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ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

2月10日 長野県上田市商工会様主催の新春特別講演会にて講演

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スタッフです。

2月10日(金)に長野県上田市商工会主催の「新春特別講演会」にて嶌が講演いたします。世界は大動乱の時代に突入し右傾化も心配される中、経済のみならず外交、安全保障面など今後の行方が注目されています。地方創生という点も踏まえた今後の生き方などをお話しする予定です。

日時:2月10日(金)18時~19時30分
演題:これからの10年 ~大動乱時代の地方~
場所:丸子ふれいあいステーション3階

定員:80名
参加費:無料(申込不要)
主催:上田市商工会
共催:丸子工業振興会

長野ではSBC(信越放送)「モーニングワイド・ラジオJ」の放送時間内にて放送されている「日本全国8時です」(平日8時)に毎週火曜日出演しており、お聴きいただいている方もいらっしゃるかと思います。

お近くの方はぜひ足を運んでいただけると幸いです。

10日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~地球儀を俯瞰する外交 成果は如何に~

10日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:ぐらつく安倍外交。今年の荒波を乗り越えられるか?

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昨年末の放送で安倍外交の総括を行なうと予告した。安倍政権の最大の売りは外交といわれ、題目は”地球儀を俯瞰する外交”として世界中を飛び回っている。いったい安倍外交の成果は何かということを本日は考えてみたい。

【地球儀を俯瞰する外交を点検】
歴代総理に比べ安倍首相は実に外交に熱心で、この4年間での訪問国は100ヵ国を超え、 外国首脳との会談は200回に達し、電話会談も含めると300回ともいわれる。アメリカのトランプ次期大統領とはいち早く会談し、 ロシアのプーチン大統領との会談も15回に及ぶ。さらに、中国、アジア各国、ヨーロッパ、アフリカ、中東、 中南米とまさに地球を俯瞰する「地球儀外交」は間違いなく、歴代の首相と比べても特筆されるほどだ。

そのこともあってか、内閣支持率はほぼ50%台で安定。去年暮れの真珠湾慰霊の旅を終えると60%台後半まで上がった。支持率の上昇、首脳会談の回数が多い中で「本当の成果はどうなのか?」ということを点検してみたい。

【米ソ両国との外交成果は・・・】
確かに「訪問回数」こそ多いが、行っていない所を順番に周っているだけという感もある中で訪問国が増えきた。  

成果を考えてみると、去年の暮れ期待をふくらませた「日露首脳会談」では、日露平和条約、北方四島の話も経済協力の話だけで政治分野はしぼんでしまった。過去15回もあって、進むどころか、巻き戻ったようにもみえる以前この番組でお伝えしたようにエリツィン時代は実現一歩手前まで進んでいたが、安倍政権になり巻き戻った感も否めない。今後、トランプ氏が「親ロシア外交」を行なうと表明しており、トランプ氏とプーチン大統領が仲良くなると、 日本がはじき飛ばされる恐れがないとはいえない。そういう意味でいうと、ロシア外交は成功したとはいえないだろう。

さらに、安倍首相は日本時間の12月28日にオバマ大統領と最後の首脳会談を実施。日本の真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊するアリゾナ記念館を訪れた。そこで、安倍首相は「歴史に残る激しい戦争を戦った日本とアメリカは、 歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国」と日米同盟強化を誓った。確かに言葉は美しいが、オバマ大統領との間で日本の奇襲攻撃やアメリカによる原爆投下についてきちんと話し合いをしている気配はない。 

【外交全体はちぐはぐな印象も】
そんな安倍首相の真珠湾訪問の翌日、稲田防衛大臣靖国を参拝。稲田大臣は安倍首相に同行して真珠湾を訪問し、 日本の真珠湾攻撃による戦没者を慰霊したばかりにも関わらず、A級戦犯を合祀した靖国防衛大臣として参拝した。このことは、中国や韓国などとの問題にも影響がでるとみえ、なんだか全体として「ちぐはぐ」なようにみえる。

この影響により、稲田大臣が靖国に参拝した翌日に今度は韓国の日本総領事館前に慰安婦像が再び市民団体によって設置された。今回、韓国政府は前回のように強制撤去をしなかった。日本政府はそこで対抗措置として駐韓国日本大使や総領事を一時帰国させたほか、日韓通貨交換(スワップ)の取り決め協議の中断や日韓ハイレベル経済協議の延期などの方針を発表した。そういう意味からも全体がちぐはぐで、成果はいまひとつ上がっていないといえる。

韓国側は政治的に不安定な状況であり、日本への反発も日々増加している。現在、韓国政府には統治者能力が皆無であり、韓国政府はこの少女像の設置に関しては各地方に判断を一任している。こうなってくると対日関係も危うくなる。さらに日中韓の首脳会談がずっと延期されたままで、日本の韓国に対するあり様が非常に難しい状況となってきた。

【先が見えない日米関係】
アメリカに対しては、トランプ政権になってからもどうなるかわからない状況・・・

トランプ氏は在日米軍の負担をもっと増やせと語り、現状日本の75%負担に更なる増加を要求。メキシコなどに工場を作ろうとするトヨタに対し、メキシコでの工場建設計画を撤回しなければ アメリカで高い関税をかけるとツイッターで警告。その影響か、トヨタは本日1.1兆円投資すると表明。トヨタはアメリカでの雇用は減らさないなどの主張があるにもかかわらず、このようなトランプ氏の一企業に口先介入するという動きは気になる。

【日本の役割を果たしているのか・・・】
さらにトランプ氏はTPPに消極的(※)で、日本の当初の目論見ははずれつつある。そして、京都議定書の後継の枠組である環境問題の「パリ協定」(※2)に対しても非常に消極的で失速している。世界で最初に行った安倍、トランプ会談でもこのことについて話された形跡はない。

トランプ氏の「二つの中国」発言で米中関係は緊張状態にあるが、これに関しては日本はなんとなくだんまりを決め込んでいる。さらに、中国による南沙問題によって東南アジアが分断されつつあり、その中でこの問題に関しても日本が動いた形跡はない。これらのことからも確かに世界を周ってはいるが、「本当に実のある外交を行なっているのか?」という感じがする。

【汗をかく外交の重要性】
過去の日本の外交と比較して考えると、日本の国益に関して本気で動くということが大事だと思うのだが・・・

例えば、田中角栄氏は資源外交として欧米の石油資本を敵にまわし、中東産油国と直接取引する道を開いた。この結果、アメリカの逆鱗にふれ田中氏は退陣を余儀なくされたが、 日本の「中東外交」「油外交」の基礎を築いたといえる。また、中曽根氏はレーガン氏と「ロン・ヤス」関係をうんと深め、その結果日米摩擦を鎮静化させている。

現在、先に述べたように中国によって東南アジア諸国が分断されつつある。さらに中東ではそれぞれ日本と親しいイランとサウジアラビア両国が断交状態となっている。これらに対して日本が仲介したり、動いているという形跡はなく、この件に関しても汗をかくことがもう少し大事なのではないかと思う。

【数字が示す首相の影響力・・・】
数字から今の安倍政権を見てみるといまいちなところがある。先月発表されたフォーブス誌の「世界の人物影響力ランキング」で1位は「プーチン大統領」2位が「トランプ氏」、3位が「メルケル首相」、4位が「習近平主席」などが続き・・・ 「安倍総理」は37位。日本は世界第3位のGDP大国であり、安倍首相は100ヵ国も周っているのに影響力では評価されていない。これまで各国を周っていたのは単なるにぎやかしとパフォーマンスだけだったととられかねないので、もう少し頑張ってほしいという気がする。 

今年は世界各国でトップが変わるタイミングで、世界がさらに右傾化が進む危険性もある。その中で安倍首相の動きは注目されるはずであるが・・・

今年は、オランダ(3月)、フランス(4~5月)、ドイツ(9月)、イタリアも総選挙が前倒されて今年になる可能性もある。イギリスのEU離脱の話もどう動くのか・・・

こういった中で、ただ周るだけでなく日本は何を考えているのかをもっとぶつけ、仲介できるところは仲介し、日本の存在感を示してほしい。

(注)上記は放送日当日の内容であるため、現状と相違がある部分もございます。
(※)トランプ米大統領は就任直後の23日に選挙公約通りTPPからの正式離脱に関する大統領令に署名している。
(※2)米デュポンやナイキなど630以上の企業・団体が10日、トランプ次期米大統領(当時)や米議会に対し、地球温暖化対策を強化するよう求める要望書を提出している。

目指せ!第二の創業時代

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中小・零細企業群の中で「2017年問題」が大きな注目点となっている。団塊世代(1947~1950年生まれ)の経営者が70歳を迎え始め廃業が急増するとみられているからだ。日本の企業数は約382万社(2014年現在、中小企業庁発表)。そのうち99.7%が中小・零細企業で成り立っている。

いま中小企業の経営者年齢で最も多いのは2015年時点で66歳、20年前は47歳の働き盛りの世代が社長として最も多かった。数字的にみると、結局20年前の社長がそのまま経営してきたものの、ここへ来て高齢化となり後継者不在で悩める状況にあるというのが2017年問題の核心といえる。

しかも後継者不在は売り上げ規模が小さいほど高い。帝国データバンクの調べだと7割にのぼり、1~10億円未満で約7割、10~100億円未満で約6割となっている。また2015年の企業の休廃業、解散件数は2万6700件で、2009年以降は毎年2万5000件を超す高水準(東京商工リサーチ調べ)で推移しているのだ。後継者がいなければ廃業に追い込まれるしかないわけである。

■後継者不足を乗り越えよう

後継者難の解決で最も望まれているのは、①自分の身内・家族か親類が継ぐ、②企業ごと第三者に売却――で、これがうまくいかないと従業員の中から選ぶか、廃業ということになる。日本の中小・零細企業は戦後の焼け跡から起業したところが多く、従業員数が数人からせいぜい数十人といった規模で、従業員10人未満が4割以上とされる。

多くは大企業の下請けとして生き残ってきたが、自ら技術開発を行ない独自の製品、部品を作って競争力をつけてきた企業もある。幸い日本経済は1950年代後半から成長軌道に乗り、60~90年は高度成長を謳歌した。その間の70年代に2回の石油危機に見舞われてマイナス成長のいっときもあったが、日本人の勤勉さや忍耐強さなどで乗り越えてきた。

■バブル時代以降の構想力を

本当に苦しかったのは、バブルが崩壊した90年代以降だろう。金融の大再編をはじめとして鉄鋼、家電、流通などのあらゆる業界で倒産や統廃合が行なわれ、特に東京への一極集中で地方の衰退が目立った。産業界で大きな倒産や合併などがほとんどなかったのは自動車業界ぐらいだったのではないか。

その他の産業で生き残ってきた企業はリストラをしたり、海外に市場と安い労働力を求めて何とか息をついてきたというのが実情だろう。中小・零細企業は、大企業とともにリスクを賭けて海外に進出し、何とか生き延びてきたのだ。

ただ、世界を見渡すと日本は安定した部類に入るとみられ、差し迫った危機感はない。たぶん、高度成長時代に蓄積したストックを取り崩したり、約20年にわたって実質賃金が上昇せず社員がガマンしてきたことによって何とか持ち応えてきたといえる。その結果、消費はちっとも拡大せず大きな設備投資もないまま今日に至っている。

そのためかつてのような大家族は見当たらず少子化が進む一方で、このことが人口減少となって表面化している。今の出生率で進むと2050年には日本の人口は1億人を割ってしまう。対策を打たないと2100年には4959万人まで減少する(内閣府調べ)という見通しもあるほどだ。

■戦後の創業、起業家精神を取り戻そう

この流れを打開するには、やはり経済、とくに中小・零細企業が活性化するしかないだろう。戦後の日本は敗戦の廃墟の中から企業が立ち上がって今日の礎を築いたのだ。ソニーパナソニック松下電器)、シャープといった家電メーカーやトヨタ、ホンダ、日産などの自動車産業も僅かの人数でソケットや電球、オートバイなどの製作からスタートしてきたのだ。その家電や自動車、機械業界などが輸出で日本経済を引っ張り、60年代後半から一億総中流時代となって家電製品や車、住宅などの消費ブームを起こし高度成長に繋げてきたといえる。

その間、日本企業はアメリカ、ヨーロッパなどの企業を次々と追いつめ、日米経済摩擦、日欧摩擦などを引き起こし、金融や産業のルールを変えられてきた。当時はまだ新興国が育っていなかったから日本の一人舞台といってもよく、“働き方”ならぬ日本人の働き過ぎも摩擦問題のテーマになったほどだ。

戦争直後の日本が、多くの企業の創業時代だとすれば、いま日本に求められているのは第二の創業だろう。アメリカは古い産業に代わってITやバイオ、宇宙、医薬などの産業が次々と立ち上がり、アップル、グーグル等々の世界企業を生んできている。日本の技術水準、人材、感性、工夫と発想などを起業化に結び付け、売り方を工夫すれば日本の第二の創業時代を呼び込むことも夢ではないはずだ。

リストラやM&A(買収)などで企業規模を大きくすることより、中堅でもピカリと光る企業群を数多く輩出すれば、若い人々の夢にもつながろう。実は日本にもそうした企業は数多くあるのに、なぜかあまり注目されていないのは残念なことだ。

経済産業省では、日本のはばたく中小・零細企業の名前や実例を特集することがあるが、2016年5月に「はばたく中小企業・小規模事業者300社」と「はばたく商店街30選」を選定しているのでこちらも参考になるだろう。

【Japan In-depth 2017年1月21日】

昨日TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:四国霊場栄福寺住職 白川密成様 音源掲載

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに四国霊場栄福寺の住職・白川密成様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。白川様は実体験をつづった「ボクは坊さん。」を上梓され、2015年には本書が伊藤淳史様主演で実写映画化されています。

四国お遍路ついて、24歳で住職に転身した経緯、およそ100日間の修行後「阿闍梨」の資格を得た時の話しや、尼僧でもある奥様との意外な出会いなどにつきお伺いいたしました。

次週も白川様をゲストにお迎えし、住職になってよく聴かれるようになったというお布施などのお寺に関する素朴な疑問や、若くして住職になってのご苦労や心がけていること、永福寺が発信するブログ、今のお遍路ブームの背景などにつきお伺いする予定です。 
 
「ボクは坊さん。」に続いて「坊さん、父になる」も上梓されております。

22日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲストに四国霊場栄福寺住職の白川密成様をお迎え 

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スタッフです。22日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに四国霊場栄福寺の住職・白川密成様をお迎えいたします。白川様は実体験をつづった「ボクは坊さん。」を上梓され、2015年には本書が伊藤淳史様主演で実写映画化されました。

四国お遍路ついて、24歳で住職に転身した経緯、およそ100日間の修行後「阿闍梨」の資格を得た時の話しや、尼僧でもある奥様との意外な出会いなどにつきお伺いする予定です。
 
「ボクは坊さん。」に続いて「坊さん、父になる」も上梓されております。

日・露外交の失敗 ――甘い見通しがあだに・・・――

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 安倍首相が今年の最大の外交課題、交渉として力を入れてきたのが日露問題だった。北方領土の返還(歯舞、色丹の2島先行返還)、日露平和条約の締結が目標だった。一時は安倍政権も好感触を得ていたようで、国民に期待を抱かせるような言動をみせていたが、結果は完全な空振りに終わった。安倍首相は「今回は長い道程の第一歩だ」と総括したが、今後どんなスケジュールで段階を踏み2つのテーマを解決しようとするのか、期待が大きかっただけに脱力感も大きく、次の展望が見えない状況だ。日本側の一人相撲だったのだろうか。

――新しいアプローチを模索したが・・・――
 日露交渉の数カ月前、外務省幹部らは「日露問題の議論はほぼ出尽くしている。新展開を求めるには今までにない“新しいアプローチ”が必要で、そのアイディアを模索している」と語っていた。その新アプローチが、北方四島(歯舞、色丹、国後、択捉島)で日露が「共同経済活動」に取り組み、そのための「特別な制度」制定の交渉を始めるというものだった。このため日本側はエネルギー、医療など8項目の共同課題を設定、約80件の具体的プロジェクトを立て、事業規模で3,000億円に達する案を用意した。ただ、これらの経済協力は援助ではなく民間投資で進めるものだ。例えば、医療では三井物産が製薬大手のアールファームに出資したり、理化学研究所がエイドス社およびダナフォーム社と携帯型感染症診断システム開発を行う。また、中小企業交流ではJETROがロシアの中小企業発展公社と協力、エネルギーについては丸紅などがサハリン沖で小型LNGプラントを建設するなど――さまざまなプロジェクトが課題にあがっている。このほか都市づくり、先端技術、極東の産業振興など多くのテーマがあるものの、ロシアのビジネス環境、慣行に馴染めるか、いざ問題が起こったとき共同行動とはいえ、どちらの法律で解決、和解していくのかなどの問題がある。四島はロシアが実効支配しているだけに、やはり最終的には主権の問題がはっきりしないと投資・協力しにくいとして慎重なのだ。

――新しいアプローチに日本企業は慎重――
 それだけに四島の返還、施政権などの問題に方向性がみえない限り経済共同行動も進みにくいと思われる。日本側は領土の帰属論から始めると交渉が進まないと考え、経済協力の実をあげることから「経済共同行動」と「特別な制度」という新しいアプローチで領土問題をほぐす糸口にしようとした。しかし、会談は95分にも及んだものの、プーチン大統領は日本企業に特別な法的地位を与えることには首をたてにふらず、ロシア側は容認しなかった。ロシア側の専門家は「プーチン氏が1956年の日ソ共同宣言を超える(歯舞、色丹以外の島)ような譲歩をすることはあり得ないし、国後と択捉の帰属をあいまいにしたまま歯舞、色丹の引き渡しに応じるとは思えない」とも言う。はたして日本側が新しいアプローチを進めて経済協力を進めれば道が開けるのかどうか、日本側はもう一度、今回の日露交渉をじっくり総括したうえで出直すしかあるまい。

――日露交渉に世界は冷淡――
 日露交渉には国際情勢の変化も見据える必要がある。ロシアのクリミア半島進攻などに対して国際社会はロシア制裁を課しており、日本もこれに参加している。特にEUはロシアの膨張政策に危機感を強めており、制裁強化を計画しているほどだ。こうしたEUの方針からすれば、制裁に共同参加している日本がロシアに経済協力するアプローチは、EUには裏切り行為と映るわけで、不快感を示しているのである。そのEUと日本は、新たな貿易交渉を進めている最中でもある。ロシアはEUとの関係が悪化しているので、東の日本、中国に寄ってきている面があるのだ。

 また、プーチン大統領とトランプ次期米大統領の関係がどうなるのか。2人は性格的にウマが合うともいわれ、駐露大使にプーチン大統領と長い付き合いのある人を送り込むという。米露関係が好転するとまた事情が変化する可能性もあるが、中東情勢ではロシアはシリア政権寄りなのに対し、米欧は反政府軍を支援していて複雑だ。

――歯舞・色丹の面積は北方領土全体の5%――
 北方四島といっても、1956年の日ソ共同宣言で返還を約束したのは歯舞群島色丹島だけで、択捉、国後は含まれていない。しかも歯舞、色丹の面積は北方四島のうち5%にも満たないのだ。その上、択捉島には約6,000人。国後島には約8,000人、色丹島には約3,000人のロシア人が暮らしており(歯舞群島は無人)、軍事施設も備えている。もし返還となればロシア居住民をどうするのか、また、日本人で移住して住む人が本当にいるのかといった、現実的難題も出てくる。それなら、むしろ日本人の墓参りのための自由往来や漁業権の回復などから始める方が、話は簡単のように見える。

 とにかく、今回の日露交渉は北方領土返還に手が届くような期待が盛り上がりすぎたせいか、国民も島民も肩すかしを食らった感じになっているようだ。

 たしかに、戦後70年も過ぎているのに平和条約が結ばれていないのは異常であり、締結できれば安倍外交の大きなレガシー(遺産)になることは間違いない。これを成功させて“1月総選挙”などの思惑もあったようだが、すべてはご破算となったとみてよかろう。15回もプーチン大統領と首脳会談を行ってきただけに、安倍首相はそれなりの展望をもっていたのだろうが、結果は見通しの甘い読み違いと言われても仕方がなかろう。
TSR情報 2017年1月17日】

1月21日(土)14時からプレスセンターで日本ウズベキスタン協会新年会を開催~プロの演奏家による演奏やウズベクダンスも堪能~

既報の通り、いよいよ21日(土)14時から私が会長を務める日本ウズベキスタン協会の恒例の新年会を開催します。

今年も皆さんが楽しみにされている在日ウズベク大使館からおいしいウズベク料理を差し入れいただく予定です。

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今回は、昨年9月にウズベキスタンの発掘現場で倒れられ、94歳で亡くなられた加藤九祚(きゅうぞう)さんの奥様であり、中央アジアの服飾研究家である定子さんをトークゲストにお招きし、加藤さんの思い出を語っていただきます。

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※以前開催された新年会のトークショーに加藤さんに出演いただいた模様

さらに、ウズベキスタン協会では毎年行われている「アレクセイ・スルタノフ記念コンサート」を後援していますが、昨年8月に開催されたコンサートに出演された津田礼仁さん(コントラバス)、黒柳紀明さん(バイオリン)、呉信樹さん(電子ピアノ)をお招きし演奏いただく運びとなりました。

 コントラバスの津田さんは読売日本交響楽団に35年勤務。黒柳さんは長年NHK交響楽団に勤務され、お父様の黒柳守綱氏は戦後シベリアに抑留され危うくロシアに残されるところをやっと帰国できたエピソードをお持ちで、帰還後はNHK交響楽団コンサートマスターを務められています。ピアニストの呉さんは上海で多数のリサイタルを開催されています。日本の歌百選に選ばれた「からたちの花」や「ウズベクタンゴ」「シェル作曲/メロディー」など新春らしい音楽をご披露いただきます。

また、恒例のGuliston(グリスタン)の皆さんにもウズベクダンスを披露いただきます。「グリスタン」はウズベク語で「お花畑」という意味です。新春らしい華やかなダンスをお楽しみ下さい。

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[日 時]2017年1月21日(土)14:00~16:00

[会 場]日本プレスセンタービル 10 階(千代田区内幸町 2 ― 2 ― 1)

[交 通]東京メトロ 千代田線・日比谷線 霞ヶ関駅 C4

     東京メトロ 丸ノ内線 霞ヶ関駅 B2

     都営三田線 内幸町駅 A7
     ※駐車場はありません。

[会 費]一般5,000円、会員及び同伴者3,000円、学生2,000円、留学生・外国人の方1,000円

     ※本ブログをご覧になられた方は特別に会員価格にて入場いただけます。
      申し込み時に「嶌信彦のブログを見た」と添えて申し込みください。
     ※中学生以下の方は無料。立食 

     ※会場へのお問い合わせはご遠慮願います

[申込先]NPO日本ウズベキスタン協会まで

     電話(03-3593-1400)、ファックス(03-3593-1406)、

     メール(jp-uzbeku@nifty.com)(注)満席になり次第受付終了

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日本人の覚悟―成熟経済を超える

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【著】嶌 信彦


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(集英社新書)
【著】嶌 信彦

     
首脳外交

首脳外交-先進国サミットの裏面史

(文春新書)
【著】嶌 信彦


 
嶌信彦の一筆入魂

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【著】嶌 信彦


ニュースキャスターたちの24時間

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(講談社)
【著】嶌 信彦
       

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