22日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~悲しい末路をたどる歴代の韓国大統領~
スタッフです。
22日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。
テーマ:繰り返される韓国の大統領スキャンダル。小学生からも不満が出る背景とは。
このところ連日韓国の大統領のスキャンダルが報じられている。本日は、韓国の大統領のスキャンダルが繰り返されているという話をしたい。
【前代未聞の大統領が容疑者に】
朴槿恵(パク・クネ)氏はいわば容疑者になった。友人の崔順実(チェ・スンシル) 氏が逮捕され、先日起訴され、その起訴状の中で朴大統領は共犯であり、容疑者と記載された。そのため、態度を硬化させ検察の聴取には協力せず、特別捜査に委ねると表明。
検察としては聴取もしないという急展開で、高まる世論におされ、強気の姿勢でいくしかなくなった。今やデモ参加者は26万人にもおよび、支持率は5%を切り、若者の支持率は0%といわれる。
【歴代の韓国大統領の大半が悲しい末路に・・・】
世論がすさまじい勢いになっており、これまでの韓国大統領がスキャンダルを起こした場合、世論におされ同じことが繰り返され、いっこうに直らない。そこで、本日はいったい過去の大統領がどんなスキャンダルで追い落とされてきたのかを振り返ってみたい。
これまで韓国では現朴大統領を含め11人の大統領がいる。そして、その半数以上が尋常でない辞め方をしている。いくつか紹介したい。
・全斗煥(チョン・ドファン)
「ゼントカン」とも呼ばれ、1980年の光州事件への関与、収賄、不正蓄財による死刑判決を受けたが、その後恩赦により懲役刑に。
・盧泰愚(ノ・テウ)
粛清クーデターや不正蓄財により懲役17年。後に恩赦により懲役刑に。
・金泳三(キム・ヨンサム)
在職中の97年に次男があっせん収賄と脱税で逮捕され、実刑に。
・金大中(キム・デジュン)
非常に有名な方だが、在職中の2002年に二男と三男が収賄で逮捕され、有罪後実刑が確定。退任後の2003年に長男も収賄で在宅起訴。
・盧武鉉(ノ・ムヒョン)
退任後に親族や側近が不正疑惑で相次いで逮捕され、自身も捜査対象になった最中に謎の自殺を図る。
・李明博(イ・ミョンバク)
前全国会議員の実の兄が収賄で逮捕、起訴されている。
このほかにも、
・李承晩(イ・スンマン)
「イショウバン」と呼ばれていた方だが、不正選挙でアメリカに亡命。
・朴正煕(パク・チョンヒ)
現在の朴大統領の父は、側近に暗殺。
こうやってみてくると11人中半数以上が悲しい末路で、異常だ。名前が挙がった人たちの罪状を見ると、ほぼ収賄、不正蓄財。これらは韓国の歴史的な争いや社会の文化ということが背景にあるともいわれている。
【血で血を洗う地域での争い】
韓国には有名な「朋党(ほうとう)の争い」という、党派同士の暗殺や虐殺の歴史が根強くあり、伝統的に頂点に立つということを目指して血で血を洗う争いを行なってきた。新羅(しらぎ)・高麗の時代から続き、韓国ドラマなどにもよくえがかれている。
現在は韓国南西部の全羅道、東南部の慶尚道、ソウルを中心とした京畿道といった地域の争いとなっている。大統領になるとその出身地域でインフラ整備が活発に行われたり、官公庁の人事でその地域の人を優遇する。それがまた腐敗を生んでいくようになっている。そして、それを野党側から攻められるということが続いている。
【絶対的権限を握る韓国大統領】
もう一つ韓国の大統領の権限が非常に大きい。これは制度の問題といっていいと思うが、大統領は首相と閣僚からなる政府を大統領自身が組織できる権限をもっている。さらに、国会への予算提出権、法案の拒否権、最高裁裁判長の任命権、軍の統括権、条約の締結・批准権、宣戦布告権限、憲法改正提案権を持っている。要するに国の絶対的権限を大統領一人が担っているのだ。
それだけに、大統領の側近や親族に近寄ってくる人が多くなる。そして、スキャンダルに発展している。さらに、周辺の関係者たちも大統領から恩恵をもらおうと大統領に近づき、収賄に発展するという歴史を繰り返されているというのがこの問題の根本となっている。
【生まれた瞬間に人生が決まる韓国社会】
さらに、今回のデモに圧倒的に多く若者たちが参加しているが、この背景には格差の問題がある。昔からこの格差はあるといわれていたが、最近特に激しくなってきた。韓国社会は国民全体の資産の5割が上位10%に集中していることから、「アジア最大の格差」ともいわれる。貧困層の究極的な不満は、ごくわずかな「富裕層」を常に敵視していることからデモが起こっているのが実態。デモを見ていると本当に「敵意をあらわ」にしている。
このことは、生まれた瞬間から決まるともいわれる。韓国は学力社会のため、教育におカネが必要。教育にかけるおカネがないといい大学に入学できないことや、会社に入ってからコネがないと出世できないことが多い。この格差を若者の間では「スプーン階級論」と呼んでいる。英語では「裕福な家庭に生まれる」ことを 「金持ちの親は子供に銀のスプーンで食べさせて育てる」と表現されるが、このことを受け「金のさじ」「銀のさじ」「土(つち)のさじ」と、 韓国の貧富の差を「スプーン」の素材で表している。
「金のさじ」は、親の資産が20億ウォン(日本円で2億円)以上の家庭。1億円以上は「銀のさじ」。本当はその下に「銅のさじ」「鉄のさじ」「木のさじ」があるが、若者たちの間ではそこをとばして「土のさじ」と呼んでいる 。「土のさじ」は生活保護で暮らす家庭のことを示す。土のさじと呼んでいる層の人々はなかなか這い上がれない格差社会となっている。
若者の失業率の上昇は韓国でも深刻で、韓国統計庁の調査によると今年10月時点での15~29歳の青年失業率は、 統計を取り始めた1999以降過去最悪の12.5%を記録している。朴大統領の支持率が若者の間で低いのはこういった理由の表れでもあり、非常に困難な状況だ。
【若者のエネルギーをどう改憲に向けるのか!?】
クーデターが何度も起こるので、その歴史を繰り返さないよう大統領に権限を集中されてきた。この大統領の権限を分散したり、再選を可能にするには憲法改正が必要で、腐敗の温床である権力の集中の減少に取り組むなどさまざまなことがいわれてきたが、政権の後半になると求心力が衰えてしまうということが繰り返されてきた。
朴大統領は残りの任期が1年半ほどあるが、完全に求心力を失っている。近年、改憲を主張する候補も多いが、結局就任すると看板政策から手を付け、この問題が後回しになり改憲論が立ち消えになり、最終的に死に体で終わってしまう。
今回の事件により、朴大統領が主張していた改憲論は立ち消えになってしまった。こういう歴史が繰り返されているが、朴大統領の抵抗がどこまで続くかがこれからの焦点。若者のエネルギーをどうやって改憲に変えていくのかということも、おそらくこれからのポイントになるだろう。
※上記内容は放送日時点の内容です。なお、11月29日午後に朴大統領は会見し、「政権移譲の方策を与野党が作ってくれるなら、それに従って大統領職から退く」として、任期途中での退任の意向を表明しております。