出口の見つからない日本
アジアの市場、お金の流れが大きく変化してきているようだ。流通分野ではネット通販が大膨張し、人々のライフスタイルや既存の小売、百貨店などが伸び悩んだり、駆逐されている。
中国のアリババ集団は、11月11日の「独身の日」セールで一日の取引額が2兆8000億円を越え、ネット通販の比率は中国消費500兆円のうち15%に達しているという。中国のような広い国土でショッピングを楽しむにはネットで商品と価格を調べ、気に入ればスマホで決済するというのが当たり前の世界になってきているのだ。
スマホの決済総額は2012年は0.7兆元だったのに、いまや40兆元に達している。中国の消費ブームはネット通販、スマホを利用して全国に広がっている。ネット通販とスマホ決済は宅配便を急拡大させ、代わって大型店、小売りの実売店が閉鎖に追い込まれ、小売店の雇用数減少に歯止めがかからないらしい。
中国のネット通販の牽引はアジア全体の景気を引っ張り株価の上昇にもつながっている。韓国、フィリピン、インドなどでは最高値が続いているし、日本でもバブル崩壊以降では最高値を記録した。といっても日本の場合はバブル期の最高値のまだ半値で、アジアの新興国に比べ元気がない。
世界的な株高の背景は、リーマンショックの後の世界的不況を懸念して各国が一斉に金融緩和に走ったからだ。本来なら実需取引に見合う通貨量があれば十分なのに日米欧と中国が供給したベースとなる資金量は10兆ドル(1130兆円)を超えた。世界の通貨量は危機前の1.8倍。90兆ドルに達したとされる。
この資金が工場生産や新規開発に利用されれば世界は好況の循環に入るのだが、世はIT全盛時代を迎え工場などへの実物投資は少なく、日本のバブル期と同様に不動産投資や投機にまわった。しかもIT時代は通貨量が増えても物価は上がらない。日銀は超金融緩和と超低金利政策で景気と物価の上昇を狙ったが効果は5年経った今も出ていない。
結局、余った資金は投資にまわらず企業、特に大企業の手元に残り超低金利の現預金ばかりが増えているのが実情だ。さすがにこの異常事態を放置したままにしておくわけにいかず、アメリカの中央銀行は14年に量的緩和をやめ、15年から利上げ局面に移行。欧州銀行も17年から量的緩和を縮小し始めた。ただ日本だけは〝出口〟方法に手を付けていない。
アメリカなどではグーグル、アマゾンなどの新興企業が新しい開発で人気を集めているが、日本はパッとしない。日本の中小企業にも良い企業が沢山あるのに銀行も政府も育てようとしていない。
【財界 2017年12月5日号 第461号】