時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

移民受け入れも視野に

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 日本もいよいよ移民受け入れへの第一歩を踏み出すようだ。政府は今年6月、外国人受け入れの転換となる促進策を取入れたからだ。

 これまで日本では単純労働分野での外国人就労を禁止してきた。ただ医師や弁護士といった高度な専門性を持つ人材は積極的に受け入れ期限なく働き続けることや場合によっては家族の同伴も認めていた。

 今回新たな在留資格を認めるのは人材の確保が難しく外国人材の受け入れを認めないと、業種の存続も危うくなるという場合で、対象として農業、介護、建設、宿泊、造船の5分野で50万人の受け入れを想定している。今後さらに外食、製造業などにも拡大する方向で調整中だ。

 現在の日本では、約128万人の外国人が働いている。最も多いのは中国人で約37万人、次いで最近増えているのがベトナム人の約24万人、さらにフィリピン、ブラジル、ネパールなどと続く。

 ただ単純労働分野の受け入れは約70種類の技能実習生(約25万人)にとどめられ、最長5年の研修は認めるものの研修期間を終えると本国に帰国させていた。これだと人手不足の企業から不満が出ていたし、実習生も技能習得には時間が短すぎるという声があった。そこで5分野に関してはさらに最長5年の就労資格を得られるようにしたのだ。これにより重機を使った高度の仕事も任せられるようになるという。

 しかし問題は、在留資格を延長すれば外国人労働者が今後定着するかどうか、という課題もあるのだ。実は外国人労働者の需要は世界で年々増え、それに伴い日本で働く中国人はここ10年で4分の1、ベトナム人も16年比で半分に減っている。成長著しいアジアの国々も労働力が減少し、日本の賃金が伸びないため日本を回避する人が増えているのだ。

 スイスのビジネススクールの統計によると「日本は働きやすい国63カ国のうち51位」だし、長時間労働が嫌われている。ドイツでも介護人材を東欧からの受け入れで解消しようとしたが、賃金の高いイギリスなどに流れているという。

 途上国、新興国からいつでも人材を調達できる時代は、先進国の少子高齢化時代を迎えだんだん難しくなっているのが実情なのだ。

 外国人労働者を労働力不足の単なる穴埋めと見ている国は、いずれソッポをむかれることになろう。外国人労働者の賃金、福祉対策をはじめ、何より外国人にとっても〝居心地の良い国〟にならないともっと深刻な人手不足が訪れるに違いない。移民受け入れも含めた多様性のある国が求められ始めているのだ。
【財界 2018年9月11日号 第478回】

※補足情報
・9月4日付けの新聞各紙によると、法務省は新たな在留資格の創設に向け、政府が関係省庁や経済界、自治体関係者などを交えた検討会を設置したことを発表した。初会合は13日で、外国人労働者の受け入れ環境の整備について議論し、年内に対応策を取りまとめる。

・9月5日付けの毎日新聞によると、法務省は日本国内での就職を希望する外国人留学生らに広く在留資格を与える方針を決定した。留学生の国内就職者は近年増加しているものの、大学・大学院を卒業・修了した留学生のうち国内で就職するのは3割程度にとどまり、見直しによって、優秀な外国人材の定着促進を図るのが狙い。早ければ来年4月に受け入れを始める。

 外国人が日本で働く場合、活動ごとに定められた在留資格を得る必要がある。例えば大学で学んだ学生が、その知識を生かして企業などに就職する際は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得られるが、相応の業務でなければ認められない。

 新たな受け入れ対象は、日本の4年制大学の卒業生で海外で人気が高く政府が推進する「クールジャパン戦略」に関連する分野(アニメや漫画、日本料理、ゲームなど)の専門学校の卒業生などを想定している。入管法改正で在留資格を設けることはせず、法相が個々の外国人について活動を指定する在留資格「特定活動」(最長5年)で、留学生らの在留を認める方向で検討を進めている。

日曜(9日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』21:30~ ゲスト:鈴木典比古様(国際教養大学学長)二夜目

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日曜(9日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストにユニークな教育方針で知られる国際教養大学長の鈴木典比古様をお迎えした二夜目をお届けいたします。

アメリカの複数の大学や国際基督教大学学長を経て現職に就任して感じていることや、今、日本の大学に求められている世界基準のカリキュラムなどについてお伺いする予定です。

前回は、すべて英語でおこなう少人数の授業や、全学生に1年間の海外留学を義務づけるなど、ユニークな教育方針の中身や、世界に向けて知識と経験を持つ人材を秋田から出す意味などにつきお伺いいたしました。

余談ですが、国際教養大学の図書館は仙田満・茂木聡の両氏が設計し、村野藤吾賞、2009年の日本建築家協会賞、2014年のグッドデザイン賞などを受賞し、非常に話題となっている建築物です。

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合わせて、参考まで前学長の中嶋嶺雄様や鈴木様が上梓された書籍をご紹介いたします。

【9月12日開催】ウズベキスタン シンポジウムのご案内

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スタッフからのお知らせです。

駐日ウズベキスタン共和国大使館および衆議院議員 村上誠一郎事務所より日本の方向けにウズベキスタンの理解を促進いただくシンポジウムを9月12日に開催されるご案内を頂きましたのでご案内いたします。
※9月11日追記
定員に達しましたので申込みは終了しました。

ウズベキスタン‐日本シンポジウム「ウズベキスタンの行動戦略の一環として実施されている5つの優先分野における民主的改革・転換の新たな政策とウズベキスタンと日本の協力」

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主催:駐日ウズベキスタン共和国大使館、日本ウズベキスタン友好議員連盟

日時:2018年9月12日(水)15:00~16:30  受付開始14:30
場所:衆議院第一議員会館 1F国際会議室 千代田区永田町2-2-1
 

※ご参加の方は、当日第一議員会館1Fの「ウズベキスタン・日本シンポジウム」受付にて会議室行きの通行証をお受け取り下さい。
言語:日本語・ロシア語(同時通訳)

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申込み先:メール(g04473@shugiin.go.jp )またはFAX(03-3502-5172)
御名前、御社名、御住所、電話、メールアドレスを明記の上、9月11日(火)までにお申込み下さい。


お問い合わせ先:
ウズベキスタン大使館 畑野様、池田様  03-6277-2166
衆議院議員 村上誠一郎事務所      03-3508-7291 

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』21:30~ ゲスト:鈴木典比古様(国際教養大学学長)音源掲載

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昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストにユニークな教育方針で知られる国際教養大学長の鈴木典比古様をお迎えした放送音源が掲載されました。

番組サイトの音源に不具合が出ておりますため、ひとまずradikoの音源を共有いたします。プレミアムの方は全国でもエリア外でもお聞きいただけます。

すべて英語でおこなう少人数の授業や、全学生に1年間の海外留学を義務づけるなど、ユニークな教育方針の中身や、世界に向けて知識と経験を持つ人材を秋田から出す意味などにつきお伺いいたしました。

次週も引き続き鈴木様をゲストにお迎えし、アメリカの複数の大学や国際基督教大学学長を経て現職に就任して感じていることや、今、日本の大学に求められている世界基準のカリキュラムなどについてお伺いする予定です。

余談ですが、国際教養大学の図書館は仙田満・茂木聡の両氏が設計し、村野藤吾賞、2009年の日本建築家協会賞、2014年のグッドデザイン賞などを受賞し、非常に話題となっている建築物です。昨日23時からのNHK Eテレ美の壺の再放送「図書館」でも紹介されておりました。

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合わせて、参考まで前学長の中嶋嶺雄様や鈴木様が上梓された書籍をご紹介いたします。

ポスト平成社会を考えよう

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 平成時代が間もなく終わる。平成が発足するとき、平成の意義を問われた当時の小渕恵三官房長官は、「平成」と書かれた新しい元号を前に「平らかに成る」と答えた。人々が忙しく立ち働いた高度成長期とは違って、もう少し穏やかに生きて”平らかに成る”時代を目指す願いと受け止めた人が多かった。
 
 しかし現実の”平成”は決して平らかな時代ではなかった。年号が変わる時期(1989年)宮崎勤元死刑囚が、全く関係性がなく動機もないのに女児4人を殺害して幕をあけた。以後、94年の住友銀行名古屋支店長射殺、95年にはあの無差別テロの地下鉄サリン事件が発生、さらに中学生が小学生5人を殺傷する「酒鬼薔薇聖斗」事件(97年)や和歌山毒物カレー事件(98年)、世田谷一家殺害事件(2000年)など動機不明の不可解な事件が相次いだ。
 
 一方で災害も数多く50年、70年に1回という大災害が当たり前のようになってきた。地球や宇宙空間に得体の知れない異変が起き始めていると感ずる人が増え、〝安心、安全〟を願う風潮がますます強くなっている。宗教やオカルトに興味を持つ人が増えているのも無縁ではあるまい。
 
 その一方で2000年代に入るとIT(情報技術)・デジタル時代となり、スマホやインターネットがライフスタイルを大きく変えていった。コミュニケーションの手段は通話だけでなくメール、インターネットで様々な情報を好きな時間に手にすることができる上、買い物や遠く離れた人、企業と空間を越えて取引も出来るようになった。地方の中小企業がネットを通じてビジネスもでき、一挙に爆発的人気を得ることも珍しくなくなったのだ。
 
 もちろん新しい技術、ライフスタイルの変化などにつれて、これまで思いもよらなかった問題を引き起こすことも多い。弊害の規制や法律、対策ができないうちにどんどん新しいアイデアによる製品やシステムができてしまうからだ。
 
 こうしてふり返ってみると、平成の30年は新技術が先導しながらライフスタイルや物の考え方、個々人の生き方などを昭和時代から全く変えてしまった時代だったといえるかもしれない。多くの年老いた人間にはアナログ時代の方が慣れてすごしやすかったと感ずるだろう。若いチャレンジングな若者には長幼を重んずるこれまでの日本社会には無かった新しいチャンスと捉えるだろう。

 平成の後にはどんな社会、人生が待ち受けているのか。それを見通すには平成時代を今のうちにじっくりと考え、総括しておくことが大事になってくるのではないか。
【財界 2018年8月28日号 第477回】

画像:当時の小渕恵三官房長官が掲げた「平成の書」。竹下家の寄贈により現在は国立公文書館に所蔵。

日曜(9月2日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』21:30~ ゲスト:鈴木典比古様(国際教養大学学長)

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日曜(9月2日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストにユニークな教育方針で知られる国際教養大学長の鈴木典比古様をお迎えいたします。

すべて英語でおこなう少人数の授業や、全学生に1年間の海外留学を義務づけるなど、ユニークな教育方針の中身や、世界に向けて知識と経験を持つ人材を秋田から出す意味などにつきお伺いする予定です。

余談ですが、国際教養大学の図書館は仙田満・茂木聡の両氏が設計し、村野藤吾賞、2009年の日本建築家協会賞、2014年のグッドデザイン賞などを受賞し、非常に話題となっている建築物です。

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合わせて、参考まで前学長の中嶋嶺雄様や鈴木様が上梓された書籍をご紹介いたします。

平和祈念展示資料館 「シベリアの記憶 家族への情愛~香月泰男展」が9月4日から開催

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スタッフからのお知らせです。

新宿の住友ビル33階にある平和祈念展示資料館では、自身のシベリア抑留の体験を描いた「シベリア・シリーズ」の作者としてよく知られる香月泰男氏の展覧会を9月4日から開催される運びとなられましたのでお知らせいたします。本展覧会は山口県長門市香月泰男美術館と連携した交流展となっています。

香月泰男氏は1945(昭和20)年にシベリア・クラスノヤルスク(※)に抑留され森林伐採等の強制労働に従事し、1947(昭和22)年に復員しました。帰国後、約30年にわたり「シベリア・シリーズ」を描き続け、多くの抑留体験者の絵画を生み出す契機となりました。このシベリア・シリーズの全作品は山口県立美術館が所蔵しています。

クラスノヤルスクの地図

クラスノヤルスクの位置

(※)2018年10月1日追記:当初ネット等で公開されている情報によるとクラスノヤルスクで森林伐採等の強制労働に従事していたという記述があり、ご紹介しておりました。しかしながら、ご本人が書かれた書籍等を読むと一部誤りがあり、当初セーヤ収容所にて氷点下30度の厳寒下での森林伐採作業、途中でソ連の将校などに絵を描くように命じられ何度か絵を描いていたようです。その後、クラスノヤルスクでは当初、絵を描く仕事に従事していました。その後、絵を描く仕事が減少したためクラスノヤルスクには残らずチェルノゴルスク収容所に移動し、炊事の手伝いや、エニセイ河岸辺の製材工場での資材選別、製材助手、荷下ろし等の作業に従事していたようです。

戦争に翻弄された画家たちについて作品と共に紹介されている本『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』には、香月泰男氏について東京美術学校(現在の東京藝術大学美術学部)の後輩である東京藝術大学名誉教授の野見山曉治氏が香月氏とのエピソードを交えた作品の解説が掲載されていますのでご興味をお持ちの方は合わせてご覧下さい。

本展では、これまでほとんど館外に出ることのなかったシベリア抑留関連の作品と家族の情愛を描いた作品や入隊以来手放すことのなかった絵の具箱や軍事郵便が展示されます。

期間は前期が9月4日~30日、後期が10月2日~28日まで。入場が無料となっており、貴重な作品が見られる機会となっています。詳細は以下リンクを参照下さい。

また、9月2日まで「従軍カメラマン小柳次一の二つの眼」として、陸軍嘱託の従軍カメラマンとして活躍した小柳次一氏の写真を含めた展示が開催中です。こちらも見所の多い展示となっておりますので足を運んで頂けると幸いです。

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日本人の覚悟

日本人の覚悟―成熟経済を超える

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日本の「世界商品」力

日本の『世界商品』力

(集英社新書)
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首脳外交

首脳外交-先進国サミットの裏面史

(文春新書)
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嶌信彦の一筆入魂

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(財界研究所)
【著】嶌 信彦


ニュースキャスターたちの24時間

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【著】嶌 信彦
       

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