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台頭する中国式経済競争の脅威

アメリカ合衆国国務省 (United States Department of State) 民主主義サミットページより

民主主義が危機的状況になりつつある?ー 最近アメリカを中心に欧州などの民主国家から「民主主義が警戒すべき挑戦に直面している」という声が強まっている。

民主主義を危機に陥らせているのは、中国を中心とする“専制主義国家”だと指摘、岸田文雄首相も自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を担う行動に対して有志国が一致して臨む必要がある、と主張し始めた。民主主義危機論はなぜ急速に国際社会の中心テーマになってきたのだろうか。

近年、民主主義が世界的に退潮傾向にあると大声で訴え始めたのは、昨年アメリカの新大統領に就任したバイデン氏だ。バイデン大統領は昨年末、世界の111の国・地域の指導者を招いて初めての“民主主義サミット”を主催した。バイデン大統領は、各種の調査から近年「世界的に民主主義が退潮傾向にある」と強い危機感を表明し「中国・ロシアなどの専制主義国家の指導者たちは、世界中で影響力を拡大し抑圧的な政策と実践を正当化しようとしている。そのうえで我々は民主的な国際社会として法の支配、言論と報道の自由、信仰の自由、全ての個人が固有に持つ人権を支持する必要がある」と訴えたのだ。バイデン主催サミットでは「権威主義に対する防衛」「汚職への対応と戦い」「人権の促進」の3つの課題について討議した。

バイデン大統領が就任して直ちに民主主義サミットを主催したのは、トランプ前大統領のディール(取引き)に重きを置いた外交手法との違いを明らかにしたかったためと見られている。バイデン大統領は、トランプ前大統領に勝利を収めると「アメリカは帰ってきた」と叫び、アメリカの伝統的外交の価値観である「人権」「自由」「民主主義」「法の支配」といった外交を展開すると強調。トランプ的取引に重点を置いた外交方針、手法を全て否定し、アメリカ本来の価値観に基づいた外交に戻ると確約したのである。

ただ、バイデン大統領が招待した111の国・地域の中には強権的政治手法を取り、人権問題などで批判されているフィリピン、パキスタン、ブラジルなども入っている。民主主義的価値観を持つ国々のサミットといいながらアメリカの戦略的都合で招待国を選んでいるようにも見え、このバイデン氏主催のサミットに対し、国際的評価は決して高くはなかった。また招待されなかった専制国家とされる中国は「中国には中国の民主主義がある」と強調。中国が日本を抜いて世界第2位の経済大国となったのは「社会主義が存在したからだ」と主張している。

20世紀の自由主義体制圏と社会主義体制圏の経済競争は、市場競争と自由、公正、平等などに基軸をもった自由主義圏が勝利し、ソ連、東欧諸国の社会主義圏は敗退した。しかし21世紀になり、社会主義を標榜する中国が「中国式社会主義によって我々はGDPで世界第2位の地位を占め、いずれアメリカを抜くだろう。」と主張し始めている。21世紀の経済競争は20世紀の米・ソ二極時代の競争とは異なったものになってくるのかもしれない。

画像:アメリカ合衆国国務省 (United States Department of State) 民主主義サミットページより

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