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不思議な安倍長期政権

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 安倍政権は、よく考えてみると奇妙な政権だ。このまま順調に推移すれば10年近くも続く長期政権となり、むろん戦後政治では前代未聞だ。

 ではどこが安倍政権の“魅力”なのかと問われると頭を抱えてしまう。経済成長は“いざなぎ”を超えたというが1~2%の低成長で実質賃金も低いまま。熱い実感はない。雇用も安定しているように見えるが正規社員はむしろ減少気味だ。外交で点数を上げているとされるがアメリカとの関係は良好でも朝鮮半島、中国、ロシアとはギクシャクしており、米朝が頭越しに交渉する懸念もある。

 さらに朝日新聞世論調査(10月23日付)によると「安倍さんに今後も首相を続けて欲しい」は34%、「そう思わない」51%。国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況は「よくない」が73%、「よい」は15%。「今後も自民党中心の政権が続くのがよい」は37%、「自民党以外の政権に変わるのがよい」は36%。調査主体が朝日なので安倍政権に厳しく出ているともいえるが、“安倍一強政治”に対して何となく飽きが出ている雰囲気が読み取れる。

 それでも安倍晋三氏を選び続けるのは党内外に安倍氏を越える魅力のある人物がおらず、真面目で無難だから・・・という消極的理由なのだろうか。かつての首相といえば三(さん、三木武夫)、角(かく、田中角栄)、大(だい、大平正芳)、福(ふく、福田赳夫)、中(ちゅう、中曽根康弘)と個性的でインテリ、バイタリティあふれる人物が党内で相争い政治に活気をもたらしていた。その後も安(あん、安倍晋太郎=安倍父)、竹(ちく、竹下登)、宮(みや、宮澤喜一)と性格も政治手法も異なる政治家が自民党内で勢力を争った。

 当時の政治は高度成長期の熱気もあったし、演説にもユーモアや味があり、時に檄(げき)を飛ばし政局が混乱することも多かった。それぞれの領袖は高度成長論者、安定成長型、田園都市構想を掲げるなど個性があり、アメリカ以外の政治家とも独特のパイプを持って接していたものだ。

 しかし今の安倍政治はモノトーンだし、他の政治家にも個性派が少ない。海外との関係でも中国、韓国、台湾、ロシア、東南アジアなどと太い絆を持っている人物は少ない。だから外交も安倍一色のモノトーンになってしまうのではなかろうか。

 高度成長期は世界第2位の経済大国。アジアを代表する国としてみられ存在感があった。またその国力をさらに奮い立たせようと大企業のみならず中堅・中小企業も海外に飛び出し日本の勢いをみせていた。

 日本が元気を無くしたのは、バブルが崩壊し企業に活気がなくなってからだ。そうなるとサラリーマンも萎縮し始め、海外勤務などを嫌がる人が増えているという。明治維新以降、気骨のある人々が海外に出て様々な情報や目新しいものを日本に持ち帰り、戦後の敗戦時代も海外から白い目でみられながら奮闘してきた。もう一度、過去の日本の歩みをじっくり振り返ることも必要だろう。

 次世代の小泉進次郎氏への期待が強い。演説は面白く、カラッとしていて話に裏表がなくズバッとタブーを恐れず語るところが人気の秘密なのだろう。フランスでは42歳、オーストリアでは31歳の首相が登場している。日本も若手がもっと勉強して恐れずに言いたいことを言う時代が早くこないと世界からどんどん置いていかれ、存在感を失おう。
【電気新聞 2017年11月8日】
画像:Wikimedia commons

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