5アイズに加わる日独仏
英語圏5カ国(米・英・加・豪・ニュージーランド)の情報機関に日本、ドイツ、フランスが協力して連携することになった。中国などのサイバー攻撃に対し情報を共有して共同で対処するという。
アメリカは、中国企業の作った高度の通信機器には外部からの侵入が容易くできる仕掛けがあるとみている。特に競争が激しく、まもなく実用化される第5世代(5G)の移動通信システムは中国の技術が優れており、サイバー攻撃や情報を盗みとられやすいと警戒しているのだ。このためアメリカは昨年夏、中国のファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)など中国通信機器大手の製品を政府調達から排除することを決めた。これに準じてアメリカは日本などにも中国製品を排除する方針を求め、5カ国のほか日・独・仏も交えて対応を協議している。また政府ベースだけでなく民間企業に対しても情報通信、金融、鉄道など14分野での重要インフラについてサイバー防衛の強化を求めている。
ただ、オランダやカナダは「中国の排除は必要ない」としているし、イギリス、日本、イタリアなどの民間企業はファーウェイなどと実証実験を行なっており、今後も続行するかどうか迷っているといわれている。
実は中国の5G技術は通信規格や価格などの面でアメリカより優位とみられ、中国の5Gの基地局数はアメリカの10倍以上に達し、ファーウェイは既に世界で約70カ国、150社以上と実証実験を進めているという現実があるのだ。このまま推移すると中国の5Gの契約数はアメリカの2倍以上となり世界最大になる可能性が強いとみられているのである。一旦、市場を握られてしまうと抜き返すのは至難の現実になってしまうため、アメリカも必死で各国に働きかけているのだろう。
5Gは現在の通信の100倍の速度でデータをやりとりでき、車への活用など産業構造を大きく変え〝新産業革命〟をもたらすとみられる。それだけに5G技術と次世代無線通信規格のシェア争いにつながる基地局建設を巡って中国、アメリカ、韓国、フィンランド(ノキア)などの間で激しい競争が続いている。
通信技術の世代交代時には、過去の例をみると産業構造が変わり世界の産業勢力図も大きく変化するケースが多かった。それだけに5G技術の開発に猛進している中国は、アメリカからすると大きな脅威に映り、中国包囲網を作ろうとしているのだ。ハイテクや宇宙、次世代通信などの先端分野で力をつけている中国の争いはまさにアメリカの覇権に挑むように見え、米中の覇権争いが世界に拡散しつつあるともいえるのである。
【財界 2019年4月9日号 第492回】
※参考情報
・米マサチューセッツ工科大学(MIT)は4日までに中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)との協力関係を打ち切る方針を決めたと5日付けの日経新聞にて報じられました。
・4日付けの日経新聞では、米国と韓国の通信大手がそろって「世界初の商用化」を宣言する異例の事態がおきている。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズは3日、次世代の高速通信規格「5G」に対応した携帯通信向けサービスを米2都市の一部で開始したと発表した。当初は11日に開始する計画だったが、韓国でのサービス開始に先駆けるためほぼ1週間前倒しした。これに対し、韓国SKテレコムなど通信大手3社は4日、5Gをスマートフォン(スマホ)で使えるようにする一般者向けサービスを3日深夜に始めたと発表し韓国3社は「世界初は韓国だ」と主張している。と報じられています。
・8日付けの東洋経済の記事によると東京大学は3月7日までに、通信機器の世界最大手・中国ファーウェイ(華為技術)からの資金支援について、今後は受け入れを見直す可能性があることを明かしています。