IoTへのサイバー攻撃
このところIoTの話題が急速に増えている。インターネット・オブ・シングスの略で、モノのインターネットとも呼ばれている。インターネットには、これまでのように人と人がつながれるための通常のインターネットの他にモノや機械同士がつながるインターネットも登場している。
例えばスマホや自動車、道路、電信柱などだけでなく窓や鍵、ペット、家電、人間などあらゆるものにセンサーを入れることができ、センサーを組み込まれたもの同士がインターネットによってつながるようになるのだ。つまり全てのもの、世の中全体がインターネットにつながる状態となり、インターネット・オブ・エブリシングの世界が生まれつつあるわけだ。
このIoTはいま毎年30%程度伸びているといわれ、2020年のIoT市場は3兆ドルの規模になるとみられている。これはアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフト4社の時価総額に匹敵する。この低成長時代の世界にあって、あらゆるモノにセンサーを取り付け、つなげることによりモノ同士のコミュニケーション市場を創出し、通信インフラの膨大な市場が必要になってくるのである。このため、各通信会社は高度な基地局を建設しているのだ。
個別企業でもIoTを自社製品に取り付け様々な効果を上げているところが多い。有名なのは建設機械で世界第2位のシェアを誇るコマツだ。コマツのショベルカーは様々なセンサーが取り付けられ、そのセンサーが世界の現場の情報を送ってくるのである。地域によって異なる故障原因を分析したり、内蔵されているGPSによって盗難された製品の居場所を見つけたり、効率的点検、故障の早期発見などもやすやすと行なえるという。
最近はスマートハウスの効用も話題になっている。家の中の家電製品にセンサーなどを取り付けておけば冷蔵庫の内容物が外出先から把握できたり、電気のつけっ放しを忘れて外出した時に外出先から点検したりすることもできる。車から送られてくるビッグデータと人工知能を組み合わせて信号機をコントロールし、渋滞解消や自動運転の発展にもつなげられるのだ。
このほか洋服にセンサーを取り付けることで脈拍や体温、血糖値の管理も可能となるし、通信速度が100倍になることで通信の遅延が無くなり、遠隔地にいても人体の画像をみて名医が手術の執刀者に手ほどきすることも可能となる。超高速で通信の遅延が解消され、多数の人、モノなどが同時接続できて長距離通信が可能となる大容量の通信技術(5G=第5世代の通信)になるのでIoTと5Gが組み合わさるとこれまでには想像がつかなかった新商品や新システムが生まれる可能性が強く、通信・家電メーカーなどは新アイデアにしのぎを削っているという。
ただ、コンピューターのネットワーク上の仮想空間に関する国際的ルールがまだ追いついていない。いわばコンピューターのネット上で自由に情報を流したり得たりすることができる仮想空間(サイバー空間)が存在しながら国際的ルールが未整備なため、その空間を利用した情報・金銭の搾取や破壊活動(サイバー攻撃)なども常時行なわれている。米国と中国のサイバー覇権の争いはその典型でもあるのだ。
【電気新聞 2019年5月24日】
画像:photoAC fujiwaraさん