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モンロー主義に戻る? 弱まるオバマの統治力

 アメリカの債務不履行は土壇場の1017日、期限ギリギリで民主党と共和党の妥協が成立し、回避された。最終的には決着すると誰もが予測していたから〝ホッと胸をなでおろす〟といった大仰な反応はなかった。

 しかし、もし本当に不履行に陥っていたら世界の金融、経済市場は大混乱に陥っていたはずだ。実際、アメリカの短期金利は10月に入る直前から急騰し、投資家が米国債の利払い停止や元本毀損に備えてかける保険の料率も急上昇した。ヘッジファンドや投資家が混乱に乗じて稼ごうと激しく売買を交錯させたからだ。アメリカが債務不履行に陥ることは常識ではあり得ないが、2001年にはアルゼンチンが対外債務の支払いを停止、最近ではユーロ危機でギリシャが民間投資家のもつ国債の元本をカットしている。11日の主要20ヵ国の財務相・中央銀行総裁会議が「アメリカはこの危機をできるだけ早く解決を」と名指しで共同声明を発表したのは、不安心理から市場が荒れることを懸念したためだろう。ちなみに中国は約1.3兆㌦、日本は1.2兆㌦近くのアメリカ国債をもつ世界で断トツの12位の保有国である。土壇場で決着したものの、アメリカが失ったものは案外に大きく、〝アメリカ衰弱〟のイメージを増大させていくに違いない。オバマ大統領は、この債務不履行をめぐる議会対立のため、TPPAPEC首脳会議を欠席した。その結果、アジア太平洋におけるアメリカのグリップは明らかに弱まったし、その間に中国はぐっと存在感を増した。

 たかが1回の欠席ぐらいで……と思うが、したたかな中国がアメリカ大統領の居ない間に習近平主席、李克強首相が各国首脳らと相次いで会談し〝中国は恐い存在ではない。もっと友好協力関係を結びましょう〟と個別の経済関係も深めたのだ。さすがにオバマ大統領は、総会終了後に「欠席したことを反省している」と述べ、アジア重視の姿勢は不変だと強調。ケリー国務長官も「アメリカは太平洋の未来を構築する」と何度も繰り返した。

 しかし世界の指導層は、アメリカはだんだん内に閉じ籠もり始めていると感じているのではないか。冷戦終結(1990)後、アメリカは東欧の混乱、イラク戦争、リビア、エジプト、シリアなどの内戦にかかわり続けてきたが、アメリカ国民はもはやアメリカが世界の警察官となって自国民の血を流すことに嫌気をさしているようにみえる。アメリカ外交はモンロー主義(当時は欧州大陸との間で互いに干渉しないとする思想)が第二次大戦の直後まで続いていた。それが旧ソ連を中心とする社会主義圏の拡張に対抗するための自由主義国のリーダーに祭り上げられ、モンロー主義と決別した歴史がある。

 

 オバマ大統領は中東、アフガニスタンからの撤退を表明し、国内の社会保障改革では〝アメリカの建国精神にもとる〟と反対する共和党との間で債務不履行寸前まで対立した。しかも今回の妥協は解決の先送りでしかない。最近のアメリカは、やはり内向き志向で世界を背負って立つ気概をなくしつつあるのだろうか。【財界 20131119日号 第363回】

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