時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

日曜(25日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 山本一成様(最強将棋ソフト「PONANZA」開発者)二夜目

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スタッフからのお知らせです。

日曜(25日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)は先週に引き続きゲストに最強将棋ソフト「PONZNZA」の開発者でHEROZ(ヒーローズ)株式会社リードエンジニアの山本一成様をお迎えいたします。

進学校から東京大学に進んだという山本様の将棋はアマ五段の腕前。理系でもパソコンは苦手、数カ月間必死で勉強して最初のソフトを完成させたが、出来栄えは散々で、なかなか人間には勝てなかった・・・
そんな試行錯誤を繰り返していた頃のエピソードなどをお伺いする予定です。

前回の、理系だがパソコンは苦手、数カ月間必死で勉強して最初のソフトを完成させた時の話しから、佐藤天彦名人を破った将棋ソフト「PONZNZA」の開発秘話などについてお伺いいたしました。例えを用いて論理的にわかりやすく説明いただいた放送音源は来週水曜正午まで番組サイトにてお聞きいただけます。

嶌が以前、「PONANZA」に関して記したコラムもご紹介いたしますので、よろしければあわせてご覧いただけると幸いです。

合わせて、山本様が上梓された本をご紹介いたします。

【ラジオ再放送あり】金子兜太さん逝く 人間くさく大らかな俳人

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 水脈(みお)の果て 炎天の墓碑を 置きて去る
 戦後の現代俳句界をリードしてきた金子兜太さん(98)が亡くなった。旧制水戸高校時代から俳句を始め、東大経済学部を卒業後に日本銀行へ就職。戦争中は海軍主計中尉として西太平洋のトラック島に派遣され九死に一生を得て帰国した。

 冒頭の句はトラック島での15カ月間の捕虜生活を終え、日本へ引き揚げる駆逐艦の甲板で詠んだ一句だ。最後尾で水脈と墓碑銘を交互に眺めていると戦地で亡くなった戦友に見送られるように感じたという。金子さんの俳句には他にも戦争の悲惨さや反戦を詠った句が多い。戦争で手が吹っ飛んだり、お腹に穴があいて死んでいく人を見続けてきた。そんな極限におかれ現実をみた時、自分はいかなる時代でもリベラルな人でいたいという"甘さ"を痛撃された思いだったと悟る。

 時代には必ず棄てられる人間がいる。詩人はそれを見ていなくてはいけない。それを見ない人は詩人の資格はない。「私は右でも左でもない。個々人の思想は大事にすべきだと思っている。ただ大きな権力に便乗してうっぷんを晴らそうとする人たちは許せない」ともいう。

 日本に復員した後は日銀に復帰した。日銀では、組合運動と俳句に没頭し、同期が局長や理事に出世していく中で最期まで係長だった。しかし俳壇ではカリスマ的人気を持ち、季語や字余りなどを気にしない前衛俳句の旗手として人気があった。2015年にを求められ「アベ政治を許さない」と書いた文字は安保関連法案に反対するデモ隊のプラカードの標語にもなった。

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 金子さんの筆跡は力強くて太い。対談などで喋る時の声も大きく、90歳を過ぎても変わらなかった。私は何度かお会いし、2009年にラジオで対談させて頂いた。戦地で日本兵が次々と亡くなっていった記憶と光景をいつまでも忘れられず、エリートの道を歩むことができたのに句作を通じて戦争に反対し続けてきた。飾ったところがなく「私は今でもフンドシを愛用し、寝る時は側に尿瓶を置いているのでいちいちトイレに立たず用を足せる」などと日常生活のあれこれを語り、大きな声で笑っていたのが印象的だ。

 俳句は最も短い文学作品ともいわれ、和歌より多い約1千万人の人が親しんでいる。ただ俳句界も同人誌や師匠の流れを組んで閉鎖的な社会を形作っているところがあるともいわれる。金子さんはグループや閥を作らず、新聞社の俳句選者を務めていた。毎週五千の投句全てに目を通し、若い人や異なる分野の人々との交流にも熱心だった。率直で飾らない人柄で俳壇以外の人にもファンが多かった。
【財界 2018年3月27日号 第467回】

トップ画像は2010年05月28日に行なわれた日本記者クラブでの会見動画より
日本記者クラブのサイトには金子兜太様の会見動画と会見詳録、会見レポートが掲載されております。

【3月26日追記】
次回(4月1日)日曜21時30分からのTBSラジオ人生百景は金子兜太様の追悼企画として2009年11月10日に収録した音源を再編集し、お届けいたします。当時100歳まで生きると仰っていた金子様の健康法や、日本銀行に在籍しながら俳人の道を歩んだ人生観などについて、今改めてお聴きいただきます。

嶌信彦の出前講座を土曜(24日)に開催 

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スタッフからのお知らせです。今週土曜日に嶌が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催の「嶌信彦の出前講座」を開催いたします。出前講座は、嶌が時流の政治・経済・社会問題等の話題を分析・解説するものです。

日 時:2018年03月24日(土)14:00~16:00、開場13:40
テーマ:①まだまだ火種の多い森友問題
    ②終末に近づいた? 安倍政権
    ③習近平 一極体制の中国
    ④どうなる米中および朝鮮半島の首脳会談
    ⑤近づく大廃業時代
    ⑥企業の現預金1350兆円
    ⑦家電の次はAI革命

場 所:  日本フードサービス協会会議室
東京都港区浜松町1-29-6  浜松町セントラルビル10F

*JR「浜松町」駅北口下車 北口改札を出て前方左手 (世界貿易センタービル向かい側)、1階に薬局 Tomod’s(トモズ)が入っているビル (徒歩2分程度)
*都営地下鉄大江戸線浅草線 「大門」駅下車 B4出口から出て通りを渡った向かい              


大きな地図で見る

定員:   50名(事前予約制)

主 催:  NPO日本ウズベキスタン協会

申し込み: 「出前講座申し込み」として「名前」「連絡先電話番号」記し、
メール(
jp-uzbeku@nifty.com)または電話( 03-3593-1400)、
FAX(03-3593-1406)にて日本ウズベキスタン協会協会事務局まで
お申し込みください。

※会場へのお問い合わせはご遠慮下さい。

多くの方のご参加をお待ちしております。

国力落ちた日本、アジア特化目指せ

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日本の政治に覇気がみえない。いや、政治だけではない。外交も経済も文化発信などもここ2、3年沈滞したままだ。元気が目立つのはオリンピックで活躍した若いアスリートや最年少で羽生名人に勝った将棋の藤井聡太四段(その後六段に昇進)ぐらいだ。若い人が活躍する姿は将来への展望が感じられていいことなのだが、それにしてもここ2~3年の日本の元気の無さは気にかかる。

■ 輝きを失った電気業界など
例えば電気産業。先日、日本の電気業界をリードしてきたソニーの歴史年譜が新聞にでていた。1955年にその後のソニーの代名詞ともなった日本初のトランジスタラジオ、1968年にトリニトロンテレビを発売している(井深大社長時代―50~71年)。

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特にトランジスタラジオの出現は世界を驚かせ、後に日本の貿易外交を“トランジスタ商人・外交”などと呼んだほどだ。70年代に入り、盛田昭夫氏が社長に就任(71年~76年、76年~95年会長を務める)すると歩きながらでも音楽を聞ける携帯音楽プレイヤー「ウォークマン」を79年に発売。日本の電気製品の名を一挙に世界へと轟かせた。

その後を継いだ大賀典雄社長(89年~99年CEO)も家庭用ゲーム機「プレイステーション」やパソコン「VAIO」、犬型ロボット「AIBO」などを世に送り出し世界の耳目を集めた。

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しかし、出井伸之社長(99~2005年CEO)、ハワード・ストリンガー(05~12年CEO)、平井一夫社長(12~18年CEO)の代になってから、「よその会社が作らないものを作る」というソニーらしさが影をひそめ、もっぱら人員削減ばかりが目立つようになってしまった。

こうした傾向はソニーだけでなく他の企業にも蔓延し、自動車や家電産業、IT産業にも新しい技術、発明、製品が出なくなってしまった。この間、米国などではアップル、グーグル、フェイスブックなどの新製品や新サービスが次々と生み出され、自動車業界でもテスラなどの電気自動車やIT企業と協同した新しい製品、産業を次々と生み出し始めている。中国でもAIやインフラ、宇宙などへの進出が目覚しい。日本はいつの間にか世界の新市場を開拓する国力や気概を失ってしまったかのようだ。

■ 企業の基礎研究、新陳代謝に遅れ
昨年11月1日に日本経済新聞がまとめた「日本の革新力(※1)」によると、新産業を生み続けるアメリカや急成長する中国に押され、社会や産業を変革する人工知能などイノベーションの力が衰えていることを特集していた。

2016年の日本を100とすると、日本は1.06倍で最下位にあり、中国は6.34倍、韓国は2.08倍、ドイツが1.32倍、アメリカが1.24倍で日本は殆んど留まったままだ。

また応用開発力でも、国際特許の出願件数をみると日本は67%増ながら、中国は11倍に増え18年までに中国に追い抜かれるとみられている。さらに上場企業の営業利益合計(稼ぐ力)でもアメリカ28%増、中国7.3倍、ドイツ54%増、韓国66%増に対し日本は11%増と5ヵ国の中では最低となっている。株式公開から10年未満の企業の時価総額からみた産業の新陳代謝力でもアメリカ50%増の4.3兆ドル、中国6.3倍増の2.8兆ドルに対し、日本は51%減の5543億ドルと半分に減っているという。

■ アベノミクスも国力増に結びつかず
一方、この5年間の安倍政治をにぎわしたアベノミクスの成果の実状はどうか。まず労働力人口(15歳以上の就業者と失業者の合計数)はリーマン・ショック時の08年とほぼ同じだが、正規雇用は43万人減少、雇用者数は安倍政権下の4年で230万人(16年末で)増えているが、うち207万人は非正規労働者なのだ。

また名目GDPは50兆円増え、過去最高の543兆円となったとしているが、物価上昇の影響を目標値から差し引いた実質GDPの増加率はリーマン前の水準を下回っており、名目GDPのドル換算率では4.4兆ドルで全体に占める割合は5.9%で、12年比では2.3ポイント下落している。賃金も上がっておらず、実質生活は停滞しているため消費景気に結びついていないのである。

目ざましくみえた安倍外交の国際評価も芳しくはない。国際競争力ランキングは、GDP第3位の大国だが16年8位、17年は9位、GDPに占める教育支出の割合も16年32位。17年34位と高くないし、温暖化対策ランキングにいたっては16年60位、17年50位、世界幸福度ランキングも16年53位、17年51位、18年54位で、報道の自由度ランキングは16年72位、17年72位といずれも低いのが実状なのである(17年12月22日毎日新聞<※2>、18年3月15日毎日新聞<※3>より)

■ 女性活躍時代も今ひとつ
また「すべての女性が輝く社会」をスローガンにしている安倍内閣だが、政治や経済、教育、健康の4分野での女性の地位を分析し数値化した順位では144か国中114位と散々だ。女性閣僚もわずか2人。約半数を占める北欧諸国と比べると話にならない。安倍首相は昨年6月の国際会議で「私が政権に復帰してからの4年間で働く女性は150万人増え、出産後も働く女性は初めて5割を超えた」と述べたが、日本が人口減少時代に入り女性労働を必要としているためで、実態は相変わらず安い労働力として使われているとみなす分析が多い。

■ 国民の将来不安は消えず
安倍政権では、16年度に539兆円だったGDPを20年までに600兆円にしたいとしているが、GDPが増えて社会保障費が増えているかといえば必ずしもそうなっておらず、自己責任で将来不安に備えて欲しいというのが政策の実態だろう。これでは経済が成長しても将来不安はなくならず、国民は低い預金金利にも関わらず、消費よりも預金に走っているのが実状だ。

安倍政権は外交に力を入れ、政権発足以来100ヵ国を越える国々をまわり、日本の存在感をアピールしてきた。日本を訪れた外国首脳や多国間協議の合間に行なった二国間首脳会議を数えると、おそらく300回前後にわたり外国首脳と会議を行なっている。しかし、首脳会議の数をこなしたからといって日本の存在感が増しているわけではない。

外国紙などの調査によると日本の世界における存在感は30-50位程度というのが多い。アメリカとの絆は深いがアジアやEUとの関係は、1970~90年の高度成長期に比べるとずっと低い。高度成長期は欧米の経済は停滞していたし、アジア諸国もまだ低開発国の域を脱していなかったので、高度成長をひた走っていた日本が眩く見え、それだけ存在感も大きかったのだろう。

■ アジア特化を目指せ
いまや並みの中堅国家になりつつある日本が世界で再び輝くにはどうすればよいか、真剣に考える時だろう。もはや高度成長の国としての存在感を持てないとしたら何を特長として生きてゆくか、少なくとも「アジアのことは日本に聞かないと実情を知ることができない」というようなアジア特化こそが日本の目指す方向ではなかろうか。
【Japan In-depth 2018/3/17掲載】

ソニー関連の画像は昨年2月に行なわれた銀座ソニービル解体前の「It's a SONY展」にて撮影
(※1)日本経済新聞 2017年11月1日掲載「ニッポンの革新力」(有料会員限定記事) 

<※2>毎日新聞 2017年12月22日掲載『安倍政権の5年、厳しい国際評価 目先の「成果」強調するが…将来考えてる?』より

<※3>毎日新聞 2018年3月15日掲載「世界の雑記帳 幸福度ランキング首位はフィンランド、日本は54位=国連調査」

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 山本一成様(最強将棋ソフト「PONANZA」開発者)音源掲載

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スタッフからのお知らせです。

昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストに最強将棋ソフト「PONZNZA」の開発者でHEROZ(ヒーローズ)株式会社リードエンジニアの山本一成様をお迎えいたしました。番組サイトに音源が来週水曜正午までの期間限定で公開されました。

理系だがパソコンは苦手、数カ月間必死で勉強して最初のソフトを完成させた時の話しから、佐藤天彦名人を破った将棋ソフト「PONZNZA」の開発秘話などについてお伺いいたしました。例えを用いて論理的にわかりやすく説明いただいております。

次回も引き続き山本様をゲストにお迎えし、進学校から東京大学に進んだという山本様の将棋はアマ五段の腕前。理系でもパソコンは苦手、数カ月間必死で勉強して最初のソフトを完成させたが、出来栄えは散々で、なかなか人間には勝てなかった・・・
そんな試行錯誤を繰り返していた頃のエピソードなどをお伺いする予定です。

嶌が以前、「PONANZA」に関して記したコラムもご紹介いたしますので、よろしければあわせてご覧いただけると幸いです。

合わせて、山本様が上梓された本をご紹介いたします。

産業競争力がついてきた中国 ―米国を激しく追い上げる中国―

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 経済、政治、外交・安保、技術、ネットなどの分野で世界における中国の存在感が急速に高まっている。逆にアメリカ第一主義を唱えるトランプ政権ではアメリカの弱体化が目立つ。自由主義市場経済の世界で“一強”を誇っていたアメリカが様々な分野で中国とせめぎあい、徐々に押され始めているのではないか。習近平首席は、昨秋の5年に一度の共産党大会で中国共産党の100周年にあたる2049年までに「社会主義の現代化強国」を実現すると宣言した。その具体的内容や“社会主義”と名付ける方向性は、中国の問題に留まらずアジアや世界の覇権の行方にも大きな影響を与えることになるだろう。

■新車販売は日本の4倍以上
 最近、中国が最も存在感を示したのは、中国が従来のガソリン車から電気自動車(EV)への移行を表明し、一定割合の生産と販売を19年に導入すると宣言し、将来的にはガソリン車とディーゼル車の販売の禁止を検討すると表明したことだろう。何しろ世界最大の自動車市場はいまや中国で、年間の新車販売台数は日本の年間500万台に対し中国の17年の新車販売は2887万台と4倍以上だ。今後、まだまだ伸びると予測される大市場なのだ。

 こうした中国の方針は世界各国の自動車メーカーに大きな衝撃を与えている。日産自動車と中国の合弁企業はEVの開発に5年間で約1兆円を投資するといい、独フォルクスワーゲンは25年までに電動化に約1兆4000億円、約40車種のEV(約150万台)やプラグインハイブリッド車(PHV)を現地生産する。これまでハイブリッド車でリードしてきたトヨタ自動車も中国がハイブリッド車を電気自動車とみなさない方針を示唆したため、20年に他の国や地域に先駆けてEVを独自開発して販売することとしている。

 中国が電気自動車に力を入れるのは、排ガス規制のためだ。中国の排ガス公害は年々ひどくなり国民の健康を害しているため、思い切った方針に出たのだ。しかも世界一の市場となると自動車製造のルールまで変えてしまう力のあることを示したといえる。

■10年後にアメリカを抜くGDP
 GDP成長率もすごい。一時は成長に減速傾向がみられたが、17年は6.9%で政府目標の6.5%、16年実績の6.7%を上回った。この結果、輸入も名目で18.7%増加した。日本の中国向け輸出は20.5%と急増、約15兆円に達した。IMFによると、16年時点の中国の名目GDPはアメリカの60%に達しており、2000年から16年までの名目GDPの平均成長率はアメリカ3.8%に対し中国は14.9%。この調子で推移すると10年後にはアメリカを抜くし、たとえ中国のいう新常態(ニューノーマル)の成長率が7%に半減したとしても35年までには「現代化」を達成し、世界最大の経済大国になる。また国民一人当たりのGDPは3万ドルに近づくという。

■宅配は年間400億個
 企業ではネットのテンセントとアリババ集団が世界上場企業の時価総額ランキングで7位と8位に入っている。ちなみに1位はアップル、次いでグーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなどアメリカ企業がズラリと上位を占め、そこに日本企業の名前はない。

 中国国内の消費を刺激し下支えしているのは宅配網だ。2017年に宅配された小包の数は400億個を越えた。これは日本の10倍、世界の半数を占め、アメリカの130億個を大きく越えている。

■日本企業の買収目立つ中国マネー
 また中国マネーの日本企業買収もここ3年で目立つ。東芝、シャープ、三洋など日本の電機メーカーは中国・台湾系企業に買収(部門買収含む)された。2007年~16年の10年間で中国・台湾系による日本企業の買収は385件に上り、17年に破綻したタカタも中国系の傘下に入った。

■アジアの依存相手は日米から中国へ
 これまでアジア経済はアメリカ、日本に依存していたが、中国に変わってきた。特に東南アジアから中国向け輸出額はリーマン・ショック(2008年)の10年間でアメリカ向けを逆転し(2010年)、16年は1430億ドルとアメリカ向けを9%上回った。まさにアジア経済はいつの間にか“中国化”が進んでいるのだ。

■科学・AIも中国が猛追
 一方、先進的な科学分野・人工知能(AI)でも中国の存在感が高まっている。豊富な研究開発予算やAI人材、大量のビックデータなどを活用し、検索大手のバイドゥ、電子取引大手のアリババ集団、ソーシャルネットワークのテンセントなどが世界大手企業に次いで名を連ねている。

 科学技術予算は2015年で中国が20.7兆円、アメリカが14.2兆円、日本は3.5兆円だ。また、インターネット利用人口は7.5億人とアメリカの人口の2倍以上だし、日米中のコンピューター科学、数学分野の重要論文の引用数でも2000年後半から急増し2015年は中国の21%に対し、アメリカ17%、日本4%で、中国がアメリカと肩を並べてきているのが現状だ。

 日本では中国の経済、科学分野の発展は遅れていると推測しがちだが、実情はこの分野でもアメリカを猛追し、日本を抜き去っている。マーケットが巨大になり新分野の学問、研究開発が進めば世界の標準化技術などもいずれ中国がリードしていくことになろう。アメリカの後を追いかけてきた日本は、今後中国にも気を遣わなければならないということだ。サイバー、宇宙などの分野もいずれ中国を追いかけることになろう。

 日本が独自の分野で存在感を示せるのはどこなのか。そろそろ日本も自国の強みを認識し、その分野に力を入れて世界にアピールすべき時代がきているといえよう。日本は今後30年でどの分野を深堀し、日本の特徴を出していくか。総花的な競争力を誇ってみても東南アジアなどの急速な技術発展と安いコスト競争力でいずれ抜かれる日が近いかもしれない。
TSR情報 2018年3月13日号】

日曜(18日)TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト: 山本一成様(最強将棋ソフト「PONANZA」開発者)

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スタッフからのお知らせです。

次回(18日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストに最強将棋ソフト「PONZNZA」の開発者でHEROZ(ヒーローズ)株式会社リードエンジニアの山本一成様をお迎えする予定です。

理系だがパソコンは苦手、数カ月間必死で勉強して最初のソフトを完成させた時の話しから、佐藤天彦名人を破った将棋ソフト「PONZNZA」の開発秘話などについてお伺いいたします。

嶌が以前、「PONANZA」に関して記したコラムもご紹介いたしますので、よろしければあわせてご覧いただけると幸いです。

合わせて、山本様が上梓された本をご紹介いたします。

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