ワクチン調達で激しい国際競争 検査と開発で出遅れた日本
新型コロナウイルスのワクチン開発とその争奪を巡る各国の競争が激化している。しかし自国民だけにワクチンを接種しても世界全体に行き渡らないと、次々に変種が出てくるので世界のコロナ禍は完全には治まらない。開発、治験を終え世界にワクチンが行き渡ってウイルスを克服するのにまだ2年ぐらいはかかりそうだ。
現在、世界ではイギリスのオックスフォード大学と製薬会社・アストラゼネカの共同開発をはじめアメリカのモデルナ社、中国のシノバック、武漢生物製品研究所など数社が先行してワクチンの開発・治験を行なっている。中でもアメリカは12月14日から接種を開始し、オックスフォード大グループはイギリスで1月4日から接種を開始した。
日本は先行して開発されたファイザー、モデルナ、アストラゼネカから供給を受け、2月の接種開始を見込んでいる。さらに、国内と海外からの調達で接種の実現を目論んでいるが、海外に比べ出遅れているのが実情だ。ワクチンの奪い合いが始まれば、当然ワクチン価格はハネ上がり、中・低所得国には手が届かなくなる。このため世界保健機構(WHO)は21年末までに20億回分のワクチンを調達し、そのうち10億回分を中・低所得国に割り当てるとしている。
日本ではひとまず海外で承認されたものを特例承認し、ワクチンの早期接種に踏み切る予定だが、食生活や生活習慣が異なる日本人の体質に適合するかどうかは定かでなく、日本人全体にワクチン接種するには一人に2回、少なくとも20億回分以上のワクチンが必要となる。
日本のコロナ新規感染者数は、まだ増加傾向にあり、東京都の1週間の平均陽性率は11・1%、感染経路不明が6割を越し、政府は再び緊急事態宣言を11都府県に拡大した。政府としては感染対策、水際対策、医療体制、ワクチンの早期接種の4点で強力な対策を取るとし、菅首相肝入りの観光支援策”GoToトラベル”も全国一斉停止に踏み切った。また午後8時以降の飲食店の閉店、外出の自粛、職場・寮における感染予防策の徹底なども呼びかけている。会食中の会話もダメと言われては、さすがに辟易としてくるし、すでに1年にわたるコロナ疲れが出てストレスはたまる一方だ。とにかくコロナを封じ込めない限り、解放感も自由もないということだ。
これまでの国の対策は遅れがちで優柔不断さばかりが目に付いて仕方がない。ワクチンの調達、開発に全力を尽くし、何とか封じ込め成功までのスケジュールを立て目標を出して欲しいものだ。スケジュールが明らかになれば、人々も頑張る気になるのではないか。
【財界2021年2月24日号 第536回】
■補足情報
・緊急事態宣言は3月末で解除されたものの、飲食は酒類の提供が20時まで21時の閉店となったが、外出の自粛、職場・寮における感染予防策の徹底などは引き続き要請されている。