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出でよ若手世代の新党

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 稲田防衛相が遂に辞任へ。民進党蓮舫代表も辞意表明──7月27日の政界は大荒れだった。政界は与野党とも末期症状を呈してきた。

 日増しに高まる非難の声に安倍首相も稲田防衛相をかばい切れなくなったのだろう。内閣改造を1週間後に控えていたのに引導を渡したのは、安倍内閣にとってその間に起きるダメージが恐ろしかったに違いない。次々と出てくる稲田防衛相への批判が内閣支持率下落に輪をかけていた。支持率下落の主因は、安倍首相自らの言動や立ち居振る舞いにあったとみられるが、稲田問題を放置したままにしておけば、任命責任者として安倍首相にはね返ってくることは必然とみたのだ。

 蓮舫代表の辞任は、後楯となっていた野田幹事長の辞任で収まるかに見えた。しかし都議選敗北と都民ファースト大躍進の明暗のショックは大きく、民進党の党内からの責任追及の声が強かった。同じ女性代表の小池百合子都知事に都議選で惨敗した点も期待を裏切った格好になった。

 党の代表や大臣になる政治家は、男女を問わず自らのぶれない軸、価値観を持っていないと、いざという時の出処進退に迷いが出て後々にまで禍根を残すことになるケースが多い。最近のようにトップが1~2年で交代すると、候補者が少ないため過去に失敗した人物が再登場することも目立つ。安倍首相は第一次の時、途中で投げ出し、もはやチャンスはないとみられていたが、総裁選で2位につけ決選投票で2、3位連合を組んで返り咲いた。この時、中心になって安倍票を集めたのが菅義偉氏だ。以来、安倍・菅官房長官コンビで政権を取り仕切ってきた。途中退陣したトップが返り咲き長期政権を維持する例は極めて珍しい。

 安倍政権が都議選後、急速に力を落としてきたことも間違いない。しかし、支持率がこのまま20%台で低迷するようだとポスト安倍を巡る動きはもっと本格化しよう。

 フランスでは39歳のマクロン氏が旧秩序を代表する社会党共和党の候補を大差で破り新大統領に就任しEUに新風を吹き込もうとしている。果たして日本の場合はどうか。自民党は旧世代が退かないし、民進党は党崩壊の危機にありとても総理の座を狙える位置にはいない。

 可能性としてチャンスがあるのは、都民ファーストが国政政党を立ち上げるか、自民党小泉進次郎氏が党を割って野党も含めた若手世代で新党を作ることぐらいか。しかし日本も大きな波を起こさないと国際社会の中でどんどん"輝き"を失ってゆこう。安倍内閣はベテランを起用して安定を図りたいようだが支持率回復は望めまい。若手の元気はないのか。
【財界 2017年9月5日号 第454回】

画像:Wikimedia Commons

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