総選挙の時期と“ポスト安倍”の議論が段々熱を帯びてきた。
総選挙については、衆院現議員の任期切れとなる2018年12月末までのいずれかの時期になる。ただ、これまでの“安倍一強時代”とは違い、都議選の大敗と内閣支持率の急落、そしてその後の支持率上昇が必ずしも思わしくないことから、選挙時期を安倍首相自身が自由に選べる状況でなくなってきている。
内閣支持率ができれば45%位あり、野党が混乱し続け、自民党内にもまだポスト安倍の対抗馬が頭角を現わす前――などの条件がないと、総選挙勝利、安倍体制継続が確実とはいえなくなってきているのだ。しかも都議選敗北の原因が自民党の驕りや自民党への飽きにあるだけではなく、安倍首相個人への不人気も重なっているため、“勝てる選挙の時期”を選ぶ事が厄介になっている。
いまのところ、10月10日公示、22日投票で調整しているが、追い込まれた選挙のイメージを出したくないため9月解散を決断したようだ。内閣支持率が高い時に実施して勝利し、2020年以降までの首相三選を決めたいところだろう。ただ選挙の大儀名分がいまひとつで、勝つことだけを優先して日を選んだ“覇道”選挙の批判もある。この批判が国民的広がりになるかどうかが今後の焦点だろう。
ポスト安倍もまだはっきりしない。本命・対抗には石破茂、岸田文雄政調会長、麻生太郎財務相の名が取沙汰されているが、安倍氏と真っ向勝負の雰囲気はない。野党では小池都知事の都民ファーストの国政版である国民ファーストが都議選の時のように人気を盛り返し与党の過半数割れにもってゆけるかどうかだ。その場合も現党首の若狭勝議員ではなく小池都知事が新党の党首に戻らないと盛り上がるまい。(※)選挙までに政治、経済、安保、外交などの大きな方針をまとめ、良いブレーンを集めることが大事だ。そうした動きが選挙とは別に日本の政治を活気づけることにもつながろう。
いま新しい政治勢力として新鮮味があり、大化けする可能性があるのは民進党ではなく、小池新党ではなかろうか。小池氏に対しては、いろいろな批判もあるようだが、あのバイタリティーと一人で新しい道を切り開いてきた力量は今の政界では一番だし、実績もある。
ただ、まだ何となく頼りなくみえるのは、“小池保守政治”の軸、原点、哲学がよくみえないためだろう。築地も豊洲も生かすといった器用な政治戦術ではなく、この地盤沈下している日本をどう引上げ、世界の役に立てるかについて熱く語って欲しい。このことは他の首相候補も、民進党にも同様に望まれていることだ。
【補足】本コラムは選挙日程発表前に入稿し、3日発売号に掲載されたものです。
(※)入稿時には政党名が決まっておりませんでしたが、9月25日に「希望の党」の立ち上げならびに、小池氏が代表に就任する旨を発表しています。
【財界 2017年10月17日号】
※画像は、首相官邸サイト9月25日に行なわれた安倍内閣総理大臣記者会見の模様より
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