アベノミクスで沸いた 日本株相場は終わったのか?
震災倒産は阪神の4倍以上
景気は春以降も大丈夫なのか。資材、輸送関連、建設業者などは「手持ち注文でいっぱい。むしろ人手が足りず約束の期日に間に合うかが心配。オリンピック需要もあり、2020年まで大丈夫だ」と楽観的である。しかし被災地から未だ復興のツチ音は聞こえてこない。震災関連の倒産は3年経って1402件。額にして1兆5000億円(東京商工リサーチ)。阪神大震災に比べると件数で4・4倍、負債総額では6・9倍に達しているという。一体、建設資材や輸送先はどこなのだろうと、いぶかる。復興予算、復興需要は間違いなくたっぷりあるのだが、誰かが食いつぶしているのだろうか。
アベノミクスで沸いた日本株相場は、1万5000円台をつけたところでひとまず終わったようだ。もともと今回の上昇相場の主役は外国人投資家だった。昨年1年間で17兆円買い越して先導役を果たし、約60%の株価上昇に寄与した。しかし今年に入って1兆2000億円以上売り越し、日本の証券界が当面の目標としていた1万8000円には全く届かない。黒田日銀総裁による異次元の金融緩和に外国人投資家は「久しぶりの日本相場」と飛びついたが、財政刺激で爆発的な景気上昇はなく、第三の矢の成長戦略はパッとしない。どうやら安倍首相の関心は靖国参拝、集団的自衛権、特定秘密保護法、国家安全保障局の設置などイデオロギーの方向に移ってしまったようだ。
しかも日・韓・中の関係は悪化するばかり。アジア・太平洋の安定に最大の関心を寄せるアメリカは〝日本はもっと関係改善に努力すべきだ〟と不満を口にし始め、欧州のメディアも日本の外交姿勢に批判的論調を強めてきた。外国人投資家が日本売りに転じてきた背景にはアジア、特に中国、韓国との仲をこじらせている状況への失望感もあるようだ。
分裂国家で生ずる家族の悲劇
外交ではロシアとの関係も微妙になりつつある。安倍首相は北方領土や資源開発などでプーチン大統領と接近していた。このため、ソチ五輪に西側先進国首脳としては唯一開会式に参加し、〝貸し〟を作っていた。しかし、ウクライナを巡るロシアの侵略的行為にアメリカが反発。欧米先進国が結束し始めたため、日本も同調せざるを得ない状況に追い込まれている。
クリミア自治共和国はロシア人が過半数を占めるため、ウクライナから離脱し、ロシアに編入される可能性が強くなってきた。この事態の展開でソ連邦が崩壊した1991年のことを思い出した。当時、旧ソ連大使館に勤務していたある大使館員が、「ソ連邦が分裂してしまったので夫婦の間でロシアの国籍か妻の国の国籍を選ぶか、で悩んでいる。もしロシア国籍を捨てると大使館勤務の職も失うことになる」と悩んでいたのだ。クリミアでも同じ悩みをもつ夫婦が沢山いるに違いない。国家の行方だけでなく人生の選択も求められている人々がいるのだ。
【財界 2014年4月8日号 第372回】