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1日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~米大統領選、テレビ時代の選挙の転換点とは!? シンポジウムの開催も~

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スタッフです。
1日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:悪口合戦が目立つ、アメリカ大統領選。テレビ討論会の変遷
※放送日時点の事象であり、若干現状との相違がございますのでご了承ください。


【史上最悪の中傷合戦】
アメリカの大統領選もいよいよ来週決まるところまでたどり着いた。クリントン氏のメール問題が再燃し、支持率は5ポイント以内に収まり誤差の範囲。選挙人では圧倒的にクリントン氏支持が多いが、接戦州を全てトランプ氏が獲得した場合には逆転する可能性もあり、再び過熱している。

これまでの選挙戦においてもこの二人の対立はお互いに足を引っ張り合い、中傷合戦の様相を呈し見ていて気持ちの良くない大統領選となっている。これまで3回のテレビ討論が行われたが、アメリカのメディアは「史上最も醜い討論会」「異常に暗い憎しみに満ちた対決」「史上最悪の中傷合戦」などと、酷評。私も過去、数多くのアメリカ大統領選のテレビ討論会を見てきたが、今回は本当に政策論争がほとんどなく、中傷ばかりという感じだ。いったいアメリカの大統領はどうなるのかという感じもする。


【テレビ初討論はケネディvsニクソン氏】
今日はこの討論会が過去にどういう状況であったのかということを紐解いてみたい。テレビ討論会が始まったのは1960年、アメリカの一般家庭に白黒テレビが普及し始めた。初のテレビ討論会はケネディ氏とニクソン氏。

テレビ討論は選挙結果に影響を及ぼす可能性があるということからそれぞれに選挙参謀がつき、さまざまなアドバイスをしていた。ニクソン氏は自分の討論内容では負けない自信を持っており「ニクソン氏は顔色が悪いのでメークをしたほうがよい」などさまざまなメディアアドバイスを参謀から受けていたがしていたが、それに従わず、重視していなかった。

それに対し、ケネディ氏はこれから重要となり「これからはテレビの時代がくる。メイクよりもフロリダ等で選挙活動をして日焼けのまま素顔で出たほうがよい。」「話すときは聴衆を向くと目線が下に行くので、テレビカメラに向かって話すことによって全国の国民に話しているようになる。」といった参謀のアドバイスに従った。

その結果、討論会をテレビで見た人と、ラジオを聴いた人と支持が異なった。ラジオを聴いた人はニクソン氏が圧倒的に勝ったと思った。しかしながらテレビを見た人はケネディ氏が勝ったと思った。選挙の結果は本当に僅差でケネディ氏が勝った。このことによってこの時代から「大統領選挙はテレビ時代に入った」といわれるようになり、テレビ討論が重要視されるようになった。

ケネディ氏は青いシャツに紺のブレザーを着るなどファッションにもこだわった。ニクソン氏はちょうど討論会の直前に膝を痛め、当日またさらにその膝を車にぶつけてしまい、討論会中に立っているのが膝の負担となり膝の痛みを我慢し、元々青白い顔がより一層不健康に映った。さらにテレビの照明で冷や汗をハンカチでぬぐうシーンも視聴者に不健康に映った。それに相反して、ケネディ氏は日焼けし、健康そうで防衛、経済政策を落ち着いて話をした。このことにより一挙にケネディ氏が優勢となり、テレビ討論が選挙に非常に大きな影響を及ぼすということを示した。


【討論会を制す者が選挙を制す】
その後、1970年代にはテレビ討論会が活況になり始めた。76年の「カーター氏」対「フォード氏」の戦いでは、フォード氏は「東欧ではソ連の支配は確立されていない」と主張。この主張がソ連に過度に融和的だと捉えられ、中西部に多い東欧系有権者の反発を招き敗れる要因だったといわれている。この頃は発言が中心であった。

80年の「カーター氏」対「レーガン氏」では、レーガン氏は「中央政界の経験はなく、俳優上がりだ」と当初バカにされていた。討論会では堂々とした討論を実施。このときレーガン氏の年齢は73歳と高齢で不安視されていたが、「私は年齢を争点にしない。対立候補のモンデール氏は若さや経験の薄さも政治的に利用しない。」と発言。この発言によりモンデール氏は年齢のことを攻めることができなくなり、「レーガン氏があのように話した瞬間、選挙に負けることを悟った」と後に語っている。レーガン氏はそういう意味でいうと、「老練」であり、話し方も非常にうまかった。年齢的な不安を逆手に取ったことは、かつて東京都知事選で鈴木俊一氏が前屈されたことと重なってみえる。


【メディア戦略の重要性】
そして、これまでの大統領選で一番話題になったのは「ブッシュ氏」対「ゴア氏」。ゴア氏は若く、理論的にもさえていたことから圧倒的にゴア氏が有利といわれていた。ジュニア・ブッシュであるブッシュ氏は「無駄遣いをする大きな連邦政府を生み出す」とゴア氏を批判。それに対し「あきれてしまう」と言わんばかりの態度やため息を繰り返し「首を振ったり」「大げさな表情」も作ったり、ブッシュ氏をバカにするような態度をとっていた。この態度が高慢だという印象を与え、最終局面で支持率が並んだ。

最終的にフロリダの票をどうあけるかとなり、票をあけてみたものの決着がつかなかった。そこで、どちらが負けたかというかが問題になるが、ひと月ほど膠着状態が続きこのままだと大統領が決まらない状況に陥った。そこで、ゴア氏は「この状態を続けてもアメリカのためにはならない」ということで「私は負けた」と敗北宣言をしたことにより決着がついた。

そういう意味でいうと、パフォーマンス、人の善し悪しなど自分をよく見せようと思うとかえってその逆になってしまうようなこともあるといえる。テレビの画面が難しいし、怖い。こういったことが選挙活動そのものに直結してしまう一つのよい例だった。

オバマ氏は黒人で不利だといわれたが、「Change(チェンジ)」という言葉がものすごく響き、「われわれはチェンジできるんだ」とオバマ氏を勝利に導かせたといえる。


【選挙結果を受けたシンポジウムを開催】
テレビ討論は特に最近見せ方が大きくなってきた。今回のクリントン氏とトランプ氏の対決は中傷合戦となり「女性蔑視」「移民削減」に関する発言があり、その中傷合戦にドンドンおカネが使われているというような状況に陥っている。「アメリカは世界をいったいどのように導くのか」ということが全く見えない。そして、この不安が世界中に広まった。その間にロシアや中国がダンダン存在感を増し、「アメリカはどうなるのか?」という声が日本のみならずヨーロッパでも非常に不安に思ってみているという感じがする。

特にアメリカを支えるEUはイギリスの離脱の問題により混乱を極めているということもあり、この選挙の行方は注目されている。

そうした不安定な世界情勢について一流の識者を招き、11月14日(月)に私が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催のシンポジウム「アメリカ大統領選後の世界と日本」を開催します。
日時:11月14日(月) 午後6時30分(開場6時)~20時30分
場所:日比谷図書文化館大ホール(日比谷公園日比谷図書館地下
パネリスト:岸井成格氏、高橋和夫氏、田中均氏、富坂聡氏
司会:嶌信彦
詳細は以下を参照↓
http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201610312

まだ若干残席がありますので、お申込みをお待ちしております。

※画像:Wikimedia commns

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