アラル海消滅の衝撃 緊急講演とシンポ開催
世界最大の環境危機が表面化し、ネット上で意見が氾濫している。水がなくなり湖底の渇いた土がムキ出しになり、帆船が風雨にさらされた姿が象徴だったあの「アラル海」の事だ。アラル海は九州にほぼ匹敵する広さの世界第4位の塩湖(海)だ。中央アジアのウズベキスタンとカザフスタンにまたがって位置し、沿岸で漁業を営んで暮らす人々も多かった。
NASA(米航空宇宙局)の調査によると1960年代のアラル海は満々と水をたたえていた。80年代前半になると周辺部から水が減り出し1割以上が干上がってくる。さらに2000年には約半分、2007年には7〜8割も減り湖は干上がった部分によって三つ位に分かれてしまっていた。それが今年9月末にNASAは衛星写真で「事実上アラル海は消滅した」と指摘したのである。ネット上には、1960年代からアラル海が干上がってゆく惨状が写真掲されているが、わずか50年で九州と同じ大きさの湖がなくなる様は衝撃である。
アラル海には水量豊かなアムダリア川、シルダリア川などの大河の水が流れ込んでおり、琵琶湖の約100倍とされる塩湖だった。しかし旧ソ連時代に農業用灌漑に河川の水が途中で利用され始めたことから、アラル海に流れ込む水が激減し、みるみるうちに湖が干上がっていったのだ。いったん湖底が干上がると砂嵐が発生し、それまで湖底に堆積していた塩類や有害物資も飛散して漁業だけでなく周辺地域の農業、健康被害も深刻化していたのである。このため世界中の研究者、環境保護団体などが警告していたが、結局消滅するという最悪の事態を招いてしまったわけである。
16年前に創設したNPO日本ウズベキスタン協会では何度かこのアラル海問題を報告してきたが、今回の〝消滅〟という衝撃的事実をうけて緊急講演とミニシンポジウムを11月19日(水)午後6時半から行うことにした。講師は当協会理事で長年アラル海問題に取り組んできた川端良子・東京農工大准教授(京都大学博士号取得)で、ミニシンポには川端氏のほかウズベキスタンの農業開発などにたずさわってきた国際開発学専門の山田祐彰・東京農工大農学研究院准教授、東京外語大の研究留学生ファヒリディーン・エルガシェフさん、元ウズベキスタンへのシニアボランティアだった塚谷昭彦氏らが参加され、司会は嶌信彦がつとめる。詳しくはメール(JP-uzbek@nifty.com)かFAX03-3593-1406で事務局までお申し込み下さい。先着200人で会員は1000円、一般は1500円(但し会員と同伴の場合は1000円)。場所は東京・日比谷公園内の日比谷図書文化館地下ホール。詳しくは協会HPをご覧下さい。
【財界2014年11月18日号 第387回】