時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

「虫の目、鳥の目、歴史の目 その2」国を滅ぼす吏道の衰退――終末期迎えてきた安倍政権――

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 財務省官僚の手によって公文書が書き換えられたり、一部が白紙になっていた。財務省官僚といっても、一役人ではなく明らかに財務省幹部ら全体の意思として行なわれたと見るのが妥当だろう。役所全体で都合の悪い部分を書き換えたり、文書の一部を抜き取って国会や会計検査院に提出していたとすれば、前代未聞の悪質な行為といって差し支えあるまい。書き換えられたり、抜き取られた文章と箇所は14文書、300ヵ所以上というから驚きというよりも、まずその悪質さに“財務官僚はそこまで落ちたか”と唖然とする。財務省といえば、官庁のトップに君臨する役所であり、国の中心的存在だったが、今回の事態は一挙に信頼が地に落ちたといわざるを得ない。しかも、この文書の存在や書き換えについては国会で何度も追及されてきたのに「知らない」とウソで言い逃れてきた元局長らの答弁には、財務省OBも驚いていよう。私も50年近く財務省はじめ各役所に取材してきたから信じられない思いだ。

 「誰が、何のためにやり、それを指示したのは誰で、その理由は何だったのか」を国民の前にはっきりさせないと、今後、日本の行政は信じられなくなる懸念すらある。それほど今回の財務省の行為は問題で、司法当局も全貌を明らかにするよう努力しないと日本の官僚制度そのものに国民が信を置かなくなるだろう。

 ここまで問題を大きくした背景には、森友学園問題を巡り安倍昭恵夫人が関係し、安倍首相にまで波及するかもしれないという思いがあったに違いない。そのことを“忖度”し役所が“知らぬ、存ぜぬ”を言い続けてきたのだろう。しかし、一国の行政に関わることを、たとえ総理夫妻に関係するとしても、一昨日(3月11日)まで国会やメディアに実状を言わなかったとしたら、まさに“吏道”“官僚の誇り”を失ったも同然といえよう。

■青空が見えない最近の日本政治
 最近の日本の政治は、ひと言でいうと薄暗い。すかっとした青空がみえない。政界、官界だけでなく経済界などもはっきりモノを言わず、流されている感じが強い。かつても様々な事件はあったが、どこかが歯止め役を担っていた。たとえ総理の力が強くモノが言いにくくても、政界の派閥や官界、財界、メディアなど、どこかしらが筋を通した議論をしていたように思う。かつて、やはり一強支配のようにみえた田中角栄元首相が逮捕されたのは、たとえ総理の権限を持っていても放置していては、日本自身が沈んでしまうという危機感を多くの知識人、文化人、官僚、経済人らが共有したからだろう。

 いまや森友問題は、単なる森友事件ではすまなくなってきたのではないか。この問題をまともに正面から反省、総括する動きが政・官・財・メディアなどから出てこないと本当に日本の倫理道は危ういことになってしまおう。森友疑惑の解明といった問題としてだけでなく、今後の日本のあり方にふりかかっている精神、国の道の行く末にも関係していると考えるべきテーマのような気がする。日本の官界、政界などの頂点に立つ人々が絡んだ問題は、それほどの重大事として考えたいものだ。

 本当に最近の日本の様々な事件や影響力を持った人々の行動をみていると、“日本には青い空”が無くなってきたと感じてしまうこの頃だ。すかっとした青空が見えないままだと、日本は沈滞してゆくだろう。覇気を失ってきた安倍政権と今の政局は終末期を迎え、転換を図るべき時がきているのではないか。

「虫の目、鳥の目、歴史の目 その1」南北、米朝対話は本当に動き出すか ――カヤの外に置かれる日本――

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 朝鮮半島情勢が一気に動き出し始めた。まず3月6日、韓国大統領府は、北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長が4月末に南北の境界線のある板門店で韓国の文在寅大統領と首脳会談を開くことで合意したと発表。さらに①首脳間にホットラインを設置し、首脳間の首脳会談前に電話協議する②北朝鮮が対話の継続中は核、ミサイル実験をしない③北朝鮮が非核化問題を話合うため、米国と協議する用意があると表明④米韓が4月に合同演習を行なうことに北朝鮮が「理解」を表明⑤北朝鮮は軍事的脅威が解消する理由がないと表明した――と約束したのだ。さらに核兵器だけでなく通常兵器で韓国を攻撃しないことも確約したのである。

 一方、北朝鮮の真意を知ったトランプ米大統領は8日午後、会うなら早い方がよいとし、4月末までに米朝首脳会談を提案したという。朝鮮半島の南北首脳会談から一気に米朝首脳会談へと話が進んだのだ。

 金正恩委員長は昨年8月「グアム島周辺への射撃作戦を検討している」と述べると、トランプ大統領は「世界がみたことのない炎と怒りを受けることになる」と応じていたし、北朝鮮は同年11月29日にICBM火星を発射し「ミサイル強国の偉業が実現した」といえば、トランプ大統領は「小さなロケットマン金正恩は病んだ子犬だ」とこきおろしていた。

 ただその間に北朝鮮は新年に「平昌五輪に代表団の派遣も十分に可能だ」と言い、水をかけ1月9日に南北協議が始まった。これを受けて正恩氏の妹・金与正氏が訪韓し、文在寅大統領に訪朝を要請し、2月10日に金与正氏が訪韓。3月5日には韓国特使団が訪朝し、両国は「南北首脳会談について満足な合意に達した」と述べていた。またアメリカ政府は「南北対話を指示している」と述べるとともに、米朝間でも水面下で接触を続けていた模様だった。こうした一連の接触、流れを受けて朝鮮半島の南北首脳会談、さらにはトランプ大統領金正恩委員長の直接対話の段取りが急速に進展していったのだ。

 この急速な流れと進展に対し日本政府は、「北は日米韓の連携を分断しようとしているのだろう。北朝鮮の過去の対話は非核化につながってきておらず、アメリカの北朝鮮に対する制裁の効果が出ているので、平昌五輪参加などを通じて必死に“ほほえみ外交”を試みているのだろう」と冷ややかにみていた。

 しかし、アメリカが米朝首脳会談に応ずる姿勢をみせ始めたことから、日本の頭越しに話が進んでいることに警戒感を示している。

 実際、ここへ来て急速に南北対話、米朝対話の動きが進展していることに疑念の声もあることは事実だ。アメリカの制裁が厳しくなり北が音をあげてきたため、いつもの北の時間稼ぎだろうという見方など、だ。ただ、アメリカが本気で北を攻撃するとなれば、北の体制は一挙に崩壊しかねないので、対話路線に切り換えたという見方も有力だ。

 いずれにせよ、北が核廃棄を約束したとしても実現までには相当な時間がかかるし、検証も必要になる。事は4月末以降から本格的に動き出すとみられるが、日本はまた完全にカヤの外に置かれている格好だ。また拉致問題などがどう扱われるかも気になるところだが、米朝対話で重要な議題となるかどうかも定かでない。日本はまたもアメリカのシリを追いかけるしか術がないのか。

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:夏井いつき様(俳人)二夜目 音源掲載

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スタッフからのお知らせです。

昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストにTBSの「プレバト!!」の俳句コーナーでも人気の俳人の夏井いつき様をお迎えした二夜目をお届けしました。番組サイトに音源が掲載され、来週水曜正午までの限定配信となっております。

俳句の都で知られる愛媛県松山市で俳句を始めて俳人になったいきさつや、ラジオで俳句の種まき活動を長年続けてこられた夏井様が今進めている企画などについてお伺いいたしました。

番組内でお話があった夏井様のラジオ番組は「夏井いつきの一句一遊」として毎週月曜~金曜 10:00-10:10に南海放送にて放送中です。配信区域外の方はラジコのプレミアム(有料)にて聴取が可能です。夏井いつきの一句一遊 | RNB 南海放送

前回放送した、5分で一句作ることから始めたという俳句の魅力や、楽しみ方についてお伺いいたしました。今回嶌や安田様が自作の句を夏井様に添削いただいた放送音源は今週水曜正午まで番組サイトにて期間限定で公開しております。

ラジオ出演を夏井様のブログでご紹介いただいております。

合わせて夏井様が上梓された俳句の本をご紹介いたします。「2018年版 夏井いつきの365日季語手帖」はアマゾンで現在ベストセラー1位となっていらっしゃいます。

次週は将棋プログラム「ポナンザ」の開発者のHEROZ株式会社リードエンジニアの山本一成様をお迎えする予定です。

―集団指導体制から習近平氏一強へ?―

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 中国共産党中央委員会は、中国の国家主席の任期の上限をこれまでの「2期10年」から上限に関する部分を削除する改憲案を全国人民代表大会全人代=国会)に提出した。3月5日に開幕した全人代で可決された後、正式に決定される。

 

続きは、本日18:00頃に配信のメールマガジンまぐまぐ」”虫の目、鳥の目、歴史の目”にてご覧ください。(初月無料)

www.mag2.com


続きに掲載されている本記事の見出し
アメリカ・ファーストとどう調和?

日曜(11日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:夏井いつき様(俳人)二夜目

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スタッフからのお知らせです。

次回日曜(11日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストにTBSの「プレバト!!」の俳句コーナーでも人気の俳人の夏井いつき様をお迎えした二夜目をお届けいたします。

俳句の都で知られる愛媛県松山市で俳句を始めて俳人になったいきさつや、ラジオで俳句の種まき活動を長年続けてこられた夏井様が今進めている企画などについてお伺いする予定です。

前回放送した、5分で一句作ることから始めたという俳句の魅力や、楽しみ方についてお伺いいたしました。今回嶌や安田様が自作の句を夏井様に添削いただいた放送音源は来週水曜正午まで番組サイトにて期間限定で公開しております。

ラジオ出演を夏井様のブログでご紹介いただいております。

合わせて夏井様が上梓された俳句の本をご紹介いたします。「2018年版 夏井いつきの365日季語手帖」はアマゾンで現在ベストセラー1位となっていらっしゃいます。

AIは新産業革命をおこせるか

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 将棋の人工知能「ポナンザ」が昨年の第二期電王戦で佐藤天彦名人に2連勝して、一挙に人工知能(AI)が大きな話題となった。ポナンザを作った山本一成氏は東大先端科学技術研究センターの研究員で(株)HEROZの開発技術者でもある。

 山本氏自身、将棋を指しアマ5段の腕前を持つ。最初はポナンザに将棋の基礎を教え、機械学習の技術を取り込み、様々な棋譜を学習させた。

 将棋には駒の位置や指し手の組み合わせで億単位のパラメーターがあり、1兆近い局面ができるという。ポナンザにそれらの棋譜を覚え込ませており、一般的なパソコンであっても1秒間に300万近い局面を読んでいる。プロの棋士もあらゆる棋譜を学習し、様々な展開を読む訓練をしているが、実際の勝負で指し手を読むとしても限られた時間ではせいぜい数十手ぐらい先まで見通すのが限界らしい。

 AIのポナンザは学習している間に人間が思いもつかない手をコンピューターが打ち、ポナンザ制作者の山本氏も勝てなくなってしまった。山本氏は「自分の方が強いと思っていたのに進化したプログラムに負けてしまい最初は不愉快な気分になった」と苦笑する。AIは様々な展開を瞬時に読む能力を身につけ、制作者の人間にも勝利してしまうのだ。

 こうしたAIの能力と応用が将棋や囲碁の世界で試されてきたが、今後は建設分野で数十万の建設部材のデータを入力することにより最適の構造を作れるようになったりできる。また、医者の診断の際にも有効に応用できるという。

 チェスの世界チャンピオンがスーパーコンピューターに敗北したのが1997年のことだった。以来20年、いまや車、電気冷蔵庫、テレビなどあらゆるモノにAIをつけることで、無人の自動車が運転したり、電気冷蔵庫の中身がいつでもどこでもわかり、夜の食事の用意もできてしまうというような世の中になるらしい。

 さらに、AIは畜産にも応用できる。乳牛の1頭ずつに測定センサーを取り付ければ歩数や体の動きの変化をみつけ病気の兆候を監視したり、牛乳の成分から人工受精のタイミングを20時間以上前に探知することもできるのだ。銀行の融資に際しても、過去の融資、返済実績、現在の経営状態データなどを投入すれば短時間で融資の判断が行なえるようになるという。

 ただ、AIは大量のデータと局面の無数の展開を提示できても、複雑な判断やその意味を考えることにおいてはまだ人間に及ばないようだ。20年後には人の仕事の約半分がAI、ロボットに置き換えられると予測されているが、今後AIと人間の知恵の協調、協業が大きな課題になりそうだ。
【財界 2018年3月13日号 第466回】

画像は、株式会社HEROZ公式Facebookより2017年11月15日(水)にソウルで行われた「Global Leaders Forum」での山本氏の登壇の模様。「AI and Black Magic」と題し、将棋AI「Ponanza」の開発における進化の過程や今後AIが世の中にもたらす影響などについてスピーチされています。山本氏は先日情報処理学会「ソフトウエアジャパンアワード2018」を受賞されたようですので合わせてFacebookの投稿を掲載いたします。

【HEROZお知らせ】 HEROZリードエンジニア山本一成が 情報処理学会「ソフトウエアジャパンアワード2018」を受賞いたしましたのでお知らせいたします! goo.gl/o1SsFq 将棋AI「Ponanza」は、2017年の電王戦での...

HEROZさんの投稿 2018年2月4日(日)

三田評論(慶應義塾発行)3月号の社中交歓に嶌の寄稿が掲載されました

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スタッフからのお知らせです。

1日発売の三田評論3月号の社中交歓に嶌の寄稿が掲載されました。

三田評論慶應義塾の機関誌として「慶應義塾學報」が明治31年3月創刊され、大正4年1月(第210号)に現在の「三田評論」と題され、今号で通算1220号を迎えております。

今月のテーマは3月28日のシルクロードの日にちなみ「絹」となっており、嶌は「砂漠の中の日本人伝説」を寄稿いたしました。

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日本人の覚悟

日本人の覚悟―成熟経済を超える

(実業之日本社)
【著】嶌 信彦


日本の「世界商品」力

日本の『世界商品』力

(集英社新書)
【著】嶌 信彦

     
首脳外交

首脳外交-先進国サミットの裏面史

(文春新書)
【著】嶌 信彦


 
嶌信彦の一筆入魂

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(財界研究所)
【著】嶌 信彦


ニュースキャスターたちの24時間

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(講談社)
【著】嶌 信彦
       

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