新著ノンフィクション「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」の近況
新著ノンフィクション「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」(角川書店)は、各地で好調に売り上げを伸ばしているようで嬉しい限りです。特にこのところ、共同通信が地方有力紙に配信してくれたノンフィクション作家、中田誠一氏の書評「抑留者たちの奇跡の物語」(地方紙によって見出しは異なる)が大いに読まれたようで地方での売れ行きが好調のようだ。中田氏に感謝したい。
満州、シベリアに抑留された人は地方出身者が多いので、地方の方々の関心を呼んだのだろう。これまでに神戸新聞、京都新聞、愛媛新聞、熊本日日新聞、信濃毎日新聞などに掲載された。先日毎日新聞で紹介され、今後も地方紙の他、別の記事が大手紙に掲載予定と言われているので楽しみだ。アマゾンでは何度か1位になり、最近は定価が1600円なのに古書が2000円台で多数売り出されびっくりしている。丸善、ジュンク堂、紀伊国屋、などの大型店にはまだ在庫があるようだが中小規模の店舗や書店では売り切れとなり、版元にも無く、いま売れ残っているところに声をかけて集めているらしい。アマゾンは一時期品切れだったが先日100冊納入したという。
著者としては早く増刷して欲しいのだが、出版不況の折からか、全体の在庫を調べて調整してからということらしく、出版不況のせいで出版社も軽々とは増刷しないらしい。
1月に入ると日本ウズベキスタン協会の新年会(1月23日、日本プレスセンター)やいくつかの講演会もあるので何とか間に合わせてほしいと切望している。
今なお「何とか手にいれました」「図書館で1週間まって読みました。感激しました」「今こそ苦況時の日本人の素晴しさを知らせるべきだ」などの感想が沢山寄せられ心強く、嬉しく拝読しています。
なお、中田誠一氏が沖縄タイムスに書かれた書評を参考まで改めて掲載させて頂きます。
抑留者たちの奇跡の物語
まことにタイムリーというべきか、このほどユネスコの世界記録遺産に第2次大戦後のシベリア抑留資料「舞鶴への生還」が登録された。シベリア抑留では、旧満州などの日本軍将兵約57万5千人がソ連の捕虜となり、約5万5千人が死亡した。シベリア、中央アジア、モンゴルなどに送られて強制労働に従事させられたのである。
本著は、ソ連抑留の秘史である。しかもヒューマニズムあふれる稀有(けう)な物語だ。満州からシルクロードのウズベキスタンの首都タシケントに送られた捕虜たちが、オペラハウスを建てたというからただ事ではない。ソ連の四大劇場の一つとされたナボイ劇場である。
1966年、タシケントを襲った直下型大地震にもビクともしなかったことで、建設の仕上げに携わった日本兵のことが想起され人々に称賛の声があがったという。
戦争は国家の武力の対決であり文化の対決でもある。国民性や民族の特性が如実に表れる。ナボイ劇場の建設に関わったのは、満州の旧陸軍航空部隊の永田行夫大尉を隊長とする第4ラーゲリ(収容所)の457人の工兵たち。大工、電気工、とび職など技術者が多かった。応召前には日本の伝統文化や技能の担い手だった職人である。
武器を捨てた抑留者たちは、2年後の劇場完成を目指して日本人の技術、勤勉、団結力など、その力を最大限に発揮して懸命に働いた。24歳の永田隊長の卓越した統率力、勇気、希望、それに応えたソ連側の収容所長の人間性。抑留者たちの連帯と市民や建設現場の親方たちとの心温まる交流、地元女性の悲恋など多くの逸話が生まれた。
日本兵はシルクロードにオペラハウスという後世への文化遺産を建設したのだ。抑制の利いた文章が、幾重にも感動の渦を巻き起こす。
戦後70年に続く、ナホトカから舞鶴港に帰国した人々の戦争の軌跡と真実の物語である。(中田整一・ノンフィクション作家)