”中国の夢”をどう実現?
まもなく中国・習近平政権の二期目がスタートする。「中華民族の偉大な復興」の目標通り強国ぶりをいよいよ内外に示す時代になるのだろうか。習近平政治は、時々スローガンが掲げられその方向性が示されるが、肉声で説明される機会や人間的エピソードが語られることが少ないので中国のリーダーになって5年経った今もその人間像がいまだによくわからない。
習近平は1953年生まれで、父は毛沢東政権時代の国務院副総理を務めていたので、いわゆる共産党幹部の子弟ということになり、”太子党”の仲間とされる。ただ文化大革命時代は反動学生とされ、1969年から7年間にわたり陝西省の延安に下放されている。その後名門の清華大学に入学し、法学博士の学位を得た。浙江省書記、上海市党委員会書記などを経て政治局常務委員に2階級特進。さらに軍事委員会副主席を経て2013年に国家主席、党中央軍事委員会主席など党・国家・軍の三権の長を握った。周囲の意見を聞いて政策を実行する人物とされているが、ここ数年の国や地方官僚・軍幹部の腐敗追及ぶりはすさまじく官僚たちを震え上がらせた。
特に制服組トップだった徐才厚、政治局常務委員だった周永康、胡錦涛前総書記の側近・令計画、重慶市書記の薄熙来らの党・軍・地方幹部を次々と放逐した。
規律違反として処分した幹部は13年の8000人から14年に2万4000人、翌15年には3万4000人に上った。海外へ逃亡した腐敗官僚も国際手配して追及した。その腐敗幹部への追及ぶりは苛斂誅求を究めたとされ、大衆からは拍手喝采を浴びた。表向きは一見、鈍才風ながら実際の人物像は激しさを内面に秘めているとみた方が良さそうだ。
外交面でも南沙諸島や尖閣諸島への執拗な介入、アフリカ、パキスタン、インド洋、東南アジア等への海洋進出、アジアとヨーロッパを結ぶ一帯一路構想、太平洋をアメリカと分割統治しようとする呼びかけ、ロシア、インド、中央アジアなどを巻き込む上海協力機構の運営──等々をみると、表面は鈍才のように見えるが、”中国の夢”を実現しようとする相当な野心家であり、その構想力の大きさも並々ならぬものがあることをうかがわせる。
腐敗追及の矢面に立ったのは王岐山・中央規律検査委員会書記だった。王は定年なので退任する見通しだが、後任を誰が務めるのか。習氏の懐刀といわれる栗戦書・党中央弁公庁主任、陳敏爾・重慶市党委書記らや新たな抜擢組を充てるのか注目の的だ。
さらに習近平の唱える”中国の夢”と強国・中国をどのように実現するのか──そのやり方によっては日本にまたひとつ難題が増えそうだ。
【財界 2017年11月14日号 第459回】