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一帯一路を巡るルール作りに?

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 中国の巨大経済圏構想"一帯一路"に米・仏などが懸念を強めるなか、G7加盟国として初めてイタリアが協力に関する覚書に署名した。一帯一路構想は着々と地歩を拡大している。また、外国貨物に関税を掛けない自由港・トリエステ港の鉄道インフラや北西部のジェノバ港整備に中国企業が参加することでも合意した。
 
 ヨーロッパではイタリアのほかポーランドギリシャオーストリアチェコポルトガルなど21カ国が一帯一路の覚書に署名しているほか、陸のシルクロードでは既に中国からドイツなどヨーロッパ15カ国、49都市と国際貨物列車を開通させている。これによって、一帯一路の署名国はヨーロッパで21カ国、世界で124カ国に上っている。
 
 アメリカなどが中国の一帯一路構想に警戒するのは、中国は港湾などに巨額投資を行い、その国が中国の人権問題を批判しなくなったり、将来、港湾が中国に軍事利用される懸念があるとみているためだ。特にアメリカの地中海を管轄する第6艦隊の拠点はイタリアにあり、ジェノバ港などから中国に通信傍受されることも警戒している。アジアでは中国が港湾整備に協力した国々が債務を返せなくなり港湾使用権を数十年も中国に貸与せざるを得なくなったりしているのである。
 
 また公共投資を巡る中国側融資に透明性が欠けていたり、中国企業による企業買収で技術流出などが進むことも警戒している。こうした中国の積極的なヨーロッパへの働きかけに対し、フランスのマクロン大統領は「EUが中国に対し無警戒でずるずると進出を許すことには厳重な注意が必要だ」とドイツなどに呼びかけている。
 
 中国はすでにオーストラリア、東南アジア、インド洋の国々の港約20ヵ所に対し投資を行っているが、全ての港湾がシーレーンに沿った戦略的位置にあり港湾の長期租借などを行っている。今後も世界で数十の港に投資し、一帯一路のネットワークを作ろうとしているわけだ。
 
 その反面、マレーシアでは東海岸鉄道と2本のパイプライン建設事業を中止し、パキスタンでも鉄道事業の総工費を大幅に減らすなど中国への依存率を引き下げる動きも出ている。またモルディブでは昨年9月の大統領選挙で親中派政権が敗北し、事業見直しに動いているという。
 
 一帯一路構想は参加すれば経済的魅力はあるものの、5Gのような通信技術の飛躍的成長に伴い特許的技術や図面の盗難など激しい攻防が米中間で行われている。日本を含めヨーロッパや東南アジア各国は、これらの米中覇権争いの対応にとまどっているのが実情だ。早晩、国際ルールなどが検討されていくことにならざるを得ないのではないか。
【財界 2019年5月28日号 第495回】


【参考情報】
・6月29日に大紀元時報は東アフリカの国タンザニアは、国の財政状況を理由に、中国共産党主導の1兆円規模の港湾建設計画を中止したと報じ、ジョン・マグフリ大統領はこのほど、現地メディアの取材に対して、同計画を強く非難した。資金調達と引き換えに中国から「搾取的で不合理な」内容を提示され、中国金融機関が「狂った人間にしか受け入れられないような厳しい条件」を設定した。

「中国側は33年の抵当権と99年のリース権を求めてきた。港が稼働後、投資者の選定に私たちは干渉することができない。彼らは、この土地を自分のものにしようとしている。さらに、私たちは港湾の工事費を負担しなければならない」と大統領は述べた。と報じています。

・6月18日付けのロイターは世界銀行が同日、中国の広域経済圏構想「一帯一路」について、多くの途上国の経済発展が支援され、貧困撲滅につながるとの見方を示した。同時に、一段の透明性の確保が必要との見解も示した。

世銀は一帯一路構想が完全に実施されれば、3200万人が貧困から抜け出せると試算。ただ、透明性の欠如などを踏まえると同構想を巡る「大幅なリスク」は存在しているとの認識も示した。