時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

年齢に応じて役柄をこなす粋人

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 9日にBS朝日「ザ・インタビュー」という番組で俳優の近藤正臣氏との対談が放送された。若い頃から二枚目俳優として有名だったが、お会いしたのは初めてだった。TVでよく見かけるし、最近はNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」や日曜夜の大河ドラマ真田丸」などで拝見しているので初対面という気がせず、しかも同い年と知って何かゆったりと楽しく話がはずんだ。

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 近藤氏は生粋の京都人。家の近所は幕末の事件が相次いだところだし、幼いころは高瀬川で遊んだというから、そんじょそこらの京都人とは違う。曽祖父の近藤正慎氏は清水寺の寺侍で西郷隆盛と朝廷をつなぐ志士だったが、幕府方につかまり拷問を受けたものの、決して口を割らず、いよいよ限界が近づいて口を割りそうになると舌をかみきって自害したという。

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 そんな血が流れているせいか、むろんサラリーマンなどには目もくれず、消去法で生きる道を探したところ高校時代に演劇をやってほめられたことを思い出し、京都撮影所でエキストラになって4年つとめたという。そのうち今村昌平監督に見出され、20~30代の頃は二枚目俳優として人気者になる。しかし40代半ばになると二枚目では生きていけないと感じ個性派俳優を目指し、与えられた役に自分なりの解釈を加えて演じたという。例えば石田三成明智光秀を演じる時は「サラリーマンにしよう」と考え、明智光秀出世はしてゆくが、信長に嫌われるものの自分を守り、家族を守るため忠義ではなくて辛抱する。そういう男として突っ走るが最後に辛抱が切れてしまうという役を熱演した。監督や演出家の思いと異なった時はトコトン話し合い、それでも受け入れられない時は引き下がる。そうしたこだわりが演技派俳優として存在感を増していったようだ。普段から時代物の小物を買ったり、いじったりしていると手について演ずる際に役立ったことも多かったという。60代に入ると二枚目を封印、悪役や老け役に挑むようになり、また光彩を放つようになったのだ。

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 京都人は、表で言うことと腹で思っていることは違うとよく言われる。しかし、近藤氏の話はすべて率直で開いていて気持ちがよかった。芝居にとことん凝り、時代物の小物を探し、郡上八幡で釣りを楽しむ。さらに、上方落語をこよなく好んで桂米朝師匠とも長いつきあいで時折座主をつとめ、お客さんを楽しませている。今の心境を「遊々自適」と書く。良き役者人生、良き友人を持ち、あくせくせず人生を楽しんで落ち着いている姿があった。

 

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