バーナンキの最後っ屁? 世界の金融・経済の波乱に
ことしの世界経済の台風の目は、どうやらアメリカになりそうだ。1月下旬から世界の株式市場や為替市場が大荒れになっているのもアメリカの量的金融緩和縮小の影響だ。1月24日の世界の株価下落率は、日本が1.94%、アメリカ1.96%、ドイツ2.48%、フランス2.79%、アルゼンチン3.93%と世界同時株安の様相を呈している。通貨の方もアルゼンチン・ペソが同日、対ドルで一時15%安と2002年以来の下げ幅を記録し、トルコや南アフリカ、インドなどの新興国通貨が軒並み下落。円は1㌦=102円ちょうどと昨年12月初め以来の円高・ドル安水準になった。また円高・株安のトレンドに戻るのかと、気をもませる。
この乱調のきっかけは、昨年夏前にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)が、アメリカの量的緩和の縮小を示唆した。アメリカに景気回復の兆しが見えてきたことから、量的緩和政策の変更を匂わせたわけだ。バーナンキ議長は2006年2月にグリーンスパン前議長の後を継いだが、その直後からアメリカの住宅バブルがはじける原因となったサブプライムローン問題が表面化しリーマン・ショックを引き起こした。これが世界に波及し、さらにユーロ危機も加わって世界不況の様相を呈していたのである。
このためバーナンキ議長は年5%台にあった銀行間金利の誘導目標を下げ続け、2008年12月からは年0〜0.25%と事実上のゼロ金利政策をとった。しかしそれでもアメリカの景気回復が進まないため、設備投資や住宅購入を刺激しようと量的緩和(QE)に踏み切ったのである。第一弾が08年11月〜10年3月、第二弾が10年11月〜11年6月まで市場にカネを注ぎ込んだが景気は回復せず、失業率は高止まりしたままだった。そこで12年9月から第三弾(QE3)に踏み切っていたのである。手段はFRBが債券などを買い入れ、そのカネを市場に放出するというものだが、FRBの資産規模はリーマン・ショック前の4倍以上となる4兆㌦に達した。その結果、ようやく株、住宅価格の上昇が見え失業率も8%台から6.7%に下落した。
バーナンキ議長は1月末に退任し、後任は女性のイエレン副議長が就任する。イエレン氏はアメリカの景気をみるうえで設備投資と失業率の低下を目安にしていたようで、昨年暮れには「もう少し緩和政策を続ける」と発言しており、バーナンキ氏の緩和縮小策とはやニュアンスが異なっていた。バーナンキ氏が退任直前にQEの縮小を言い出したのは、自分の手で量的緩和拡大政策の出口を示唆しておきたかったのかもしれない。
2月に就任するイエレン議長の第一声はどうなるのか。アメリカに世界のカネが環流し始めれば、アメリカ企業も本国に戻り始めよう。シェールガス革命が本物となれば、アメリカの燃料価格も下がり世界は再びアメリカ中心に動く。逆にいえば新興国に流れていたカネが逆流するかもしれない。そんな思惑で投機筋が毎日暗躍しているのだ。当然日本もその投機の渦に巻き込まれよう。【財界 2014年2月25日号 第369回】