と協力を目的として立ち上げられた枠組みです。日本が触媒することで中央アジアが開かれた地域として安定・発展していくことや域内国が共通の課題に共同で対処することも目的としています。

今回、日本ではまだ馴染みの薄い中央アジア各国の魅力を一人でも多くの日本の方々に知っていただくため、従来の公開シンポジウム(東京対話)に加え、映画祭、音楽祭、大使館オープンイベントという3つの文化交流イベントを初めて企画さました。

各イベントに参加された方には、中央アジアを舞台とした人気コミック「乙嫁語り」の作家である漫画家・森薫先生によるオリジナル・イラスト入りグッズをご用意されているようです。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

シンポジウム等開催イベントの概要は外務省サイトに掲載されておりますので、以下リンクを参照ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/ca_c/page23_001619.html

11日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 動物写真家 前川貴行様

スタッフです。次回11日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)はゲストに 動物写真家の前川貴行様をお迎えします。

動物との対峙や衝撃 
クマに魅せられた理由や、アラスカやカナダの極地で撮影する苦労話。山中でクマなどの野生動物と遭遇した時の衝撃や、被写体とどう馴染んでいくかなどにつきお伺いする予定です。 

※トップ画像は前川氏のオフィシャルサイト内のギャラリー より

 Facebook

 嶌信彦メールマガジン

 嶌信彦メールマガジン

書籍情報
日本人の覚悟

日本人の覚悟―成熟経済を超える

(実業之日本社)
【著】嶌 信彦


日本の「世界商品」力

日本の『世界商品』力

(集英社新書)
【著】嶌 信彦

     
首脳外交

首脳外交-先進国サミットの裏面史

(文春新書)
【著】嶌 信彦


 
嶌信彦の一筆入魂

嶌信彦の一筆入魂

(財界研究所)
【著】嶌 信彦


ニュースキャスターたちの24時間

ニュースキャスターたちの24時間

(講談社)
【著】嶌 信彦
       

 日本ウズベキスタン協会