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コロナとインフルに対応できるか

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細胞表面から新型コロナウイルスが出芽する瞬間の走査型電子顕微鏡写真(東京都健康安全研究センター

新型コロナウイルス感染症が収束をみないうちにインフルエンザの季節がやってくる。二つの病気は症状が似ているといわれるが、コロナのワクチンはまだ開発されておらず、インフルエンザが流行する例年の1、2月を前に政府の対応は大丈夫なのか。

インフルエンザの予防ワクチン接種は、この10月から始まる。しかし、コロナ対策はまだ予防ワクチンが開発されておらず、インフルエンザの流行と重なることが国民の間で心配されているのだ。

インフルエンザとコロナ感染症は、現れる症状が似ているという。コロナは微熱が続き疲れやすくなる上、病気の期間が長く致死率はコロナの方が高いため、国民の不安も大きいのである。コロナはまた感染しても発症しない人が多い割に、未発症者が感染源になりうるため、自覚なしに日常生活を続けて感染が広がる可能性も高い。

日本はこれまでも感染症の対応に鈍かった。2009年に流行した新型インフルエンザに対し、政府は世界的流行を警戒して保健所やPCR検査の強化、広報体制の強化による情報伝達と危機情報の意思疎通などについて有識者で総括会議を作っていた。

しかし、会議の提言は、危機感が薄れるとなおざりにされたままだった。この結果、大量のPCR検査体制は作られず検査数も増やせず入院先が見つからない、など医療混乱を招いてしまった。

安倍前首相は退陣にあたって簡易抗体検査の能力を8月27日時点の1日2万6千件(最大能力が60,366件 / 日)から20万件に拡充し受診体制の強化と保健所体制の整備を表明した。しかし、保健所の数は行政改革のリストラ政策で1996年度の845ヵ所から469ヵ所に減少。公衆衛生医師(保健所等医師)も減っているのが実情だし、PCR検査も増やせないまま10年が過ぎていたのだ。今回のコロナ問題ではそうしたツケが一挙に表面化したといえよう。

日本では新型コロナウイルス感染症の患者数や死者数が欧米や南米に比べ少ないせいか、新型コロナウイルス感染症対策は比較的うまくいったようにみられがちである。

しかし実情をきちんと調べ、経済との両立政策の是非、来年前半までに国民に行き渡らせるというワクチン開発の支援策と臨床実験の結果などを国民に知らせるべきだろう。検査数を増やす計画を立てても、実現できる体制を作らない限り絵に描いたモチになる。冬のインフルエンザとコロナ対応の両立をできるかどうかが問われている。
【Japan-In depth 2020/9/17】

 

画像:東京都健康安全研究センターサイトより

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