ウイルス不況への心構え
パナソニックを創設した松下幸之助は、”経営の神様”といわれ、大不況になると「幸之助」本がよく読まれた。現在、新型コロナウイルスが世界中に蔓延しコロナ不況を恐れている経営者も多い。こんな時、松下幸之助はどんなことを言うのだろうかと思い、昔書いたコラムを探し出してみた。
リーマン・ショック後の2009年2月に出版された「不況克服の知恵」内に記されている”心得10カ条”を紹介したい。
第1条は『「不況またよし」と考える』と指摘している。不況に直面したら右往左往せずむしろ不況の時こそ面白いと考え、まず静かに世の中を眺める。そしてこれから自分は何をなすべきか、とじっくり考えてみることだ。落ち着いて向き合えば物事を鋭く観察できて「心の改革」が行われるだろうと述べている。第2条は『原点に返って志を堅持する』。原点とは基本理念であると指摘している。第3条は『再点検して自らの力を正しく掴む』。第4条は『不退転の覚悟で取り組む』。第5条は『旧来の習慣、慣行、常識を打ち破る』。そして第6条は『時には一服して待つ』。私もつまづいたら「これは天が注意しているのだ」と前向きにとらえ、根拠なき楽観、楽天主義も重要な心構えの一つといつも思っているという。
第7条は『人材育成に力を注ぐ』。第8条は『責任は我にありの自覚を』。「うまくゆかないのは自らのやり方に当を得ないところがあるからだ」と考え抜く。第9条は『打てば響く組織づくりを進める』。この機会に風通しの良い社風を作っておく。第10条が『日頃からなすべきをなしておく』。平時から資金や技術、商品開発などあらゆる面において適正な余裕を作ることを〝ダム経営〟と呼ぶ。経営のダムがあれば少々の逆風が吹いても慌てることはないと説いている。
ウイルスの疫病は目に見えないため、先行きが見通せず余計に不安になるものだ。過去のパンデミック(広範囲にわたる流行)の歴史をみるとペスト(1347~1351年・2億人死亡)、天然痘(1520年・5600万人死亡)、スペイン風邪(1918~1919年・4000~5000万人死亡)─等々100人以上の方が亡くなる例が数多くある。
今回の新型コロナウイルスは、グローバル化時代の真っ只中にあるため、専門家はいつもより接触する人数を8割以下に抑えれば何とか1ヵ月以内に抑制できるが、7割ではまた増える懸念があると指摘している。外出しないこと、人と話す時は2メートル位離れること─などを厳守することが大事のようだ。他の人がやってくれるだろうと考えているうちは抑止できないのだ。
【財界 2020年5月27日号 第518回】
※本コラムは5月初旬に入稿しております。
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