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ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

産業競争力がついてきた中国 ―米国を激しく追い上げる中国―

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 経済、政治、外交・安保、技術、ネットなどの分野で世界における中国の存在感が急速に高まっている。逆にアメリカ第一主義を唱えるトランプ政権ではアメリカの弱体化が目立つ。自由主義市場経済の世界で“一強”を誇っていたアメリカが様々な分野で中国とせめぎあい、徐々に押され始めているのではないか。習近平首席は、昨秋の5年に一度の共産党大会で中国共産党の100周年にあたる2049年までに「社会主義の現代化強国」を実現すると宣言した。その具体的内容や“社会主義”と名付ける方向性は、中国の問題に留まらずアジアや世界の覇権の行方にも大きな影響を与えることになるだろう。

■新車販売は日本の4倍以上
 最近、中国が最も存在感を示したのは、中国が従来のガソリン車から電気自動車(EV)への移行を表明し、一定割合の生産と販売を19年に導入すると宣言し、将来的にはガソリン車とディーゼル車の販売の禁止を検討すると表明したことだろう。何しろ世界最大の自動車市場はいまや中国で、年間の新車販売台数は日本の年間500万台に対し中国の17年の新車販売は2887万台と4倍以上だ。今後、まだまだ伸びると予測される大市場なのだ。

 こうした中国の方針は世界各国の自動車メーカーに大きな衝撃を与えている。日産自動車と中国の合弁企業はEVの開発に5年間で約1兆円を投資するといい、独フォルクスワーゲンは25年までに電動化に約1兆4000億円、約40車種のEV(約150万台)やプラグインハイブリッド車(PHV)を現地生産する。これまでハイブリッド車でリードしてきたトヨタ自動車も中国がハイブリッド車を電気自動車とみなさない方針を示唆したため、20年に他の国や地域に先駆けてEVを独自開発して販売することとしている。

 中国が電気自動車に力を入れるのは、排ガス規制のためだ。中国の排ガス公害は年々ひどくなり国民の健康を害しているため、思い切った方針に出たのだ。しかも世界一の市場となると自動車製造のルールまで変えてしまう力のあることを示したといえる。

■10年後にアメリカを抜くGDP
 GDP成長率もすごい。一時は成長に減速傾向がみられたが、17年は6.9%で政府目標の6.5%、16年実績の6.7%を上回った。この結果、輸入も名目で18.7%増加した。日本の中国向け輸出は20.5%と急増、約15兆円に達した。IMFによると、16年時点の中国の名目GDPはアメリカの60%に達しており、2000年から16年までの名目GDPの平均成長率はアメリカ3.8%に対し中国は14.9%。この調子で推移すると10年後にはアメリカを抜くし、たとえ中国のいう新常態(ニューノーマル)の成長率が7%に半減したとしても35年までには「現代化」を達成し、世界最大の経済大国になる。また国民一人当たりのGDPは3万ドルに近づくという。

■宅配は年間400億個
 企業ではネットのテンセントとアリババ集団が世界上場企業の時価総額ランキングで7位と8位に入っている。ちなみに1位はアップル、次いでグーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなどアメリカ企業がズラリと上位を占め、そこに日本企業の名前はない。

 中国国内の消費を刺激し下支えしているのは宅配網だ。2017年に宅配された小包の数は400億個を越えた。これは日本の10倍、世界の半数を占め、アメリカの130億個を大きく越えている。

■日本企業の買収目立つ中国マネー
 また中国マネーの日本企業買収もここ3年で目立つ。東芝、シャープ、三洋など日本の電機メーカーは中国・台湾系企業に買収(部門買収含む)された。2007年~16年の10年間で中国・台湾系による日本企業の買収は385件に上り、17年に破綻したタカタも中国系の傘下に入った。

■アジアの依存相手は日米から中国へ
 これまでアジア経済はアメリカ、日本に依存していたが、中国に変わってきた。特に東南アジアから中国向け輸出額はリーマン・ショック(2008年)の10年間でアメリカ向けを逆転し(2010年)、16年は1430億ドルとアメリカ向けを9%上回った。まさにアジア経済はいつの間にか“中国化”が進んでいるのだ。

■科学・AIも中国が猛追
 一方、先進的な科学分野・人工知能(AI)でも中国の存在感が高まっている。豊富な研究開発予算やAI人材、大量のビックデータなどを活用し、検索大手のバイドゥ、電子取引大手のアリババ集団、ソーシャルネットワークのテンセントなどが世界大手企業に次いで名を連ねている。

 科学技術予算は2015年で中国が20.7兆円、アメリカが14.2兆円、日本は3.5兆円だ。また、インターネット利用人口は7.5億人とアメリカの人口の2倍以上だし、日米中のコンピューター科学、数学分野の重要論文の引用数でも2000年後半から急増し2015年は中国の21%に対し、アメリカ17%、日本4%で、中国がアメリカと肩を並べてきているのが現状だ。

 日本では中国の経済、科学分野の発展は遅れていると推測しがちだが、実情はこの分野でもアメリカを猛追し、日本を抜き去っている。マーケットが巨大になり新分野の学問、研究開発が進めば世界の標準化技術などもいずれ中国がリードしていくことになろう。アメリカの後を追いかけてきた日本は、今後中国にも気を遣わなければならないということだ。サイバー、宇宙などの分野もいずれ中国を追いかけることになろう。

 日本が独自の分野で存在感を示せるのはどこなのか。そろそろ日本も自国の強みを認識し、その分野に力を入れて世界にアピールすべき時代がきているといえよう。日本は今後30年でどの分野を深堀し、日本の特徴を出していくか。総花的な競争力を誇ってみても東南アジアなどの急速な技術発展と安いコスト競争力でいずれ抜かれる日が近いかもしれない。
TSR情報 2018年3月13日号】